Aquilion ONE/ViSION Editionの開発
田中  敬(東芝メディカルシステムズ株式会社CT開発部)

2014-10-24


2007年に発売した世界初の320列ADCT「Aquilion ONE」は2014年6月現在,国内259,全世界で827システムが稼働しています。その間弊社では一貫して,被ばく低減・画質向上,ADCTならではの臨床価値の開拓,簡単で効率的な操作の3点にこだわって開発を進めてきました。具体的には,2011年逐次近似再構成技術「AIDR 3D」,2012年「Aquilion ONE/ViSION Edition」,2013年「Frontier Suites(Ver.6)」を開発し,さらに2014年8月,「Functional Suites(Ver.7)」を発表しました(図1)。また,次世代の逐次近似再構成技術である「Full Iterative Reconstruction(Full IR)」も開発中です。本講演では,リリースされたばかりのFunctional Suites(Ver.7)の機能についてご案内し,Full IRの有用性についてもご紹介します。

図1 Aquilion ONEの開発ポリシーとFunctional Suites(Ver.7)の機能

図1 Aquilion ONEの開発ポリシーとFunctional Suites(Ver.7)の機能

 

Functional Suites(Ver.7)

●被ばく低減・画質向上

1.AIDR 3D Enhanced
従来のAIDR 3Dに対し,粒状性の向上,高コントラストの維持・向上,ダークバンド補正の向上の3点を目標にAIDR 3D Enhancedを開発しました。AIDR 3Dは画像データベースと生データベースのハイブリッド型アルゴリズムを採用していますが,今回生データベースの処理にNPSモデルを導入したことにより,FBPと同様のノイズ特性を得ることができ,粒状性の改善が実現しました(図2)。さらに,高コントラストの維持・向上も図られています。

図2 AIDR 3D Enhanced

図2 AIDR 3D Enhanced

 

2.SEMAR for Helical Scan
金属アーチファクトの低減技術である「SEMAR」は,2013年にVolume Scanに対してリリースされましたが,Functional Suites(Ver.7)ではHelical Scanにも対応し,さらに広範囲のデータに適用できるよう改良されました(図3)。

図3 SEMAR for Helical Scan

図3 SEMAR for Helical Scan

 

3.新再構成プラットフォーム
臨床で使えるFull IRを実現するために,高速なGPUを採用した新アーキテクチャを取り入れることで再構成のさらなる高速化を実現した新プラットフォームを開発しました。同時に,省スペース,省エネルギーも実現しています。

●簡単で効率的な操作

1.CAN Injector Class 4
インジェクターとの連携機能を強化し,インジェクターの注入条件をエキスパートプラン内にプリセット,スキャナ側の開始スイッチでのスキャンと注入の同時開始,実施した注入条件をサマリーページに保存,の3点を実現しました。

●ADCTならではの臨床価値の開拓(図4)

図4 Functional Suites(Ver.7)のアプリケーション

図4 Functional Suites(Ver.7)のアプリケーション

 

1.4D脳動脈形態計測
動脈瘤を自動抽出し,小孔径および高さを測定し,ARやVORを算出することを目標として開発されたアプリケーション。心電同期Dynamic Volumeデータを用いた4D表示や,各数値の位相変化グラフ,拍動部位マッピングを行い,フォローアップすることが可能です。

2.Adaptive Motion Correction
心電同期スキャンの体動補正アルゴリズム。Target Volumeの前後の再構成VolumeとTarget Volumeの間で位置合わせを行い,その位相成分をマップ化したWarp Fieldデータを作成し,Warp FieldからTarget Volumeが含む動きを推定して補正を行います。これにより,時間分解能の向上が見込めます。

3.4D気管支トラッキング
COPDによる気管支閉塞評価や気管軟化症の診断のための内腔測定ツール。気管支自動抽出や4D表示,内腔径・面積を測定し,位相ごとの変化をグラフ表示することができます。

4.4D骨関節計測
関節の動きを4D(動態)で解析することで,従来の静止画ではわからない靱帯の状態を評価するアプリケーション。特定の骨を固定した状態で周辺部の動きを表示したり,任意箇所の移動距離,2点間の距離変化,角度変化を算出して評価することができます。

Full Iterative Reconstruction(Full IR)

現在開発中のFull IRの原理を図5に示します。オリジナルの投影データから通常のボリュームデータを再構成し,その後,投影データ領域での処理と画像領域での処理を並行して実施します。投影領域では,オリジナルの生データと比較して誤差を繰り返し推定していきます。この比較をいかに正確に行えるかが重要なポイントになるため,推定処理の中に装置の物理的状態・振る舞いをモデル化した計算を導入しています。これにより,放射状アーチファクトの低減や空間分解能の向上が期待できます。一方,画像領域では,ピクセルごとに近傍の値との傾斜を求め,その傾斜をできるだけ小さくするようにピクセルを置き換えて画像を作成します。これにより,ノイズ低減や低コントラストの向上が期待できます。最終的には投影領域の画像に画像領域の画像を加味することで最適な画像を出力し,この2つのイタレーションを併行して一定回数繰り返すことで最終的な画像を取得します。Full IRはAIDR 3Dを超える,さらなる画質の改善を実現します。

図5 Full Iterative Reconstruction(Full IR)の原理 (W.I.P.)

図5 Full Iterative Reconstruction(Full IR)の原理 (W.I.P.)

 

まとめ

東芝メディカルシステムズは今後も,被ばく低減・画質向上,ADCTならではの臨床価値の開拓,そして,簡単で効率的な操作の3点にこだわって開発を進め,医療に貢献してまいります。


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