ShadeQuest/Unlimited × NTT西日本東海病院
クラウドを活用した画像共有で地域医療連携サービスを提供─信頼性の高いセキュアなネットワークと画像サーバで画像検査を中心とした地域医療連携をサポート
2014-4-1
ShadeQuest/Unlimitedで画像参照する
連携先の石井院長
横河医療ソリューションズ
http://www.yokogawa.com/jp-mis/
NTT西日本東海病院は,名古屋市中心街の中核病院として,近隣医療機関と連携した医療を展開している。同院では,2013年12月から横河医療ソリューションズとNTT西日本,NTTスマートコネクトが提携して運用する医療機関向けクラウドサービス「ShadeQuest/Unlimited」を利用して,紹介検査の画像配信サービスを中心とする地域医療連携サービスをスタートした。クラウドを利用した画像連携システムの運用の状況と位置づけについて,佐藤泰正院長と小柳裕司事務長に,導入の経緯について放射線科の岡本茂樹技師長,渡辺 薫主任にインタビューした。また,連携先医療機関でのクラウドPACSの実際の運用について,たかい整形外科の石井 要院長に取材した。
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■医療連携に力を入れ地域に根ざした医療を提供
NTT西日本東海病院は,1971年に“東海逓信病院”としてオープン。NTT(旧電電公社)の職域病院として運営されてきたが,1982年に一般診療を開始,以来,地域の中核病院としての役割を担ってきた。名古屋市中区は,栄や大須といった繁華街,愛知県庁や名古屋市役所など行政機関が集まる,まさに名古屋の中心部である。病院のある大須地区は寺社や生花市場,電気街などの商業地域で,古くからの住民も多い。病院の診療の現況を佐藤院長は,「当院は一般開放後,社員の占める割合が年々減少しており,現在では1割以下です。それだけに地域の中での役割を果たすことが求められており,整形外科・脊椎脊髄センターなど専門性に特化した診療の提供,地域医療機関との連携の積極的な展開,そして健診業務などを含めたNTT社員および家族の健康管理を3本柱として運営しています」と説明する。
同院では,以前から医療連携を積極的に進めており,地域医療連携機関として名古屋市の15区165医療機関が登録されている。2008年には地域医療の役割を強化するため,“地域連携福祉相談室”を新たに設置し,メディカルソーシャルワーカー(MSW)や看護師を配置して,入院の受け入れや退院後の在宅や福祉施設への紹介などに対応する体制を整えた。また,名古屋市医師会の病診連携システム協議会への参加や,介護・福祉領域では介護老人保健施設などとの連携を行う“まつぼっくりの会”を立ち上げるなど,さまざまな取り組みを進めている。佐藤院長は地域医療連携について,「150床という病院の規模と特徴を最大限に生かし,地域のさまざまな施設やスタッフとコミュニケーションを取りながら,連携を強化しています」と述べる。
■画像検査依頼を中心に地域医療連携を展開
同院では,放射線科を中心に地域の開業医からの紹介による画像検査依頼を積極的に受け入れている。佐藤院長は放射線科での地域連携について,「当院は画像診断機器が充実しており,放射線科が中心になって地域からの画像検査依頼を積極的に受けています。画像がきっかけとなって,入院が必要な患者さんの紹介など診療の連携にもつながっています」と述べる。放射線科のモダリティは,MRIが1Tと1.5Tの2台,CT 1台,マンモグラフィ,RI(SPECT)などが導入されている。外部からの紹介検査枠としてMRI 5枠,CT 2枠を設けている。紹介患者の検査は,そのほかRI,マンモグラフィなどでも対応する。
同院では,放射線科の診療放射線技師が自ら開業医を訪問する “営業活動”を行っている。岡本技師長は,そのねらいについて,「検査を頼みやすいのは,やはり顔を知っているところですので,顔が見える放射線科をめざしています。放射線科のスタッフは担当のエリアを決めて,病院の広報誌が発行されたタイミングで半年に1回程度,連携先施設を訪問しています。医療機関の院長先生や職員の方とコンタクトすることでさまざまな広がりが生まれます」と説明する。また,同院の紹介画像検査のポイントのひとつに,レポートを当日に作成して画像とともに返送していることがある。岡本技師長は,「検査終了後,CDやフィルムを患者さんに渡す時にはレポートもつけるようにしています。ここまで迅速な結果返送をしている施設は,ほかにはないと思いますので,当院の特長として他院との差異化を図っています」と述べる。
放射線科のスタッフは,診療放射線技師9名,看護師1名,看護助手1名。放射線科医は常勤1名,非常勤1名が週3回読影を行っている。
■NTT西日本東海病院における地域医療連携サービス概要図
■クラウドを利用した画像連携システムを構築
同院では,地域の開業医からの紹介画像検査について,クラウド型医用画像総合管理サービス「ShadeQuest/Unlimited」を利用した“地域医療連携サービス”を,2013年12月からスタートした。ShadeQuest/Unlimitedは,2010年の厚生労働省通知によって民間事業者による医療情報の外部保管が可能になったことで,横河医療ソリューションズとNTT西日本,NTTスマートコネクトが協業して,2012年3月から提供を開始したクラウドサービスである。今回の連携サービスでは,フィルムやCDで行っていた検査結果の提供をクラウド上の連携サーバに登録して地域の医療機関での画像参照を可能にするシステムを構築した。NTT西日本のネットワークとNTTスマートコネクトのクラウド環境,横河医療ソリューションズの画像管理システムによって,地域の医療機関との画像共有が高額な設備投資を必要とせず実現可能となった。また,検査の予約についてもインターネットを使った予約受付システムを導入し,ネット上で空き状況を確認して検査依頼が可能な仕組みをあわせて導入し,依頼元となる医療機関の利便性の向上を図った。
岡本技師長は,クラウドによる画像診断サービスの提供について,「病院として,紹介検査を増やすことは以前からの課題でした。多くの医療機関がある中で,当院が地域に貢献しつつ,病院の収益向上にも一役買うには何が必要かを検討してきました。その条件として,開業医の先生が自分の施設の検査室のように利用できる環境が重要だと考えました。そのためには,ネット上で簡単に予約ができること,結果を院内のPACS端末のようにすぐに参照できること,緊急検査へ対応することが必要であり,これがクラウドによる画像共有で可能になりました」と語る。
放射線科では,新しいクラウドサービスについて,まず検査依頼件数の多い施設を中心に提案を行った。連携サービスでは,クラウド化によって連携先の医療機関側も少ない初期投資でサービスに参加することが可能になった。小柳事務長は,「画像連携システムの構築には,ある程度の投資が必要ですが,NTT西日本グループと横河医療ソリューションズが連携して提供するクラウドサービスを採用したことにより,投資や運用コストを抑えられたことが、導入の決め手になりました」と説明する。
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■検査の予約から結果参照までネットワークで提供
クラウドによる地域医療連携サービスは,最初のユーザーの登録が完了し,2013年12月から運用がスタートした。2014年2月現在で,5つの医療機関のインフラ整備が整い運用が開始されており,さらに3つの施設で導入準備が進められている。
クラウドを使った紹介検査の流れについて,クラウド連携サービスのファーストユーザーである,たかい整形外科(石井要院長,コラム参照
)での運用とコメントを紹介する。
●予約受付システム
「予約受付システム〔NTTラーニングシステムズ(株)提供〕」は,インターネットを利用した検査枠の予約システムである。依頼元となる医療機関からインターネットに接続できる端末で,ホームページ上に公開された検査枠の予約ができる。カレンダーから日付ごとに検査枠の空き状況を確認して,端末上から検査予約が可能だ。石井院長は,「これまでの電話でのやりとりに比べて,ホームページを見れば空き状況がすぐにわかりますので,その場で患者さんに確認して予約ができるのは便利です」と述べる。
連携枠の管理は放射線科の受付で行っているが,現状では予約受付システムと電話などのオフラインの依頼が並行しているため,スタッフがシステム上のデータを管理している。システムでの予約情報は放射線科宛にメールで送信され,受け付けると依頼元にメールで返信される仕組みだ。
●クラウド連携サーバへの画像登録
院内には,他社製PACS,RISが導入されているが,病診連携の画像データについてはPACSから横河医療ソリューションズのゲートウェイ端末に保存。読影レポートとあわせてクラウドの連携サーバに送信する。
クラウドへの登録時のシステムの使い勝手について渡辺主任は,「撮像シーケンスの多いMRIの検査では500枚近い画像になりますが,転送時間のストレスはありません。依頼検査の画像選択からローカルでの保存,送信までの一連の流れは,ゲートウェイ端末で一括して操作が可能です」と評価する。
一方で,個人情報保護の観点から,連携サーバへの画像データ送信時に,横河医療ソリューションズが開発した連携機能により,施設ごとに認証情報を付加して登録している。渡辺主任は,「施設ごとの認証情報を画像につけることで,クラウド上の同じ画像サーバに保管しても,依頼側の医療機関からは自施設からの紹介患者の画像しか参照できません。認証情報の仕組みを入れることでクラウドでの画像連携のセキュリティを確保しています」と連携サーバでの運用を説明する。
■たかい整形外科:クラウドで簡単迅速に画像やレポートを参照
たかい整形外科では,以前からNTT西日本東海病院との病診連携による画像検査を利用してきた。石井院長は画像検査の依頼について,「当院はビルの中にあるクリニックのため,スペースが狭く検査機器を揃えることができません。整形外科の脊椎や腰椎,関節疾患の診断のためにMRIを中心にお願いしています。同院の整形外科は脊椎脊髄センターとして専門的な診療を行っており,手術など高度な治療が必要な場合には患者さんの紹介を行うなど連携しています。他の施設にも検査依頼はしていますが,MRIの9割はNTT西日本東海病院です。画像レポートの質も高く,早く丁寧で信頼しています」と述べる。
地域医療連携サービスの画像参照について石井院長は,「クラウドによるシステム導入で,結果の画像データをより早く,簡単に参照できるようになりました。モニタ上で画像をページングするなどビューワの機能を使って参照できます。従来もデジタル画像はCDで提供されていましたが,画像の読み込みに時間がかかり使い勝手はよくありませんでした。クラウドでは,画像の表示スピードについてもストレスを感じたことはありません」と評価している。
■システム導入による利便性の向上で地域医療連携の拡大めざす
佐藤院長は,今後のクラウドの利用について,「災害時のBCP対策としてのクラウド利用などは,今後早急に考えていく必要があります。また,将来的には,医療や介護,福祉との連携も含めて地域住民の診療情報を共有する基盤となることを期待しています」という。小柳事務長は今後の展開について,「クラウド導入による紹介検査数の増加と同時に,まずは当院で順調に運用することで地域連携システムの成功事例として,横河医療ソリューションズとNTT西日本グループの今後の協業展開につながることを期待しています」と述べる。
岡本技師長は,放射線科を中心とした画像検査の地域医療連携の今後について次のように語る。
「今回のようなクラウドによる画像連携をきっかけとして,地域の開業医の先生方とのコミュニケーションが密になっていくことが理想です。われわれは“営業活動”を行っていますが,どんな商品でも同じようにアフターケアやフォローが重要です。当院が近隣の医療機関から必要とされる存在となるように,クラウドによる地域連携ネットワークをツールのひとつとして,検査の質やサービスの向上を図っていくことがこれからの課題になると思います」
クラウドによる連携サービスの導入をきっかけとして,今後,病院としての診療の可能性を広げつつ,地域と患者に貢献していくことが期待される。
(2014年2月13日取材)
NTT西日本東海病院
住所:〒460-0017名古屋市中区松原2-17-5
TEL:052-291-6332
病床数:150
URL: http://www.ntt-west.co.jp/tokai-hosp/
〈連携先医療機関〉たかい整形外科
側彎症や小児整形などを含めて地域の整形疾患に幅広く対応
たかい整形外科は,NTT西日本東海病院からは徒歩で約10分,大須商店街の赤門通入口の商業ビル(第2アメ横ビル)の3階にある。同フロアは,ほかに内科,泌尿器科のクリニック,歯科医院,薬局が入居したメディカルモールとなっている。たかい整形外科は,2009年に以前から開設されていた施設を石井院長が継承する形で開業した。石井院長は名古屋市立大学医学部を卒業後,城西病院,国立豊橋病院などの勤務を経て,1984年に大学に戻り非常勤講師・医師として外来を担当してきた。同院での診療について石井院長は次のように述べる。
「脊椎と小児の側彎症を専門としていますが,大学では整形外科,リハビリテーション部の外来を25年間続けてきました。開業してからは,一般的な整形疾患やリハビリテーションを提供していますが,側彎症の診療や障がい児の診療,小児整形など特殊な外来も行っています。リハビリは狭いスペースですが,温熱療法やマッサージなど一般的なリハビリと小児のリハビリにも対応しています」
住所:〒460-0011
名古屋市中区大須3-14-43
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