次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2019年6月号

No.206 デプスフィルタによる3D画像への奥行き情報の追加

阿部  駿(JA秋田厚生連秋田厚生医療センター放射線科)

はじめに

肺動静脈や脳血管などの3D-CTA画像では,血管が複雑に重なり,手前と奥の血管の位置関係がわかりにくくなる。これは,3D画像が平行投影法を使用しており,物質の位置関係に関係なく,大きさが同じものは同じ大きさで表示され,区別がつきにくいためである。しかし,今回紹介する,デプス(奥行き)の情報を得られるデプスフィルタを使用して,奥の物体を暗くし明暗差をつけることで3D画像に奥行きの情報が追加され,奥行き方向の位置関係がわかりやすくなる(図1)。

図1 肺がん術前3D-CT画像

図1 肺がん術前3D-CT画像

 

3Dの見え方・投影法

3D-CTなどの三次元画像は,三次元モデルをレンダリング処理後,投影処理を行う。投影は,二次元平面のスクリーン(ディスプレイモニタ)上に,三次元モデルを表示するための変換処理法である。投影方法には,仮想内視鏡で使われる透視投影法と,通常の3D画像で使われる平行投影法がある1)図2)。透視投影法は,視点から物体方向へ放射状に広がる。それにより,遠くの物体が小さく,近くの物体が大きく見えるため,遠近感が表現される。しかし,物体の形状が歪んでしまう(図2 a)。平行投影法は,視点を無限遠点に置き,視点がすべて平行となる。そのため,遠くの物体と近くの物体が同じ大きさとして投影され,遠近感が表現されない。しかし,物体の形状を正確に把握することができる2)図2 b)。
平行投影法で遠近感を表現するためには,デプスフィルタを任意の位置に追加する。デプスフィルタより遠くに位置する物体は,デプスフィルタにより色が加算されて表示されるため,手前と奥の物体の色に違いができ,デプスの違いが追加され,遠近感が表現される(図2 c)。

図2 3D画像の見え方 a:透視投影法 b:平行投影法 c:平行投影法+デプスフィルタ

図2 3D画像の見え方
a:透視投影法
b:平行投影法
c:平行投影法+デプスフィルタ

 

デプスフィルタ

デプスフィルタはAZE VirtualPlaceの3Dアプリケーションの「画面移動」内にあり,デプスプレート内の「背景」のボタンをクリックすることで適用される。「中心からのプレートの位置」で暗くする範囲の設定,「プレートのオパシティ」で暗さ(色の濃さ)の変更ができる(図3)。

図3 デプスフィルタ操作画面

図3 デプスフィルタ操作画面

 

背景色は黒以外にも対応しており,カラーマップ,デプスプレートのどちらからでも色の変更ができる。背景色を変更すると,デプスプレートの色も自動的に切り替わる(図4)。

図4 デプスフィルタのバリエーション

図4 デプスフィルタのバリエーション

 

背景以外にプレート1〜3を使用することで,同時に4色のデプスプレートが表示可能である。また,グラデーション機能により,「グラデーション」のボタンを押すことで,プレートの位置から暗さを段階的に変更し,自然な変化を表現できる(図5)。

図5 グラデーション機能

図5 グラデーション機能

 

デプスフィルタ(カラー)の応用例

肝動脈化学塞栓療法(TACE)などのIVRの手術支援画像として,3色のプレートを組み合わせることで,血管の奥行き方向の位置変化を色で表現することができる。進出色である暖色系の赤色を手前に配置し,後退色である寒色系の青を奥に配置することで,視覚的に前後の遠近感がより強調できる。色の変化により,血管が手前と奥のいずれに走行しているかを画像を回転させることなく瞬時に理解でき,各アングルの立体的な血管走行が把握できる(図6)。

図6 デプスフィルタ(カラー)を使用した手術支援画像

図6 デプスフィルタ(カラー)を使用した手術支援画像

 

まとめ

デプスフィルタは,これまでの3D画像に奥行き方向の情報を付加でき,複雑な血管などの位置関係の把握が容易となる。3D画像の見せ方を工夫することで,画像に付加価値を付け,より診断や治療に役立つ3D画像の提供が可能となる。

●参考文献
1)畦元将吾, 石風呂 実 : ワークステーション完全制覇 基本から最新アプリケーションまでケーススタディ方式で網羅. 東京, 日本放射線技師会出版会, 2008.
2)小山博史, 金 太一, 中島義和・他 : バイオメディカル融合3次元画像処理. 東京, 東京大学出版会, 2015.

【使用CT装置】
Brilliance CT64(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

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