次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2019年1月号

No.201 冠動脈プラークイメージングMIP(プラMIP)画像によるプラーク評価

大西 宏之/小南 洋二/宮田麻里子/大田 菜月(王子会神戸循環器クリニック放射線技術科)茂 真由美(王子会神戸循環器クリニック循環器内科)山口 眞弘(王子会神戸循環器クリニック心臓血管外科)

はじめに

当院では,胸部症状のある患者や人間ドック受診者を対象に冠動脈MRAを積極的に行っている。昨今,有意狭窄部位のプラークの性状把握や,軽度から中等度狭窄の突然死に関与するポジティブリモデリングな不安定プラークを検出するために,冠動脈プラークイメージングの有用性が注目されている。これを踏まえて,当院では2017年11月より,冠動脈MRA時に冠動脈プラークイメージングも併せて撮像を行っている。
冠動脈プラークイメージングは,IRパルスなどを利用して血液信号を抑制し非造影T1強調画像を撮像することで,不安定プラークに含まれる出血成分が高輝度に描出される特徴を利用した撮像方法である。高輝度プラーク(high-intensity plaque:HIP)は,図1 aのように描出される。

従来の解析方法の問題点

当院では,「AZE VirtualPlace 雷神」(AZE社製)を用いて画像解析を行っている。冠動脈プラークの従来の解析方法は,冠動脈MRAと冠動脈プラークイメージングの元画像を対比させながら評価する手法で行っていた(図1 a)。しかし,この方法はHIPの有無を検出することは容易であるが,元画像だけではHIP部位が冠動脈の本幹か分枝血管かを特定することに難渋する場合もあった。
その解決方法として,冠動脈MRAと冠動脈プラークイメージングのマルチボリュームを行うことで対応していたが,HIPの抽出がマニュアル操作となるため煩雑な作成方法となっていた(図1 b)。

図1 症例1(60歳代,男性) a:冠動脈プラークイメージングによる元画像のHIP(上,左下)と冠動脈MRAのVR画像(右下)。従来の解析は,冠動脈MRAと冠動脈プラークイメージングの元画像を対比させて行っていた。 b:冠動脈MRAのVR画像と冠動脈プラークイメージングのHIPのマルチボリューム画像。HIPを検出した場合,マニュアルで抽出し,VR画像にて画像作成を行っているが,HIPの輝度がVR画像では反映されない。

図1 症例1(60歳代,男性)
a:冠動脈プラークイメージングによる元画像のHIP(上,左下)と冠動脈MRAのVR画像(右下)。従来の解析は,冠動脈MRAと冠動脈プラークイメージングの元画像を対比させて行っていた。
b:冠動脈MRAのVR画像と冠動脈プラークイメージングのHIPのマルチボリューム画像。HIPを検出した場合,マニュアルで抽出し,VR画像にて画像作成を行っているが,HIPの輝度がVR画像では反映されない。

 

解決策

そこで,マニュアルでHIPの同定,検出を行わずに,血管走行を冠動脈プラークイメージングへ反映させることで客観的な評価ができるのではないかと考えた。冠動脈MRAから抽出された冠動脈画像をMIP画像にすることでHIPの輝度の情報も反映させられるため,新しい冠動脈プラークイメージング(冠動脈プラークイメージングMIP:プラMIP)による解析が可能になると考えた(図2)。

図2 症例1:プラMIP画像 各セグメントのHIPの輝度と血管走行を1画像で把握可能。また,個々のHIPの形状,輝度の違いも把握できる。右冠動脈,左回旋枝にHIPを明瞭に認める。

図2 症例1:プラMIP画像
各セグメントのHIPの輝度と血管走行を1画像で把握可能。また,個々のHIPの形状,輝度の違いも把握できる。右冠動脈,左回旋枝にHIPを明瞭に認める。

 

プラMIP作成方法(図3,4)

プラMIPの作成は,以下の手順で行う。
(1) “MR細血管解析”から作成した冠動脈のみの3Dイメージを作成する。
冠動脈MRAから“MR細血管解析”を使用して冠動脈を抽出する。次に,細血管解析から3Dへ移動する。各マスク(大動脈,左右冠動脈)からマスク1に統合して,tree viewを作成する。
(2) 冠動脈プラークイメージングを3Dで起動させる。
(3) 新規作成から上記2つをフュージョン機能で起動する。
(4) 位置合わせを行う。
(5) マスクのみ(冠動脈プラークイメージング)を選択して血管走行情報を反映させる。
(6) 冠動脈プラークイメージング上で血管走行を確認する。
(7) HIPがポジティブリモデリングしている場合は追加修正を行う。
ポジティブリモデリングしたプラークは抽出されないため,元画像を確認し,マスク表示で数ピクセル拡張する作業や修復を行う。
(8) 最後に,抽出された冠動脈プラークイメージングをMIP表示すれば「プラMIP」が完成する。
冠動脈MRAの細血管解析を除けば7工程で作成できるため,経験を積めば5分程度で作成できる解析方法である。
作成の前の注意点として,冠動脈MRAの心時相と冠動脈プラークイメージングの心時相を合わせておくことが必要となる。

図3 フュージョン機能画面上の冠動脈プラークイメージング フュージョン機能を使用することで,冠動脈プラークイメージング上にカラー化された血管走行情報が反映される。

図3 フュージョン機能画面上の冠動脈プラークイメージング
フュージョン機能を使用することで,冠動脈プラークイメージング上にカラー化された血管走行情報が反映される。

 

図4 マスク情報の補正 HIPがマスク内に収まっているかを確認する。収まっていない場合はマニュアル修正を行う。

図4 マスク情報の補正
HIPがマスク内に収まっているかを確認する。収まっていない場合はマニュアル修正を行う。

 

症 例

● 症例1:60歳代,男性
心電図にてⅢとaVFで陰性T波。狭心症の疑い。3枝病変であり,右冠動脈,左回旋枝に明瞭なHIPを認める(図1,2)。

● 症例2:70歳代,女性
前胸部不快感。シネMRIにおいて後側壁の運動低下を認める。T2強調画像STIRにて高信号域を同部位に認める(図5)。元画像の対比のみでは,HIPの部位の特定は困難である。しかし,プラMIP画像で確認すると,分枝血管のHIPであることが明白であった(図6)。

図5 症例2(70歳代,女性) シネMRI(a,b),T2強調画像STIR(c)。シネMRIにおいて後側壁の運動低下を認める。T2強調画像STIRにて同部位に高信号域を認める。

図5 症例2(70歳代,女性)
シネMRI(a,b),T2強調画像STIR(c)。シネMRIにおいて後側壁の運動低下を認める。T2強調画像STIRにて同部位に高信号域を認める。

 

図6 症例2:プラMIPによる解析 症例2の冠動脈MRA(a),冠動脈プラークイメージングの元画像(b),プラMIP画像(c)。元画像(a,b)の対比のみでは,HIPの部位の特定は困難である。しかし,プラMIP画像で確認すると分枝血管のHIPであることが明白である。

図6 症例2:プラMIPによる解析
症例2の冠動脈MRA(a),冠動脈プラークイメージングの元画像(b),プラMIP画像(c)。元画像(a,b)の対比のみでは,HIPの部位の特定は困難である。しかし,プラMIP画像で確認すると分枝血管のHIPであることが明白である。

 

まとめ

本方法は短時間で作成でき,血管走行を反映させているため効率良くプラークの検出,部位の特定,輝度の評価も可能である。そのためインターベンションの術前情報,ほかの診療科医師への説明や患者へのインフォームド・コンセントにも活用できると考える。このことから,冠動脈プラークイメージングの臨床応用は,大変有用性が高いと考えられる。プラMIPが冠動脈プラークイメージングの普及の一助になれば幸いである。

【使用MRI装置】
Achieva 1.5T Nova Dual(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神(AZE社製)

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