次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)
2020年2月号
No.214 超高精細CTにおけるノイズ低減処理システムiNoirの基礎的・臨床的有用性の検討
鷲塚 冬記/畠山 卓也/中野 秀治/島田 豊(東邦大学医療センター大森病院中央放射線部)
はじめに
当院において,2018年12月,超高精細CT装置「Aquilion Precision」(キヤノンメディカルシステムズ社製)(以下,UHRCT)が導入された。また,AZE社製3Dワークステーション「AZE VirtualPlace 雷神」も同時に更新され,新たにワークステーション搭載型ノイズ低減処理システム“AZE VirtualPlace iNoir”(以下,iNoir)が導入された。
UHRCTの特徴とノイズ
UHRCTの登場により,150μmのisotropicデータの取得が可能となり,飛躍的な分解能の向上が得られたが(図1),分解能の向上はノイズの増加をもたらすことになった。そこで近年,UHRCTにdeep learning reconstruction“AiCE”が搭載され,ノイズ低減が可能となった(図2)。しかし,心電図同期撮影ではAiCE使用が不可であり,さらに焦点サイズの影響による管電流不足により,coronary CT angiography(以下,CCTA)においてはいまだノイズが問題となる。そこで,当院ではiNoirによるノイズ低減処理を施し,画像作成を行っている。今回,UHRCTにおけるiNoirの基礎的・臨床的有用性の検討を行ったので報告する。
基礎的検討
iNoirの特性を把握するため,radial frequency法によるNPS,circular edge法によるMTF,自作シャープペン芯ファントムによる視覚評価を行った。NPSは全空間周波数領域でノイズ低減され,0.25cycles/mm付近のノイズ低減が最も大きかった(図3 a)。MTFは,SD26.0,29.0,32.0では,iNoir強度にかかわらずMTF形状は保持されたが,SD35.0では,モデルベース逐次近似再構成である“FIRST”+iNoir100%でわずかに劣化した(図3 b)。したがって,過度な低線量の場合,強いiNoir強度の使用はMTFの劣化を招く可能性がある。しかし,自作ファントムの視覚評価においては,SD35.0のFIRSTとFIRST+iNoir強度100%の画像で,構造物の形状に視覚的変化は見られなかった(図4)。
症 例
1.症例1:CCTA
FIRST単独の場合,SD34.0とノイズの多い画像であるが,FIRST+iNoir100%ではSD29.0とiNoirによりノイズ低減され,画質が改善している。しかし,ステントを含め形状の変化は認められない(図5)。
2.症例2:腹部CTA
iNoirを画質の改善に使用する一方,被ばく低減目的にも使用している。腹部CTAでは,UHRCT導入当初はSD22.0(5mmスライス厚,FBP)としていたが,iNoir使用によりSD27.0(5mmスライス厚,FBP)へと変更し,約35%の被ばく低減が実現可能となった(図6)。
まとめ
UHRCTは,従来に比べ高分解能な画像が得られる一方,ノイズや被ばくの増加が課題となる。しかしながら,iNoirを併用することにより,thin sliceデータの画像ノイズを低減可能であり,UHRCTとiNoirは非常に有用な組み合わせであると考える。一方,iNoirは現状1024マトリックスにおいて約2200枚という入力制限がある。しかし,今後の開発により,さらなる大量のデータを処理することが可能となれば,臨床的有用性はさらに増すと考えられる。
【使用CT装置】
Aquilion Precision(キヤノンメディカルシステムズ社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神(AZE社製)
【使用ソフトウェア】
AZE VirtualPlace iNoir(AZE社製)