展示会に見るCT技術の変遷(ITEM in JRC 国際医用画像総合展)(キヤノンメディカルシステムズ)
●2005
0.5mmスライス0.4秒高速スキャンの64列マルチスライスCT「Aquilion 64」(新製品)は,高画質モードでも頸部から足先まで30秒以内に撮影可能。心臓を7秒以内で高画質撮影でき,循環器領域における今後の応用が期待される。量子ノイズ除去フィルタの採用により被曝低減を図っている。「Aquilion 64」の隣には,「Aquilion LB」(新製品)が展示され,こちらも注目を集めていた。「Aquilion LB」はガントリ開口径が90cmと広く,患者に無理のある体位を強いず,検査体位の幅も広がる。
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●2006
0.5mmスライスのアイソトロピックボクセルイメージが可能なAquilion64が,新しく3つのモデルでラインナップされました。ガントリ回転速度が0.5秒の装置を標準機とし,0.4秒,さらに,0.35秒の装置が新たに登場しました。この0.35秒の装置では,画像再構成速度がこれまでの毎秒16画像から28画像へと進化しています。
被ばく低減については,Real ECという,患者さんの体格に応じてX線量を調整する機能をさらに一歩進めて,“Volume EC”という新しいアプリケーションが登場しました。これは,単に被ばく低減を図るだけでなく,XYZ軸の必要な方向に必要な線量を照射し,高画質を維持しながらできるだけ被ばくを抑えるという技術です。また,“Boosot 3D”,“QDScan”画像処理技術では高画質と被ばく低減の両方を実現しています。この3つの技術が加わったことで,さらなる高画質と被ばく低減が図れるということです。また,心臓検査用の「フェーズナビ」など,新たなアプリケーションも加わっています。
(桑原 博 CT事業部国内営業担当/営業推進部技術担当課長)
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●2007
● 新しい16列マルチスライスCT「Activion16」
保険点数の算定基準が装置の種別に変更されるなど医療環境の変化により,CT装置に対するニーズも多様化している。このような変化に対応しつつ東芝CT装置の優れた性能を活用していくため,Aquilion64で培われた機能・操作性を生かした新しい16列マルチスライスCT「Activion16(アクティビオン)」を発表。Aquilion64列と同様の基本画質,操作性,被ばく低減技術を継承しながら,コンパクトなガントリと,シングルコンソールシステムに凝縮したことで,フレキシブルに設置環境の設定が可能で,さまざまな施設で使用できる。外観も両手で包み込むような優しい曲線と青空をイメージした配色で,緊張を和らげる優しいデザインとなっている。また,本体上に高度な3Dワークステーション機能を搭載しているため,撮影から高精細の2D/3D結果出力までを本体のみでスムーズに行なえる。
(取材協力:桑原 博さん CT事業部国内担当参事)
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●2008
CTコーナーでは,RSNA2007で製品発表を行い,学会中の話題をさらったArea Detector CT「Aquilion ONE」の実機が国内初展示された。320列の検出器を搭載したAquilion ONEは, 1回転で脳や心臓などの臓器全体を最短で0.35秒で撮影が可能である。同社は, Aquilion 64 をはじめ,これまでCTに検出器の列数に応じた製品名をつけてきたが,今回,まったく異なる概念の新世代CTとして“Aquilion ONE”という名称がつけられた。
同装置は,連続して撮影することで四次元(三次元+時間)の情報を収集することができる。これにより,形態診断に加え,血流情報も取得することで臓器全体の動態診断が可能。脳梗塞や心筋梗塞の患者さんなど,これまで複数の診断機器で検査をする必要のあった症例の診断が1台で完了できる。関節の動きなどの動態情報も得られるため,整形外科やスポーツ医学といった領域での応用も期待されるほか,短い撮影時間で検査が終了することで,救急や小児の患者さんに対するメリットも大きい。さらに,冠動脈検査では被ばく線量を約1/4に抑えるなど,検査による被ばくを低減する。
ブースでは,呼吸下の乳児の肺や腸蠕動の様子など,多数の臨床画像を示してその有用性を紹介していたほか,320列と64列の検出器が並べて展示され,来場者の関心を集めていた。 同装置は現在,世界の14施設で稼働しており,国内では,世界で初めて導入された藤田保健衛生大学をはじめ,6施設に導入されている。
(取材協力:東木 裕介さん CT事業部 部長)
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最終日の6日には,同社ブースにおいて,藤田保健衛生大学医学部放射線医学教室の片田和広教授と(株)東芝の西田厚聰社長による“Aquilion ONE Leading Innovation Live Talk”が開催された。
西田社長は,東芝の医療分野におけるイノベーションの歴史を紹介した上で,「医療機器は臨床ニーズとテクノロジーが共鳴したところに生まれる。そして,お客さまの下で臨床価値がさらに磨き上げられ,患者さんにとって優しい,本当の意味で役に立つ装置になっていく」と述べた。また,Aquilion ONEは,医療の世界にイノベーションをもたらすものであり,同装置が世界中の患者さん,医療関係者に新たな臨床価値を提供することを期待しているとし,「日本発のイノベーションを世界に広げていきたい」と抱負を語った。
Aquilion ONEの開発に当初から携わり,世界初の臨床応用を2007年10月から開始した片田教授は,脳,心臓の撮影における有用性のほか,臨床応用を開始して最も印象的だったのが,鎮静,麻酔を必要とせずに乳幼児の撮影が一瞬で可能であることだと述べた。片田教授は,「東芝のような技術力のある会社がイノベーションを起こすことは,医療関係者だけでなく,全国民にとって非常に有益であり,今後も機器開発などを通して世界をリードしていってもらいたい」と同社に対する期待を述べた。
ライブトークには多数の来場者と報道陣が参加し,Aquilion ONEに対する注目度の高さがうかがわれた。
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●2010
● 160列でのヘリカルスキャン「Volume Helical Scan」と多彩なアプリケーションを搭載
Area Detector CT「Aquilion ONE Volume Evolution Edition」は,160列のヘリカルスキャンやボリュームスキャンの特長を生かした多彩なアプリケーションを搭載するAquilion ONEの新バージョンである。
従来のAquilion ONEでは,320列はコンベンショナルスキャンであり最大のヘリカルスキャンは64列だったが,Volume Evolution Editionでは160列でのVolume Helical Scanを実現し,体幹部の60㎝を3.8秒でスキャンできる。同社によれば,技術的には320列のヘリカルスキャンも実現できたが,テーブル移動速度が速すぎ安全性が確保できないため160列でのスキャンにしたとのことで,実際のテーブル移動速度をステージで再現していた。
アプリケーションとしては,「心筋パーフュージョン」「ボディパーフュージョン」「Dual Energy」などのアプリケーションを搭載する。心筋パーフュージョンは,心臓をワンショットで撮影できるAquilion ONEの特長を生かし,薬剤負荷による心筋の血流を画像化する。現在,世界的な多施設合同臨床試験である“CORE320”で,心筋SPECTとの比較検討による有用性の検証が行われている。ボディパーフュージョンは,ボリュームデータから解析された各臓器の灌流情報をカラーマップで表示する。ボリュームデータのため,MPRや3Dでの観察が行える。Dual Energyは,CTの新しい撮影法として各社が取り組んでいるが,東芝の方法は高電圧と低電圧を高速に切り替えて異なるエネルギーのボリュームデータを連続収集してサブトラクションを行うもの。管電圧の違いによって得られたCT値の差を解析して,尿管結石などの物質の性状を判断することができる。
その他,被ばく低減機構として逐次近似再構成法の原理を応用したAiDR(Adaptive Iterative Dose Reduction)による低線量での撮影や,3D解析などのコンソールの機能をリモートで利用できるシュア・エクステンション機能など,新たな機能をプレゼンテーションした。
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●Spring of 2011
●Innovationから生まれた,PRIMEなCT
Aquilion™ PRIMEは,高分解能・高速撮影技術に加え,最新の被ばく低減技術,ワイド・ボア,高速画像再構成技術などを搭載し,より複雑化,かつ多様化する臨床ニーズに柔軟に対応可能な160スライス/80列MSCTです(図1)。また,高精度なkV/mA Switchingによる東芝独自のデュアルエネルギー・ヘリカルスキャンも搭載しており,最新技術の追求と被ばく低減を両立できます。
デュアルエネルギー・ヘリカルスキャン
回転ごとに管電圧を切り替えながら,撮影を行う東芝独自のデュアルエネルギー・ヘリカルスキャンを搭載。この方法は,患者の正面側にはX線に対して感受性の高い臓器が多いことも考慮し,背側のみのX線ばく射にてデータ収集を行えます。また,高精度スイッチング技術により,管電圧の切り替えとともに管電流までも自動調整します。通常,管電流を一定にしたまま,管電圧のみを切り替えた場合,得られる画像のノイズレベル(SD値)が異なってしまいます。これに対し東芝は,異なるエネルギーで収集しても同等画質が得られるため,ノイズの影響を排除した精度の高い解析が行えます。
最新被ばく低減技術AIDR & アクティブコリメータ
低被ばくと高画質の両立を実現するため,逐次近似法を応用した最新の被ばく低減再構成技術AIDR(Adaptive Iterative Dose Reduction)を搭載しています。これによりSD値を最大70%向上させられます。また,画像作成に寄与しないX線をカットするアクティブコリメータも搭載し,徹底した被ばくの低減を図ります。
開口径780mmワイド・ボア
腕が十分に挙上できない場合や救急検査の場合には,極力無理な体位を強いることなく検査が行えるよう,開口径780mmのワイド・ボアを採用しました。従来のAquilion™シリーズの開口径720mmより60mm広くとることで,患者さんへの圧迫感は軽減し,さらには術者のアクセスも格段に向上しています。
●2012
● 被ばく低減技術AIDR 3Dの搭載が進む
CTのコーナーでは,320列「Aquilion ONE」,80列「Aquilion PRIME」,16列「Alexion」を展示した。Aquilion PRIMEとAlexionはITEMでの展示は初めてとなる。Aquilion PRIMEは,0.5mm×160スライス,160mm/sの高速ヘリカルスキャン撮影で短時間で高画質を提供する。開口径は78cmとなっており,容易なポジショニングなど被検者の負担を減らすだけでなく,穿刺などの手技も行いやすい。Alexionは,設置面積が10.4m2とコンパクト設計が特長。対話形式で操作を進められるナビゲート機能を搭載している。
今回のITEMに先立って,設置ずみも含め,100台以上の国内すべてのAquilion ONEにAIDR 3Dを搭載したことがアナウンスされた。AIDR 3Dは,逐次近似法を応用した画像再構成技術。再構成時間がほとんど変わらずに,最大でノイズを50%,被ばく量を75%低減する。同社では2011年10月にAIDR 3Dを発表したが,今後「Aquilion」シリーズの新製品にはすべて標準搭載していくとしている。また,2012年に1月に発表した4列マルチスライスCT「Alexion/Access Edition」にも搭載した。
このほか,2012年1月からCTコロノグラフィ(CTC)が保険適用されたことを受けて,エーディア社のCTC用炭酸ガス送気装置「プロトCO2L」をCTCパッケージとして販売することがITEM前に発表された。また,昨2011年に買収した米国バイタル・イメージ社の画像解析ソリューションも参考出品された。
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●2013
● フルモデルチェンジした次世代マルチスライスヘリカルCT「Aquilion PRIME」
CTコーナーでは,4月5日に発表されたばかりである80列160スライスの「Aquilion PRIME」,昨年発表された「Aquilion ONE / ViSION Edition」の2機種が展示された。
「Aquilion PRIME」は,初代が2010年12月に発表された。新しい「Aquilion PRIME」は,設計を見直し,デザインを変更。780mmのガントリ開口径を維持しつつ,体積を34%,重量を28%削減している。コンパクトな筐体となったことに伴い,最小設置面積も14.8m2となったほか,電源容量を抑えた省エネルギー化により,16列CTなどのコンパクト機種からの更新ニーズにも対応する。同社マルチスライスCTの最上位機種として,0.5mmスライス厚×80列の検出器を搭載。ガントリの回転速度は0.35s/rotで,80列検出器専用DASによる高い時間分解能を持ち,64列CTと比べ約2倍の高速撮影ができる。また,スキャン中から画像再構成をバックグラウンドで並行処理したり,容易なポジショニングを支援する84mm左右動寝台の採用により,検査スループットが向上する。もちろん同社の被ばく低減技術である「AIDR 3D」も搭載。画像ノイズを最大で50%,被ばく線量を最大で75%低減できる。
もう一方の「Aquilion ONE / ViSION Edition」は2012年8月に発表されている。ハードウエアの設計を見直し,基本性能を向上。従来0.35s/rotだったガントリの回転速度が0.275s/rotに高速化されたほか,DASも新設計となり,2910view/sのデータ収集,25ギガビット/sのデータ転送が可能。X線管も900mAという高出力を実現している。こうした性能の向上により,心臓CTが心拍数75bpmまで広がり,さらに,小児,救急での検査で威力を発揮する。
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●2014
● 最新クリニカルソフトウエアのFrontier Suiteや裸眼3DディスプレイをPR
CT本体としては,ADCTのAquilion ONE/ViSION Editionと80列160スライスCTの「Aquilion PRIME」が展示された。いずれも昨年のITEMで出品されているが,今回はハードウエアではなく,ソフトウエアの進化が来場者の注目を集めた。Aquilion ONEシリーズに搭載されるクリニカルソフトウエアがバージョン6.0となり,Frontier Suiteという総称で発表された。Frontier Suiteの主なソフトウエアとしては,“SURESubtraction”“SEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction)”“生データベースデュアルエネルギーシステム”がある。
SURESubtractionは,冠動脈のCTアンギオグラフィにおいて石灰化ステントを除去して血管だけを描出する。これにより,高度石灰化の症例においても高精度の診断が行える。また,SEMARは,逐次近似画像再構成法を応用したもので,金属アーチファクトを低減した画像を得ることが可能。体内金属などにより撮影が困難だった患者も,検査の適応とすることができる。生データベースデュアルエネルギーシステムはオプションで用意される。生データベースでの画像処理によって,実効原子番号や電子密度の解析を可能にした。
CTでは,このほか裸眼3DディスプレイのHyperViewerが紹介された。HyperViewerは,Aquilion ONEシリーズのオプションとして2013年9月に発表された。Vital Images社の3Dワークステーション「Vitrea」で作成した3D画像を4K×2Kパネルを用いて表示する。HyperViewerは,術前シミュレーションや医学教育分野などへの活用が期待される。
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●2015
● FIRSTなど最先端技術が惜しみなく投入された第三世代ADCTのAquilion ONE/ViSION FIRST Edition
Aquilion ONE/ViSION FIRST Editionに搭載されたFISRTは,順投影適用モデルベース逐次近似画像再構成法である。再構成関数を用いないため,オブジェクト辺縁部のアンダーシュート,オーバーシュートを抑え,FBP法に比べて空間分解能と密度分解能が向上している。これにより,低線量撮影でも高画質を得ることができ,ファントム実験ではFBP法と比べ最大で80%の被ばく低減を実現した。また,FIRSTのようなIR法は再構成処理に時間を要するが,FIRST専用再構成システムでの高速処理により短時間で画像を得られる。実際の検査では,従来の“AIDR 3D Enhanced”と並列処理が可能なため,検査後まずはAIDR 3D Enhancedの処理画像を確認した後で,FISRTの処理画像で詳細に観察するといった運用も可能である。
このFISRTを可能にした技術として,Aquilion ONE/ViSION FIRST Editionには新開発の検出器“PUREVISION Detector”が採用されている。昨年の第100回北米放射線学会(RSNA 2014)直前に発表されたPUREVISION Detectorは,検出器素材の改良や東芝独自の切断技術といった高精度の製造技術により検出器の性能を大幅に引き上げた。これによりシンチレータの光出力が40%向上し,DASの電気ノイズを28%低減させている。
17日の記者発表会では,共同研究施設である広島大学の粟井和夫氏(同大学大学院医歯薬保健学研究院放射線診断学教授)が初期臨床経験について,腹部CTにおいて劇的なコントラスト分解能の向上が得られたと症例画像示しながら説明した。
また,Aquilion ONE/ViSION FIRST Editionとともに発表されたAquilion Lightningは,PUREVISION Detectorを採用した780mmの大開口径ガントリのCT。同社CTのラインアップ中最も設置スペースの小さい9.8m2の最小設置面積を実現している。コンパクト設計でありながら機能は妥協しておらず,金属アーチファクトを抑えるアプリケーション“SEMAR”が利用できる。
同じくPUREVISION Detectorが搭載されたAquilion PRIMEも展示された。AIDR 3D EnhancedとSEMARが採用されて,従来よりも被ばく低減,高画質化が図られている。また,さらなる設置スペースの削減を図るために,コンソールシステムも見直し,卓上に設置できるようユニットを小型化している。
このほか,ブース内では,国立がん研究センターなどと共同で開発を進めてきた「QDCT(Quarter-pixel Detector CT)」(医薬品医療機器等法未承認品)も参考出品された。症例画像を交えて紹介が行われ,来場者の関心を集めていた。
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●2016
● 新たなグローバルスタンダードCTとなる「Aquilion ONE / GENESIS Edition」を披露
CTコーナーの最前面に展示されたのは,Aquilion ONEシリーズの最上位機種として発表されたばかりの「Aquilion ONE / GENESIS Edition」である。東芝メディカルシステムズは,2007年に世界初の320列面検出器を搭載したArea Detector CT(ADCT)としてAquilion ONEを発売,高画質,低被ばく撮影のための技術を投入してバージョンアップを重ね,国内シェア1位,海外でも2位とグローバルスタンダードCTとして市場に認められてきた。Aquilion ONE / GENESIS Editionは,ADCTの新たな最上位機種と位置づけられる。これまでのADCTのノウハウをさらにブラッシュアップして高画質化,低線量撮影を追究しながら,ガントリのコンパクト化を実現。ADCTの可能性をさらに拡大する新たなグローバルスタンダードCTとして投入されたフラッグシップモデルである。
Aquilion ONE / GENESIS Editionでは,撮影系のプラットフォームを一新したX線光学系技術“pureViSION Optics”を搭載した。pureViSION Opticsでは,X線入出力のコンポーネントをトータルで見直し,出力側は被ばく増の要因となる低エネルギー領域のX線スペクトラムをカットしてエネルギー分布を最適化,入力側のpureViSION Detectorの高いX線検出能を生かして精度を高めた。さらに,画像再構成法には昨年のITEM2015で発表され,高い評価を受けている新しいFull IRの逐次近似画像再構成“FIRST”を搭載し,さらなる低被ばく,高画質の撮影を実現する。
また,Aquilion ONE / GENESIS Editionでは機能アップを図りながら,ガントリサイズをコンパクト化したことも特長で,ガントリサイズは同社の64列CTよりも小さい高さ1925mm×幅2270mm×奥行き960mmとなっている。設置の際には処理コンポーネントの小型化で機械室が不要になり,検査室の最小設置面積は19m2と64列CTからのリプレイスも可能なサイズを実現した。そのほか,±30°のチルト機能や検査をサポートする“エリアファインダ機能”など,来場者の注目を集めていた。
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●2017
● 新しい地平を開く世界初の高精細CT「Aquilion Precision」を発表
CTでは,2001年から国立がんセンター(当時)の森山紀之氏(現・東京ミッドタウンクリニック健診センター長)らと開発を進めてきた,従来のCTより空間分解能を向上した世界初の高精細CT「Aquilion Precision」を発表し,ITEM会場で記者発表会を行うと同時にブースでの実機展示を行った。
Aquilion Precisionは,0.25mm×160列,面内方向に従来の2倍の1792チャンネルのX線検出器を搭載し,0.15mmの空間分解能を実現した。X線管球についても,新たに“MegaCool Micro”を開発,X線焦点を従来の1/2の幅0.4mm×0.5mmの極小焦点とし,最大管電流も600mAと高出力に対応し高い空間分解能とノイズの少ない画像収集を可能にする。また,撮影寝台についても高精細撮影に対応するため新たに開発され,“2段スライド機構”と“高精度天板制御機構”によってミクロの精度で撮影位置の制御が可能になっている。このほか,従来の約8倍の情報量となる収集データを高速で処理する画像再構成ユニット,新しいPUREViSION Opticsなど,Aquilion Precisionのために開発された技術が投入されている。Aquilion Precisionは,プロトタイプが稼働していた岩手医科大学,藤田保健衛生大学,国立がん研究センターに加え,岡山大学,九州大学,杏林大学の6施設に導入されている。価格は本体2億円で,大学病院や研究所などアカデミックサイトをターゲットにする。記者発表会で瀧口社長は,「Aquilion Precisionは,われわれがADCTで培ってきた技術や知見を集大成してCTの新たな地平を開くものだ。10年後には,高精細CTが次のスタンダードになる可能性を秘めていると期待している」と述べた。
このほか,展示ブースでは新製品として最上位機種の技術を投入した80列マルチスライスCT「Aquilion Prime SP」,またArea Detector CT(ADCT)のフラッグシップである「Aquilion ONE / GENESIS Edition」をさまざまなアプリケーションと合わせて展示した。また,今年は2007年に世界初のADCT「Aquilion ONE」を発売してから10周年となることから,その歴史をパネルで紹介した。
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●2018
●ディープラーニング技術による画像再構成技術「AiCE」を発表
CTは,通路を挟んだワンブロックすべてを使い,実機として昨年のITEM2017で発表した超高精細CT「Aquilion Precision」,320列Area Detector CTのフラッグシップ「Aquilion ONE/GENESIS Edition」,80列マルチスライスCT「Aquilion Prime SP」を展示し,豊富なラインアップでさまざまな臨床ニーズに柔軟に応えられることをアピールした。そのほか,実機展示のなかった「Aquilion Lightning」については,VRゴーグルを使って,Aquilion Lightningを設置した検査室や操作室を移動して疑似体験できるバーチャル展示を行っていた。2017年の発売以来,0.25mm×160列,1792チャンネルの高解像度画像で大きなインパクトを与えたAquilion Precisionだが,ブースでは腹部や胸部など各領域での最新の臨床データを紹介し,超高精細画像をアピールした。
CTコーナーで来場者の注目を集めていたのが,AIを用いたCT画像再構成技術の「AiCE(Advanced Intelligent Clear-IQ Engine:エース)」だ。AiCEは,AI技術の一つであるディープラーニングを用いて,MBIR(Model Based Iterative Reconstruction:FIRST)の高品質データを教師画像(目標)に設定し,さまざまなノイズのパターンと,FIRSTの各種のモデルデータを学習することで,高いノイズ低減効果と空間分解能の向上を実現する。AiCEでは,通常のMBIRでは困難だった低コントラスト領域の画質改善や,低線量での安定した画質改善効果が期待できる。さらに,MBIRに比べ計算量が少なくてすむため,3〜5倍速い画像再構成が可能になる。AiCEは,まずAquilion Precisionから搭載を予定している。
●2019
●AIを用いた画像再構成技術“AiCE”など多数の臨床データで先進のCT技術をアピール
CTコーナーでは,高精細CT「Aquilion Precision」とADCTのフラッグシップである「Aquilion ONE/GENESIS Edition」を展示すると同時に,ディープラーニングを用いた画像再構成技術“AiCE”の技術紹介と最新臨床データをモニタで紹介した。AiCEは,ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いてCTの画像再構成を行い空間分解能向上とノイズ低減を図る。教師データとしてMBIR(FIRST)を応用したデータを用いていることが特徴である。昨年のITEM2018でAquilion Precisionへの搭載が発表されたが,11月にはRSNA2018に合わせてAquilion ONE/GENESIS Editionへの搭載が発表された。適応可能な領域は,Aquilion Precisionが“body”,Aquilion ONE/GENESIS Editionが“lung,body,cardiac”となっているが,さらにその他の領域にも展開していくとのことだ。
2019年1月に販売を開始した高機能16列マルチスライスCT「Aquilion Start」は,上位機種で培ってきた“PUREViSION Optics”やAIDR 3D EnhancedやSEMARといった高画質化技術を標準搭載し,最小設置面積9.8m2とコンパクトな装置になっている。“NAVI Mode + ”によってCT検査の一連の操作を対話形式でセットでき効率的な検査をサポートするほか,16列CTとしてコストパフォーマンスや運用サポートなどを含めた導入のしやすいサービスを提供することもアピールした。ブースでは,Aquilion StartとAquilion LightningについてVRによって両装置が設置された検査室・操作室の環境を疑似体験できるデモ展示を行った。
●2021
●AiCEや新しいDE撮影技術を搭載した「Aquilion ONE/PRISM Edition」
CTコーナーで展示された「Aquilion ONE/PRISM Edition」は,AiCEやDual Energy技術の新たな方式である“Spectral Imaging System”を搭載したADCTのフラッグシップ機である。今回は新CT透視システムの操作卓や,キヤノン製のWebカメラと組み合わせて展示された。新CT透視システムは,オプションで提供される生検やドレナージなどCT透視下での手技をサポートするシステム。タッチパネルを採用した操作卓は,寝台やガントリの移動のほか,画面の切り替えなども可能で,術者が穿刺の手技に関する操作を一人で行えるようになっている。今回ブースの展示で提案されたWebカメラソリューションは,キヤノン製のWebカメラを使って,CT室内や撮影時の患者監視用カメラとして利用するもの。キヤノンはネットワークカメラ事業を展開しているが,そのリソースを活用したものだ。
そのほか,80列で開口径90cmのラージボアを持つマルチスライスCT「Aquilion Exceed LB」,高精細CT「Aquilion Precision」については,モニタプレゼンテーションで紹介した。Aquilion Exceed LBは,放射線治療計画や救急用として導入されてきたラージボアCTの待望の多列化(80列)装置だ。高剛性の寝台やAiCEの搭載などさらなる精度の向上が期待されることをアピールした。
●2022
●先進の自動化技術で新しいワークフローを提案する80列CT「Aquilion Serve」
CTでは,2022年4月から販売を開始した80列CTの「Aquilion Serve」と,Area Detector CT(ADCT)の「Aquilion ONE / PRISM Edition」を実機展示した。中でも来場者の注目を集めていたのが,先進の自動化技術を搭載したAquilion Serveだ。キヤノン本社とのシナジーを活かして開発されたAquilion Serveでは,ガントリ内蔵カメラ,タッチパネルなどを用いた“Automatic Camera Positioning”,SilverBeam Filterを用いた“Automatic Scan Planning”,撮影後の画像表示レイアウトをプリセットできる“Automatic Hanging Layout”によって,一貫して安定した検査の提供をサポートする。これまでの80列CTと同様にディープラーニングを用いて設計した画像再構成技術“Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)”を搭載して高画質で低被ばく検査が行えるほか,新開発の陽極熱容量5MHUのX線管球によって救急検査や心臓CT検査にも対応できコストパフォーマンスにも優れた装置となっている。
Automatic Camera Positioningでは,患者が寝台に寝たあと,ガントリのタッチパネルで撮影部位を選択。ガントリ内蔵カメラの映像を基に寝台の患者体位を検出し,撮影部位に適切なポジショニング位置を自動算出する。タッチパネル下のボタンを押すだけで寝台が撮影開始位置へ移動しポジショニングが終了する。また,Automatic Scan Planningでは,SilverBeam Filterを用いた低線量の“3D Landmark Scan”を行い,三次元データを含んだ位置決め画像を取得,このデータを基に撮影範囲を自動設定する。さらに,Automatic Hanging Layoutでは,部位や検査種別ごとに,MPR画像や3D画像などのレイアウトをあらかじめプリセットしておくことで,検査後に画像を自動で表示することができる。
また,Aquilion ONE / PRISM Editionは,2021年11月にディープラーニングを応用した超解像画像再構成技術“Precise IQ Engine(PIQE)”やSilverBeam Filterによる新たな被ばく低減技術などを搭載してバージョンアップされた。ブースでは,ADCTの画像を高精細CT「Aquilion Precision」の画像を教師データにした超解像画像再構成技術で高精細化が可能なことを臨床画像を含めて来場者にアピールした。
〈コンテナCT〉
展示会場の外では,(株)Sanseiとの協業で開発された感染症対策を行った“医療コンテナCT(コンテナCT)”を展示した。コンテナCTは,CTに80列CT「Aquilion Lightning /Helios i Edition」を搭載し,清潔区域と汚染区域を分けたゾーニングで患者との接触を避けたオペレーションを可能とし,陰圧と陽圧のコントロールやHEPAフィルタ,UVランプでの除菌が行える空調設備,抗菌ガラスの壁面などで感染症対策が施されているのが特徴だ。さらに,7日間稼働可能な発電機を搭載し,海運・陸運が容易な標準規格のコンテナを採用することで,災害時でも迅速な対応が可能になっている。実際の車両が見られることもあり,会期中には多くの見学者が屋外の展示を訪れていた。
●2023
●新たなワークフロー“INSTINX”を搭載したAquilion Serveなどを紹介
CTでは,80列マルチスライスCT「Aquilion Serve」と高精細CT「Aquilion Precision」を実機展示し,高精細とAIを用いた自動化技術を軸に展示を行った。Aquilion Serveでは,ガントリ内のカメラを利用したポジショニングサポート機能の「Automatic Camera Positioning」,低線量で撮影された三次元データを利用して撮影範囲の自動設定を行う「Automatic Scan Planning」,表示させるレイアウトをプリセットできる「Automatic Hanging Layout」など検査をサポートする機能を搭載しているが,これらの機能を新たに「INSTINX」のブランド名で統合した。INSTINXは,世界中の医療機関で行われた臨床テストを元にワークフローの細部にまで改良を加えて,直感的な操作性を実現し効率性と一貫性を追求する新たなワークフローである。また,Aquilion Precisionでは,AiCEのパラメータに脳血管用(Brain CTA),中内耳用(Inner Ear),骨・軟部用(Bone)が加わり,AiCEが全身領域に適応可能になったことを紹介した。さらにADCT「Aquilion ONE / PRISM Edition」に搭載された超解像技術「Precise IQ Engine(PIQE)」については,微小石灰化プラークや冠動脈ステントの描出など心臓CT領域で高精細画像が得られることを多くの臨床データでアピールした。
●2024
●新たなフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」に体動補正技術「CLEAR Motion」を搭載し臨床価値を向上
CTでは,新たなフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」と,バージョンがV1.5に進化した80列マルチスライスCT「Aquilion Serve」を展示した。
国内初展示となったAquilion ONE / INSIGHT Editionは,ハードウエア・ソフトウエアの両面において進化した高精細ADCTとして大きくアピールした。ハードウエアにおいては,0.24秒/回転の高速撮影を実現したほか,X線光学系技術を一新。新開発のX線管球「CoolNovus」は70kV/1400mAの低管電圧/高出力撮影を実現し,低管電圧撮影の適用拡大などに貢献する。また,新たな検出器「PUREINSIGHT Detector」により,従来比約40%の電気ノイズを低減し,低線量撮影時のSDを改善させる。
ソフトウエア面では,AI技術により画質改善とワークフロー改善を実現した。PIQEが心臓に加えて胸部・腹部にも適用を拡大するとともに,1024マトリックスでの再構成にも対応した。また,ディープラーニングを用いて設計した新たな体動補正技術「CLEAR Motion」が実装された。肺野領域の構造物の動きの方向や量の推定にディープラーニングを活用することで高精度にモーションアーチファクトを低減でき,PIQEや最大450mm/秒の高速ヘリカルスキャンと組み合わせることで,さらなる被ばく低減と高画質が可能になる。
さらに,先進の自動化技術「INSTINX」も搭載されている。ガントリ内蔵カメラで取得した映像を基にした「Automatic Camera Positioning」や「Automatic Scan Planning」によるポジショニングやスキャン計画の自動化,「Automatic Hanging Layout」による画像の自動展開により,操作者の負担を軽減しつつワークフローを改善し,一貫性のある検査を実現する。
Aquilion Serveについては,INSTINXの機能の一つである低線量ヘルカルスキャンによる位置決め「3D Landmark Scan」を活用している施設が増えていることを紹介し,精度向上や時間短縮などの新たな価値を提供していることをアピールした。
また,展示場屋外には,80列CT「Aquilion Lightning / Helios i Edition」を搭載した災害・感染症対策医療用コンテナCTも展示。検査・操作・発電のオールインワン提供やゾーニングが可能で,患者との接触を避けつつスムーズに検査を行えることなどを紹介した。