Aquilion ONE/ViSION Editionの開発
風間 正博(東芝メディカルシステムズ株式会社CT事業部CT開発部)
2013-10-25
2012年に発売した第2世代の320列ADCT「Aquilion ONE /ViSION Edition」は,装置の心臓部分である検出器,高精度かつ高速回転するガントリ,そして,高速撮影に耐えうる高出力のX線管球とジェネレータ,さらに,780mmのワイドボアガントリなど,さまざまな新しい技術を盛り込んだ装置です。これにより,従来のAquilion ONEの1回転0.35秒に対し,1回転0.275秒の高速化を実現し,時間分解能の向上を図ることができました。Aquilion ONE/ViSION Editionは発売から約1年経過した2013年現在,日本では約36台,全世界では63台が稼働しています。本講演では,320列ADCTをさらに進化させるためのクリニカルアプリケーションをご紹介します。
●SEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction)
SEMARは,金属アーチファクトを低減するアプリケーションです。図1は,人工股関節置換術を施行された症例で,非常に強いダークバンドアーチファクト,メタルアーチファクトが出現しています。SEMARを用いることによって,これらのアーチファクトが非常にきれいに改善していることが認められます。
●Subtraction Technology
Subtraction Technologyの要のアプリケーションである冠動脈サブトラクションでは,高度な位置合わせ処理の後にサブトラクションを行い,石灰化などをきれいに除去することが可能となります(W.I.P)。現在,岩手医科大学附属病院循環器医療センターにおいて,サブトラクション効果の確認とその評価を行っています。
図2のような,左頸動脈にステント,右頸動脈に石灰化がある症例では,Neck Subtractionによってこれらがきれいに除去されています。他にも,従来,MRIでしか観察できなかったような骨内の腫瘍をダイナミックボリュームスキャンとBone Subtractionの組み合わせによって,CTでも観察することが可能になってきました。Lung Subtractionでは,肺野内の細かい血管も,高度な位置合わせ技術によって精度良くサブトラクションすることができるようになっています。
●生データベースのDual Energy Imaging
X線線量率は物質を透過すると減弱するという原理があります。生データベースのDual Energy Imagingは,物体を異なる2種のエネルギー(例えば,管電圧 80kVと135kV)で撮影し,エネルギーごとの物質吸収係数の違いから物質の弁別,または基準物質画像を作成して,さまざまな解析を行う技術です。応用可能なアプリケーションとしては,仮想単色X線画像の生成(図3),電子密度の解析,実効原子番号の解析などがあります。
東芝ではそのほか,裸眼3Dディスプレイシステムや,Full Iterative Reconstruction(Full IR)の開発を進めています。特に,Full IRは,さらなる高画質と低被ばくの両立をめざす被ばく低減技術であり,AIDR 3Dと同様,実臨床でしっかりと使える製品として完成させたいと考えています。