画像情報システム「CLEVINO PACS」 × 埼玉成恵会病院
電子カルテの稼働に合わせてPACSを更新し動画を含めて画像情報を統合管理─スピードと豊富な機能で画像情報の管理を可能にするPACSとシステム構築の柔軟性で診療をサポート
2021-12-1
埼玉成恵会病院(病床数170床)は,整形外科を中心に地域に根差した高度医療を提供している。同院では2011年からイメージワンの「POP-Net」を導入して,診療と健康診断業務の画像の統合管理などにPACSを運用してきた。2021年2月,電子カルテシステムの稼働に合わせてPACSを更新し,新たに放射線情報システム,線量管理システムなどをイメージワンのシステムで構築した。病院の概要とPACSの運用について,長谷川岳弘理事長・院長と放射線科の奥冨尚史技師長,山田達也主任に取材した。
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脊椎外科,手外科など専門外来で高度な医療を地域に提供
同院は,1969年東松山整形外科医院として開院,71年に病院となり,77年現在地に移転し83年に現病院名に改称して現在に至る。整形外科を中心に形成外科,循環器内科,脳神経外科,泌尿器科などを標榜し,救急医療や健康管理センターにおける健診・人間ドックの提供まで地域の急性期高度医療を支えている。特に整形外科に関しては,脊椎外科センターや手(肘から手指)のさまざまな疾患に対して専門的な診療を行う埼玉手外科研究所,関節外科センターを設けて診療に当たっているのが特徴だ。長谷川院長は同院の診療の特色について,「開院以来,整形外科を中心に専門性の高い医療を提供してきました。地域からも“何かあったら成恵会病院へ”と信頼されて,紹介だけでなく直接来院される患者さんも多く外来数も増えています。また,手術についても数多く行っていますが,大学病院などと違いお待たせすることなく2週間程度で可能です。それらも含めて多くの患者さんに利用していただいています」と述べる。
画像診断機器は,1階の画像センターにCT(16列),MRI(1.5T),一般撮影装置,骨密度測定装置,7階の健康管理センターにマンモグラフィ,X線透視装置などが稼働する。診療放射線技師は11名。検査件数は,月間でCT450〜500件,MRI400件などとなっている。
POP-Netで診療系と健診系の統合管理PACSを構築
同院では,2021年2月に電子カルテシステム(ソフトウェア・サービス)が稼働した。それに合わせてPACSなど放射線部門システムの更新と新規導入を行い,イメージワンの最新PACSである「CLEVINO PACS」,放射線情報システム(RIS)の「Connectio RIS」,線量管理システム「onti」などが稼働した。奥冨技師長は,「2011年から稼働していたPACSのPOP-Netでの実績を評価して,電子カルテ稼働を機にPACS,RIS,線量管理システムなど画像系をイメージワンのシステムで構築しました。同一ベンダーでそろえることで,システム間の連携の向上,導入・運用のコストメリットを期待してのことです」と説明する。
2011年のPACSの構築は,整形外科で多く撮影されフィルムで運用されていた一般X線撮影をデジタル化する目的でスタートした。山田主任はPACS導入について,「患者さん自身がフィルム袋を持って院内を移動する運用を改善し,患者さんの負担や業務の効率化を図りたいと考えたのがきっかけでした」と説明する。PACSの構築に当たってネックとなったのが,健康管理センターのデータだった。健康管理センターでは年間1万件の健診を行っており,データの運用やサーバ設置のコストなどの点で,診療と健診のデータを統合した運用が求められた。山田主任は,「病院の患者IDと健診の受診者IDを統合して,1つのサーバで管理できるPACSを検討した結果,それが可能だったのがイメージワンの旧PACSであるPOP-Netでした。統合できないとコストも管理の手間も2倍になってしまうので助かりました」と述べる。
イメージワンは,PACSの構築を進める中で,画像データは永久保存を原則とすること,地域柄落雷による停電が多いことからデータのバックアップシステムを用意することなど,病院側のさまざまな要望に対応した。奥冨技師長は,「こちらの要望に,迅速かつ柔軟に対応していただきました。その信頼関係とデータの継続性,病院の診療や体制の変化に合わせてシステムも同時に進化(更新)できるシステムであることを評価して,新システムでもイメージワンのPACSを選定しました」と説明する。
電子カルテ稼働に合わせ画像システムをイメージワンで一新
CLEVINOはイメージワンの新しいPACSで,ストレスのない高速表示と豊富な機能を,より低コストで構築できることが特長だ。
PACS端末は,電子カルテ端末に相乗りする形で診察室や病棟,手術室などに設置されている。診察室では電子カルテの2面に読影用高精細モニタを加えた3面構成の端末が13台稼働する。長谷川院長はCLEVINOをはじめとする画像系システムの構築について,「以前のPACSからの移行も問題なく,電子カルテとの連携もスムーズで見やすく使いやすい読影システムです。導入に当たっては,こちらからの要望にも柔軟に対応してもらい理想的な環境が構築できました」と評価する。
CLEVINOは画像管理だけでなく,簡易QA(検像)やMWM(Modality Worklist Management)など豊富な機能を搭載する。山田主任は,撮影した画像データや患者情報のチェックを行う検像の機能について,「従来はサーバに直接アクセスして修正を行う必要がありましたが,検像機能は管理者IDがあればどこの端末からでもデータの確認や修正が可能です。これによって業務が格段に効率化しました」と述べる。また,CLEVINOの“ゴミ箱”機能では,削除したデータはいったんゴミ箱(フォルダ)に移動されユーザーから見えなくなるが,管理者権限(ID)を使うことでゴミ箱から戻すことができる。山田主任は,「当院のように技師がサーバを管理しているような体制では欠かせない機能です」と述べる。
CLEVINOのもう一つの特長が,超音波,内視鏡などDICOM規格に準拠した動画データを1つのサーバで管理ができることだ。同院では,ほかに健康管理センターの眼底写真や画像に付随して発生するレポート(PDF)などを取り込んでいる。これによって院内で発生する画像データはすべて画像センター(放射線科)で管理できるようになった。山田主任は,「“画像”に関連するデータは放射線科でと担当部署を一本化でき,責任を持って管理できるようになりました」と言う。
RIS導入で放射線科業務の効率化や安全性が向上
Connectio RISは,撮影や検査など放射線科業務の管理をトータルで効率化する。電子カルテなど病院情報システムや放射線科の各モダリティとデータ連携することで,効率的な運用をサポートする。同院では,電子カルテの導入までは簡易RISで運用されていたが,電子カルテとConnectio RISの稼働で運用が大きく改善した。山田主任は,「RIS上でオーダのデータをそのまま装置に送信できるので,入力や確認の手間がなくなり,省力化につながっています。手入力がないのでミスもなくなりました。今後,新しい装置が導入されても,接続コストも削減できると期待しています」と述べる。Connectio RISでは,検査リストや患者情報の表示などについて,一覧して把握できる視認性の高いレイアウトを採用しており,医療安全や業務の効率化にもつながっている。また,線量管理システムのontiについては本格稼働はこれからだが,奥冨技師長は,「今後,線量管理の範囲が拡大した時に,画像情報システム側で各モダリティのデータをトータルで管理できるメリットは大きいと期待しています」と述べる。
電子カルテの稼働で必要となった超音波やマンモグラフィなどの各種レポートの電子化についても,イメージワンが担当している。超音波レポート「CLEVINOEcho」では,紙のレイアウトを踏襲してデジタル化し,DICOM SRなどにも対応した運用が可能になった。イメージワンとのシステム構築について奥冨技師長は,「こちらからの要望に対して単に“できない”ではなく,さまざまな対応策を柔軟かつ迅速に提案してくれるので安心感が大きいですね」と述べる。
タブレット活用やリモートアクセスなどへの展開を期待
PACSのこれからの展開として山田主任は,タブレット端末の導入などを挙げる。さらに,将来構想として,「PACSを医師が自宅など外部から参照できれば,救急などでの活用や,医師の働き方改革にも対応できるのではと期待しています」と語る。
地域に根ざして最新の医療を提供する同院の診療を,最新のPACSと柔軟なサポート体制でバックアップしている。
(2021年10月5日取材)
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