Aquilion PRIME製品開発について
新野俊之(東芝メディカルシステムズ株式会社 CT事業部CT開発部)
2013-12-25
“Beyond 64”をコンセプトに次世代ヘリカルCTを開発
東芝は,1986年に世界初のヘリカルスキャンの特許取得後,CTのマルチスライス化を進め,64列CTの「Aquilion64」は短時間での心臓撮影を可能にし,東芝のCTとして歴代No.1の普及装置となりました。そして今回,さらなる撮影能力の向上や被ばく低減,ワークフローの向上を実現した,新しい80列160スライスCTの「Aquilion PRIME」を開発しました。開発にあたって“Beyond 64”というコンセプトを掲げ,64列CTを超えるスキャン技術とワークフローを実現すると同時に,環境性能においても最高峰のヘリカルCTをめざしたものです。
Aquilion PRIMEのコンセプト
1)64列CTを超えるスキャン技術
東芝のマルチスライスCTは,一貫して世界最小0.5mmスライス厚のアイソトロピック画像によって高精細画質を実現してきました。Aquilion PRIMEでは,検出器を80列,40mm幅に拡張すると同時に,64列に比べビューレートが約1.5倍に向上し,0.35s/rotでのデータ収集を可能にしました。これにより,救急や呼吸停止不良の撮影でもブレの少ない画像を得られるようになり,心臓検査でも心拍の変動や不整脈の発生によるリスクを低減できます。
このほか,Aquilion PRIMEでは,Dual Energyヘリカルスキャン,ダイナミックヘリカルスキャンなど,東芝が開発した最新のヘリカルスキャン技術を搭載しています。
2)64列CTを超えるワークフロー
逐次近似再構成を応用した被ばく低減技術“AIDR 3D”では,ノイズ低減と高画質の両立を実現しましたが,若干演算時間が延長するという課題がありました。そこで,新しいAquilion PRIMEでは,再構成エンジンの最適化と処理のマルチタスク化によって,最大60fpsの再構成速度を実現しました。
また,ガントリ開口径を78cmに拡張してアクセス性を向上させたことで,セッティング時間が短縮し,寝台の84mmの左右動機能によって,患者位置の修正が容易になりました。さらに,画像確認が撮影完了と同時に行える“InstaView”を搭載しています。
これらの技術によって,ポジショニングから画像確認までの時間をすべて短縮し,検査スループットを大幅に向上させています。
3)64列CTを超える環境性能
CTは性能アップにつれ,ガントリサイズや電源容量が増加する傾向にあり,施設によっては設置条件が問題となるケースが出てきています。新しいAquilion PRIMEでは,コンパクトなガントリ設計を課題のひとつとして開発に取り組みました。
新しいAquilion PRIMEでは,80列検出器と78cmのガントリ開口径でありながら,高速回転に対応したコンパクトなガントリを実現しました。従来装置との比較では,体積で34%,重量で28%低減し,狭い部屋への設置と,検査室の有効な空間活用を可能にしています。
このほか,施設ごとのワークフローや電源設備にあわせた装置構成の選択を可能にしたほか,撮影時だけではなく,待機時の電力消費も低減することでトータル消費量を従来比で約15%削減しました。
すべての面で64列CTを超える新しいAquilion PRIMEが,医療の進歩に少しでも貢献できることを願っています。