Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2023年11月号

X線透視を究める─内視鏡医の視点

X線透視下内視鏡検査編:神戸大学医学部附属病院 消化器内視鏡検査のためのCアームX線TVシステムによる検査環境を構築し高精度の手技と被ばく低減を両立

神戸大学医学部附属病院消化器内科特定助教/病棟医長 酒井 新氏

神戸大学医学部附属病院消化器内科特定助教/病棟医長 酒井 新氏

神戸大学医学部附属病院消化器内科は,5つの診療グループに分かれて専門性の高い診療を提供している。そのうち,胆膵疾患グループは,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や超音波内視鏡(EUS)の豊富な実績を有しており,ハイボリュームセンターの役割を担っている。この診療を支えているのが,キヤノンメディカルシステムズのCアームX線TVシステム「Ultimax-i」だ。特定助教/病棟医長を務める酒井 新氏に,質の高い検査環境へのこだわりやX線TVシステムに求める要件を取材した。

 

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年間約1100件のEUS,約700件のERCPを施行し,大学病院の使命を果たす

同消化器内科の胆膵疾患グループは,約20名の医師が在籍しており,ほかの診療グループと垣根なく連携して高度な診療に当たり,大学病院としての使命を果たしている。直近の診療実績としては,EUS関連手技が年間約1100件,ERCP関連手技が年間約700件となっている。特に,EUS関連手技の件数は右肩上がりに増加している。疾患としては,膵がん,胆管がんといった悪性腫瘍が多いが,膵炎や胆管炎といった良性疾患の診療にも力を入れており,良悪性を問わず多くの症例を地域の医療機関から受け入れている。
胆膵疾患グループでは,X線透視下内視鏡検査を毎週,月曜日から金曜日まで,火曜日を除く週4日施行している。検査枠は1時間に設定しており,内視鏡担当,介助担当,操作室でのX線TVシステム操作担当の3名の医師と看護師1名をベースに,症例に応じて応援の医師が参加している。内視鏡室内の医師と操作室の医師がコミュニケーションをとりながら透視や撮影を行い,被ばく線量を最低限に抑えており,被検者のみならずハイボリュームセンターでの高度な診療を担うスタッフの被ばく低減を図っている。

Professional’s eye

低被ばくと高画質を両立した検査環境を追求する 酒井 新氏の視点

手技を究める
大型モニタと正対して手技に集中できる検査環境

X線透視下内視鏡検査において術者は内視鏡やデバイスの繊細な操作をするために,無理のない姿勢をとることが重要です。そこで,当院では,大型モニタを術者の正面に配置して,正対するようにしています。壁面に沿って設置でき,CアームX線TVシステムでありながらコンパクトなUltimax-iを生かしてスペースをつくり,大型モニタの可動範囲を広くすることができました。術者は大型モニタと正対して無理のない姿勢で手技を行えるので,身体的な負担の軽減にもつながっています。
また,Ultimax-iのCアームは,安全かつ高精度に手技を進める上でも役立っています。ERCP やEUS の関連手技において,例えば肝内胆管は分枝が複雑に走行しており,胆管の枝同士が重なってしまう場合がありますが,Cアームの角度を変えることで重なりをなくし,胆管の走行やデバイスの位置を正確に見ることができます。胆管や膵管と椎骨,カテーテルの先端と内視鏡が重なっているようなケースも,それを解消することができています。Ultimax-iのCアームの可動域RAO90°~LAO41°を十分に活用して検査しています。

高画質を究める
新画像処理条件「Accent」でデバイスの視認性を確保

近年,ERCPの位置づけは変わりつつあります。以前のようにERCPで胆管や膵管をすべて観察するケースは減っており,EUSやMRIなどの検査を先に行い,病変が疑われる部位の生検や管腔内超音波(IDUS)などの精密検査,狭窄部に対するステント留置などの治療を目的にERCPを行うことが多くなっています。このためERCPを施行する上で,X線TVシステムに求められるのは,病変部やデバイスを明瞭かつ高画質で描出することです。Ultimax-iは導入当初から十分満足できる透視画像を得られていますが,さらに,新たに搭載されたデバイスや造影剤を強調する画像処理条件のAccentによって,例えば「Radifocusガイドワイヤー」(テルモ製)のような選択性に優れる細径のガイドワイヤーや,「COOK Zilver 胆管用ステント」(クックメディカルジャパン製)といった金属ステントの視認性が大幅に改善しています。

被ばく低減を究める
高まる被ばく低減のニーズに応えるUltimax-iの技術

近年,消化器内視鏡医の被ばくに対する意識が高まっています。2021年に電離放射線障害防止規則において眼の水晶体の被ばく限度などが改正され,関連学会でも被ばく低減を進めており,私たちも今まで以上に,被ばく低減に努めるようになりました。特に,当院のようなハイボリュームセンターでは,検査件数も多く,検査時間も長くなるので,被ばく低減への取り組みは重要です。これを踏まえて,X線TVシステム導入時には画質だけでなく,被ばく低減技術も評価ポイントとしました。
Ultimax-iは,高画質・低線量検査コンセプトの「octave SP」により,高画質化が図れている上に,被ばく線量を抑えて検査ができています。このほかにも,パルス透視のフレームレートを7.5fps,透視線量モードを通常の半分の線量となるMidに設定して,被検者だけでなく,X線透視下内視鏡検査にかかわるスタッフ全員の被ばく低減を図っています。

症例1 ガイドワイヤー「Radifocus 0.025inch」(テルモ製)の視認性が改善している。 a:通常の透視像 b:Accentの透視像

症例1 ガイドワイヤー「Radifocus 0.025inch」(テルモ製)の視認性が改善している。
a:通常の透視像 b:Accentの透視像

 

症例2 濃い造影剤内の「Zilver635 10mm×6cm」(クックメディカルジャパン製)の視認性が改善している。 a:通常の透視像 b:Accentの透視像

症例2 濃い造影剤内の「Zilver635 10mm×6cm」(クックメディカルジャパン製)の視認性が改善している。
a:通常の透視像 b:Accentの透視像

 

症例3 Cアームの角度付けの効果 a:カテーテル先端が内視鏡と重なり,確認できない。 b:Cアームの角度を変え,カテーテル先端が確認できる。

症例3 Cアームの角度付けの効果
a:カテーテル先端が内視鏡と重なり,確認できない。
b:Cアームの角度を変え,カテーテル先端が確認できる。

 

*octave SPは,低線量検査のための数々の技術により,照射線量を従来に比べ約65%低減させる高画質・低線量検査コンセプトです。

一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000

*記事内容はご経験や知見による,ご本人のご意見や感想が含まれます。

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