Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)
2017年4月号
320列と80列のCT2台体制で社会医療法人として急性期医療を中心に地域に貢献 〜 従量課金制メンテナンスリースの「TMOUS」が導入を支援
社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院
神戸市のJR灘駅近くにある社会医療法人神鋼記念会神鋼記念病院(333床、東山 洋院長)は、2015年に社会医療法人の認定を受け、救急医療を中心とする急性期医療の提供で地域に貢献している。同院では、東芝メディカルシステムズの320列ADCT「Aquilion ONE / ViSION Edition」と80列CT「Aquilion PRIME」の2台が稼働しているが、2台目のCTを東芝医用ファイナンスが提供する従量課金制メンテナンスリースである「TMOUS」を使って導入した。社会医療法人として高度医療を展開する同院でのCTの導入と運用について管理部門と放射線診断科に取材した。
2015年に社会医療法人化し高度・急性期医療で地域に貢献
神鋼記念病院は神戸製鋼所の企業立病院として設立され、1994年に現在地に移転、1998年に神戸製鋼所から分離・独立して医療法人社団神鋼会神鋼病院となった。さらに、透明性の高い医療経営体制のもとで公益性のある医療の提供をめざし、2015年に社会医療法人の認定を受け、神鋼記念会神鋼記念病院と改称した。従来から断らない救急医療を実践して、神戸市の二次救急を担い年間4000台を超える救急車を受け入れるなど、急性期医療を中心に地域の中核的役割を果たしてきたが、社会医療法人化によって救急医療分野の体制強化を図ると同時に、医業経営の安定化を進めている。現在、外来は1日平均1100人、病床稼働率も90%を超え、地域医療支援病院として地域の医療機関との紹介・逆紹介による連携や高度医療機器の共同利用などを進めている。また、がん診療拠点病院として乳腺センター、呼吸器センターなど各診療科での高度医療の提供にも力を入れているのが特徴だ。
救急医療に対応する放射線診療を提供
同院の放射線センターは、CT、MRIなどの画像診断と腹部の血管内治療(IVR)を行う放射線診断科と放射線治療科で構成されている。両部門を統括する門澤秀一センター長は放射線診療の現況について、「社会医療法人として救急医療へのさらなる貢献を求められていることから、画像検査についても緊急の当日検査に対応できる体制を取っています」と説明する。
放射線診断科のスタッフは放射線診断専門医4名、画像検査を担当する画像診断室には診療放射線技師25名が在籍する。検査件数はCT、MRIを合わせて1日140件。同院では、脳神経外科の脳卒中に対するIVRや膠原病リウマチセンターでの間質性肺炎の重篤な合併症の治療など、専門的な診療を提供する診療科が多く、CTやMRIを始めとする画像診断への期待も大きい。MRIについては、休日夜間の時間帯にも検査枠を設け、就労などで平日の検査が難しい患者にも配慮した体制を取っている。門澤センター長はMRIやマンモグラフィによる乳腺画像診断を専門とするが、「各診療科とは連携しながら最適な画像診断を提供するように心掛けています。個人的には乳腺科と連携しながら、マンモグラフィやMRIによる乳がんの画像診断には力を入れています」と説明する。
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320列と80列のCT2台体制を実現
同院では2台の4列CTが稼働していたが、2013年に1台をAquilion ONE / ViSION Edition(以下、Aquilion ONE)にリプレイスした。これによって、冠動脈CTや頭部のPerfusion CTなどが可能になり、循環器内科や脳神経外科領域でのより高度な画像診断への要求に応えられるようになった。しかし、一方で320列と4列というアンバランスな組み合わせとなったため、検査が320列に集中することとなった。門澤センター長は、「放射線センターとしては、320列のバックアップという意味でも2台とも更新したかったのですが、経営的な事情もあり実現しませんでした。残った4列は、頭部単純CTや健診センターの胸部単純CTの撮影を中心に利用していました。当初は緊急検査にも利用していましたが、画質に差があることから救急現場からは不評で、結局CT検査のうち9割が320列に集中する状態になりました」と経緯を説明する。これにより、救急患者の撮影を優先するあまり予約患者の撮影が遅延して、外来診療に支障を来すことが常態化してしまったという。また、臨床研修指定病院として魅力ある病院という観点からも、4列の早期のリプレイスの要望が出ていた。管理部の葉田勝人課長は、「ちょうど更新時期でもあったことから、それらの要望を踏まえ保険点数など経営的なシミュレーションを行った上で、2016年5月に80列のAquilion PRIMEを導入しました」と述べる。
従量課金制メンテナンスリース「TMOUS」
このAquilion PRIMEの導入にあたって購入プランとして採用されたのが、東芝医用ファイナンスが提供する「TMOUS(ティーマス)」である。TMOUSは、従来のファイナンスリースとは異なり、基本使用料と使用料(従量制)で構成され、機器の稼働状況によって月々のリース料が変動する従量課金制メンテナンスリースである。毎月の使用料には、検査人数の下限と上限が決められており、下限人数までは基本使用料のみ、下限から上限人数までは設定された検査単価×検査人数の従量制の支払いとなる。上限人数を超過した分には加算はなく、そのまま病院側の収益となる(下限と上限の検査人数は機種によって異なる)。同院のAquilion PRIMEでは、月間検査件数は700~800件と予想され、上限人数の設定を上回る試算となった。10年間使用のシミュレーションでは、通常リース(ゼロ金利の場合)と比べて数千万円程度のコスト削減が見込まれた。
葉田課長はTMOUSでの購入に至った経緯について、「今回の更新では、320列とのアンバランスの解消という要件があったことから、CTにはある程度の列数が必要でした。当院では、一定金額以上の高額機器の購入ではリース契約となりますが、機器の購入費と保守費用を含めて10年の使用で、各リース会社のプランと比較してTMOUSを選択しました。TMOUSでは基本使用料の設定が割安なことと、上限設定のある従量制によって検査数の変動によるリスクを小さくできることがメリットでした」と述べる。
また、TMOUSでは、基本使用料に保守(メンテナンス)契約が一本化されていることが特徴だ。近年、医療機器の高度化に伴い、保守契約が各モダリティで必須になっており、病院側の負担も大きくなっている。中でもCTは、X線管球など高額な消耗品があることから、他のモダリティよりも保守費用は高く設定されている。TMOUSでは、基本使用料に機器のリース料と、X線管球など高額消耗品の交換も含めたフルメンテナンスの保守契約が一本化されて安価に設定されている。葉田課長は「機器のメンテナンス契約は病院にとっても悩みどころですが、今回は管球交換なども含めて基本料金が安価になっていることは大きなポイントでした」と評価する。
病院側にとっては、リースやメンテナンス契約など月々のランニングコストの負担増は、病院経営のリスク要因にもなる。同院は企業立病院だったことから、病院経営に対するコスト意識は以前から強い。葉田課長は、「神戸製鋼所から転籍したスタッフも多く、鉛筆1本でも無駄にしないというコスト意識が根付いています。CTなどの高額医療機器についても一度導入したらリース期間満了後も再リースを行い、使えるところまで使い込むというのが方針です。そういった意味でも今回の80列の導入では、タイミング良くいいプランを紹介してもらったと思います」と述べる。
■Aquilion PRIMEによる臨床画像
1mmのシンスライスデータを読影にルーチンで活用
一方で、放射線診断科としては、320列と80列の2台体制になったことで、検査件数はAquilion ONE月平均1400件、Aquilion PRIME500件とバランスのとれた配分となった。2台の使い分けについて門澤センター長は、「放射線診断科および呼吸器外科が行うCTガイド下生検や膿瘍ドレナージなどのIVR、放射線治療の治療計画などをAquilion PRIMEで行っています。件数は多くはありませんが、時間がかかる検査が多くフル回転している状況です」と説明する。
画像診断室では、CT画像についてはPACSに保存される5mm再構成の画像に加えて、1mm再構成画像をすべての症例で作成し3Dワークステーションに転送している。門澤センター長はシンスライスデータの活用について、「読影の際、必要に応じて技師にシンスライスデータの作成を依頼していると、どうしてもタイムラグが発生します。効率良く読影を進めるためには、このような運用が最善と考えています。再構成にかかる時間や手間、読影の負担もありますが、多列CTが本来持っている性能を生かすにはシンスライスデータから得られる再構成画像の活用が不可欠だというポリシーで読影しています。恥ずかしながら、この運用を開始して初めて脊椎圧迫骨折が高齢者に非常に多いことに気づかされました」と述べている。
同院では、診療の充実を図りつつ、コスト削減にもさまざまな面から全力で取り組んでいる。今回の新しいファイナンスプランを活用したCTの導入は、今後の病院運営の一つのモデルとなることが期待される。
(2017年3月8日取材)
社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院
兵庫県神戸市中央区脇浜町1-4-47
TEL 078-261-6711
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