キヤノンメディカルシステムズHealthcare ITソリューション 
神長 茂生(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 ヘルスケアIT第二事業部)
Session 1 : HIT

2020-5-15


キヤノンメディカルシステムズのミッションは,“Made for Life”の経営スローガンのもと,モダリティやPACS,電子カルテなどの技術を活用して,院内に散在するデータを利活用可能な形で収集・統合し,人工知能(AI)などの最新技術を用いてデータを解析し,その結果を医師が臨床活用できるよう,最適な診療支援(CDS)ソリューションを提供することである。本講演では,われわれが開発したCDSソリューション(図1)として,医療情報統合管理システム「Abierto VNA」,医療情報統合ビューア「Abierto Cockpit」,さらに,AI技術を駆使したCDSアプリケーションを紹介する。

図1 キヤノンメディカルシステムズのCDSソリューション

図1 キヤノンメディカルシステムズのCDSソリューション

 

データ収集と統合のプラットフォームAbierto VNA

Abierto VNAは,データ利活用のためのデータベースで,既存の電子カルテベンダーやPACSベンダーを変更することなくデータの統合が可能である(図2)。通常のVNAは画像データの統合が目的となるが,Abierto VNAでは,電子カルテや各種部門システムなどに登録されている診療情報データも統合可能なため,それらのデータの二次利用が可能となる。

図2 データ収集と統合のプラットフォームAbierto VNA

図2 データ収集と統合のプラットフォームAbierto VNA

 

診療支援のための統合ビューアAbierto Cockpit

Abierto Cockpitは,VNAに蓄積された各種データを有機的に統合するための専用ビューアである。診療の各シーンにおいて,必要な情報を最適なレイアウトで表示可能である。また,ルールに基づくイベント検出機能を有しており,見落としリスクの軽減を図ることができる。
図3は,Abierto Cockpitの実際の画面例である。「タイムライン」では,患者の各種検査の情報を時間軸上で確認できる。また,「データパネル」では,薬剤の種類や投与量・投与期間などの記録や,検体検査,看護記録,読影レポートなど,各検査結果の詳細な情報を確認することができる。これらの情報はすべて時間軸で統合表示され,タイムラインと連動して情報を展開可能である。

図3 Abierto Cockpitの実際の画面例

図3 Abierto Cockpitの実際の画面例

 

導入事例

●導入事例1:統合カンファレンス支援(図4)
キヤノンITSメディカルが提供している医療カンファレンス支援システム「メディカル カンファレンス ポータル」には,カンファレンスの対象患者の自動抽出機能が搭載されている。実際のカンファレンスでは,メディカル カンファレンス ポータルからAbierto Cockpitが呼び出され,当該患者の必要な情報がAbierto VNAから読み出される。あらかじめ設定しておいたレイアウトにより,それらの情報がAbierto Cockpit上に表示されるため,多職種が参加するカンファレンスにおける事前準備の手間が大幅に軽減される。また,臨床データを集約して表示することで,患者の状態を客観的に把握でき,治療方針の決定を効果的にサポートする。

図4 導入事例1:統合カンファレンス支援

図4 導入事例1:統合カンファレンス支援

 

●導入事例2:医療グループ画像データ統合(図5)
グループ内に設置されているデータセンター内にAbierto VNAを導入し,グループ内の急性期・回復期病院約30施設,人間ドック・予防医学7施設,クリニック8施設から発生する画像・動画データを統合している。これらのデータは,各施設から参照可能である。

図5 導入事例2:医療グループ画像データ統合

図5 導入事例2:医療グループ画像データ統合

 

CDS事例

●CDS事例1:急性期脳卒中CT画像解析
単純CT画像を用いた虚血性変化の検出や,クモ膜下出血・脳内出血などの出血検出,造影CT画像を用いたパーフュージョン解析,血管内閉塞位置の自動検出を開発した。この4つのアプリケーションを,現在施設認定が始まっている一次脳卒中センターや包括型脳卒中センターを中心に展開していきたいと考えている。

●CDS事例2:心不全患者の再入院リスク予測
心不全患者の再入院リスク予測では,合計72種類の診療データから心不全患者の再入院リスクを算出する。診療データは,バイタルデータ,検体検査の結果,画像計測値などが時系列となっており,そこから統計量や変化量を算出し,解析に用いている。さらに,年齢,性別,既往歴などの患者属性や,入院日数などの情報も解析に使用しており,これらのデータを用いて機械学習により予測モデルを作成し,最終的には退院からの日数に応じた再入院のリスクを算出する。

まとめ

われわれは,データの利活用技術をさらに深めていきながら,病院内においてはCDS技術を標準実装することにより,医療情報システムの高度化を進めていく。また,病院外においてもCDS技術を適用することで,医療連携システムの高度化を進めていく。

 

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