手術映像管理システム FsurV × 社会医療法人社団慈生会 等潤病院
手術映像を統合管理して院内での教育やカンファレンス,患者説明に活用 〜SYNAPSE SCOPEを核にしたシームレスな画像閲覧環境を実現〜

2017-7-3

富士フイルム

統合画像管理・参照システム


手術映像の管理,閲覧を可能にする「FsurV」。病棟でのカンファレンス風景

手術映像の管理,閲覧を可能にする「FsurV」。
病棟でのカンファレンス風景

東京都足立区の社会医療法人社団慈生会では,急性期を担う等潤病院を中核として医療,介護を統合した“トータルヘルスケア”を提供している。同院では,2017年に腹腔鏡下手術や内視鏡による治療の動画像を管理する富士フイルムメディカルの手術映像管理システム「FsurV(エフサーブ)」を導入し,検査画像統合システム「SYNAPSE SCOPE」の下で統合管理し運用可能なシステムを構築した。同院でのFsurVによる手術映像の活用について伊藤雅史理事長と手術部の小関啓太部長に取材した。

伊藤雅史理事長

伊藤雅史理事長

小関啓太手術部部長

小関啓太手術部部長

 

 

急性期から在宅医療,さらに介護・福祉までを統合したサービスを提供

慈生会では,等潤病院のほか在宅医療を専門とする常楽診療所,通所・訪問リハビリステーション,居宅介護支援事業所や介護老人保健施設など,急性期から回復期,介護までを含めた地域密着型のサービスを提供している。伊藤理事長は等潤病院を中心とした運営について,「足立区には中核となる大学病院や公的医療機関がないことから,各地区で民間病院を中心に地域に密着した医療を提供しているのが特徴です。慈生会では,医療から介護まで地域の中で1人の患者さんを支えることができる“トータルヘルスケア”の提供をめざし,急性期を担う等潤病院を中心に在宅医療から介護事業までシームレスに提供する体制を構築しています」と述べる。
等潤病院の病床数は一般122(うち地域包括ケア病床8),回復期リハビリテーション42でトータル164床だが,急性期医療を担う施設として320列CTや3T MRIなど最新の画像診断機器のほか,PACSなどITシステムの導入も積極的に進めている。伊藤理事長は,「ITシステムや高度医療機器への投資は,民間病院として急性期医療の機能を充実させ医療の質を向上させると同時に,最先端の環境を提供することで現場のスタッフのモチベーションを上げ,力を発揮してもらうこともねらいです」と説明する。

SYNAPSE 5を中心とする画像検査部門システムの概要

同院では,2011年から電子カルテシステムやPACSなど病院情報システムの導入を進めてきた。特に画像情報に関しては,CTやMRIなど放射線画像の保存・管理を行う医用画像管理システム(SYNAPSE)のほかに,循環器動画像システムや内視鏡部門システム(NEXUS),検査画像レポートシステム(SYNAPSE Result Manager),汎用ファイル管理・配信システムなどを導入し,これらを検査画像統合システム「SYNAPSE SCOPE」(以下,SCOPE)で統合管理し,ポータルビューワによる閲覧を可能にしている(システム構成図参照)。これらのITシステムは,病院だけではなく法人内の介護施設を含めて情報共有と連携推進を可能にすることを目的に構築されたもので,患者ID・ユーザーIDの一元化,サーバの仮想化,データセンターの活用など最新技術を駆使した構築が行われている。
同院におけるITシステム構築のコンセプトについて伊藤理事長は,「法人のめざす“垂直統合医療事業体”を実現するためには,医療,介護にかかわらず施設間の情報の共有や連携を行うことが不可欠であり,それを実現させるためのITシステムの導入を図りました」と説明する。

医局でのFsurVクライアントでの閲覧の様子

医局でのFsurVクライアントでの閲覧の様子

 

 

手術映像をサーバで一元管理し閲覧,編集が可能

同院では,2017年3月にシステムの更新を行い,PACSを「SYNAPSE 5」へバージョンアップするなど強化を図ったが,それに合わせて新たに手術映像管理システム「FsurV」が導入された。FsurVは,手術室のカメラやモダリティ(腹腔鏡など)を専用設計の“ネットワークエンコーダー”に接続して動画情報を取り込み,サーバに一元管理して閲覧や編集,電子カルテ端末への配信などを可能にするシステムである。同院の手術総数は年間951件(2016年実績)で,手術室で外科が行う件数は368件だが,これまで手術映像は手術室のレコーダでDVDなどの媒体に記録し,個別に管理されていた。今回のFsurVの導入の経緯について伊藤理事長は,「当初はDVDレコーダの更新を検討しましたが,手術映像も患者さんの医療情報の一つであると考えれば,リスク管理の観点からも病院として一元管理することが求められます。そこで,手術映像を管理できるFsurVを導入して,検査画像統合システムの中で管理し院内のどこでも閲覧できるシステムを構築しました」と説明する。
FsurVでは,手術室で行われる腹腔鏡手術や内視鏡的治療の映像を中心に保存されている。FsurVの導入に当たって,1症例約3時間の映像を年間500症例程度,5年分保存することを想定して試算を行い,48TBのサーバを導入した。院内では,ポータルビューワの「SYNAPSE SCOPE」からの動画配信による閲覧のほか,手術室と医局に設置されたFsurVクライアントでは,動画の編集やライブ画像の閲覧ができる。小関部長は,FsurV導入のメリットについて,「サーバに一元管理されたことで,映像管理は格段に容易になりました。閲覧についても,ストレスなく見たい時にすぐに呼び出すことができます。技術の向上のために,自分が担当した手術映像を見直すことは大事なことですが,以前はDVDなどの媒体に保存されていたため,閲覧には手間がかかるのが現実でした。FsurVでは,ネットワーク上で見たい時にすぐに閲覧できます。また,専用クライアントでは映像の必要な部分のカット編集も簡単にでき,学会発表や症例報告も活用できます」と述べる。伊藤理事長はFsurV導入の効果について,「従来のDVDでの個別管理の時の情報の流出や紛失といったリスクを考えると,使い勝手を向上しながらシステムとしてセキュリティを保ちリスクを回避できるという意味で投資するに値するシステムだと思います」と評価する。

SYNAPSE SCOPEで画像情報を統合した閲覧環境を実現

同院では,画像やレポートの閲覧に電子カルテと連動したSCOPEを利用している。SCOPEでは,CTやMRI,内視鏡などの検査画像やレポートを,患者ごとに時系列にマトリックス表示し,一覧からクリックすることで閲覧できる。FsurVの手術映像についてもSCOPEにリンクし動画配信用ビューワを呼び出して,高速な読み込みや早送りが可能になっている。SYNAPSE 5はアプリケーションのサーバサイドレンダリング処理が特長だが伊藤理事長は,「院内どこからでもスピーディな画像の閲覧が可能です」と述べる。
小関部長は,SCOPEと連携したFsurVの活用について,「手術映像についてもCTやX線画像と同じように,どこの端末でもすぐに利用できますので,カンファレンスや患者さんの説明など,手術映像を利用する機会が広がりました。外科では,毎朝カンファレンスを行っていますが,前日の手術の状況をその場で早送りで再生し確認できるようになりました。院内の電子カルテ端末であればどこでも確認できますので,患者さんや家族への説明時にも利用できます」と述べる。伊藤理事長は,「腹腔鏡手術は熟練が必要な手技であり,そのためには過去の映像を見たり,自分の手技を上級医と見ながら振り返ったりすることは教育面でも大きなメリットになります」と期待する。

■検査画像統合システム構成図

検査画像統合システム構成図

 

ポータルビューワ「SYNAPSE SCOPE」による検査画像・レポートの表示

ポータルビューワ「SYNAPSE SCOPE」による検査画像・レポートの表示

 

医療と介護の情報連携を核に地域医療連携を展開

慈生会では,システムの管理,開発などを行うJSIC(Jiseikai System Integrated Creation)事業所を設け,7名のスタッフで対応している。伊藤理事長は,「自院で開発や管理を計画的に進めることで,システム更新にも対応でき,結果的に投資も抑えることができます。また,開発や運用のノウハウを持つことで企業とのコラボレーションなど新しい展開の可能性も広がります」とそのねらいを説明する。
伊藤理事長は,これからのITシステムへの期待について,「高齢社会を迎える中で,今後は高度医療の提供だけでなく地域の中でのシームレスな情報連携がますます必要になります。病院経営的にも,1病院や法人で完結するのではなく,介護も含めた包括的な観点でさまざまな事業体を統合し一体化したサービスの提供が求められます。その際にITを使った情報共有は必須であり,情報化への投資はある意味で将来に向けた布石とも言えます。検査画像統合システムなど当院で構築したITシステムを核として,地域がシームレスに連携可能なネットワークに広がっていくことを期待しています」と述べる。
伊藤理事長は,地域医療連携推進法人も視野に入れた同院の運営の中で,ITシステムの活用は不可欠と語る。画像情報から地域連携まで,システムを活用した展開が期待される。

(2017年5月22日取材)

 

社会医療法人社団慈生会 等潤病院

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〒121-0075
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 ヘルスケアIT展

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