Brivo CT385 × 医療法人社団まりも会 ヒロシマ平松病院
高齢者に優しい機能を搭載した16列CT「Brivo CT385」を導入し,整形外科を中心に地域医療を展開 ─ 高速撮影,コンパクト設計,ハイコストパフォーマンスで中小規模病院のCT検査を支援
2012-9-1
ヒロシマ平松病院に導入された16列CT「Brivo CT385」
左から平松廣夫院長,梅原栄二主任,内藤佑輔技師,兼松真吾技師
医療法人社団まりも会ヒロシマ平松病院 は,平松整形外科病院と八丁堀平松整形外科消化器科病院を統合・移転し,2011年4月に新病院としてのスタートを切った。新病院では整形外科以外の診療科目を拡充し,総合的な診療を行える体制を整えた。 同院では,2012年6月,GEヘルスケア・ジャパンの16列CT「Brivo CT385」を導入した。Brivo CT385は,GEが進める「Silver to Gold(シルバー・トゥ・ゴールド)戦略」の一環として,今後の超高齢社会の中で患者に優しい検査が行えるアプリケーションや技術を搭載し,ランニングコストや設置性などにも配慮した製品として開発されたCTである。 高齢患者への対応や,装置のコストパフォーマンスなどを考慮して機種選定を行ったというヒロシマ平松病院での導入までの経緯と,運用の現況を取材した。
■より高度な医療の提供をめざして
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ヒロシマ平松病院は2011年4月,南区比治山本町に開院した。病床数は161床で,一般80,回復期40,療養41の構成となっている。診療科は,整形外科,外科,消化器外科(内視鏡),呼吸器外科,脳神経外科,麻酔科,内科,消化器内科,循環器内科,リハビリテーション科,リウマチ科,放射線科で,自由診療としてアンチエイジング外来なども行っている。まりも会理事長で同院の院長を務める平松廣夫氏※は,新病院開設の経緯を次のように語る。
「1982年に平松整形外科病院を開院し,その後,八丁堀平松整形外科消化器科病院も開設して診療を行ってきましたが,それぞれの病院の施設の老朽化と施設の分散による無駄を省くことを考えて,新たに整形外科だけでなく,より広い疾患にも高度な医療を提供できる新病院としてスタートしました。各診療科に専門的な医療に対応できる医師を置いていますが,それだけでなく看護師,診療放射線技師やリハビリテーションスタッフなどあらゆる職種が協力して,より良い医療を提供することを理念として診療にあたっています」
同院では,4つの手術室を備えて,整形外科のほか,外科では鏡視下手術(腹腔鏡,胸腔鏡),内科では内視鏡による検査・治療を行っている。平松院長は,「難しい症例や高度な手術に関しては,広島大学病院などと連携しながら,専門的な手術が行える体制をとっています」と述べる。
広島市では,二次救急医療を診療科ごとにいくつかの病院が当番日を決めて交代で対応する病院群輪番制度をとっている。同院では整形外科の救急を担当しているが,広島市では厳しい医療環境の中で救急医療体制の維持が難しくなっているのが現況だ。
平松院長は,「医師不足によって輪番に対応できない施設が出てきており,当院の担当するウエイトが高くなっています。また,骨折などで来院される患者さんでも,高齢化が進んでいるため整形外科だけでなく,全身の状態をトータルに診察する必要が高まっています。画像診断機器についても,高齢者の医療や救急にも対応できる機能が求められているといっていいでしょう」と語る。
■診療報酬改定を契機にコストパフォーマンスの高いBrivo CT385を導入
同院では,今回,2列CTのProSpeedⅡ(GE社製)からのリプレイスで,「16列CT Brivo CT385」を導入した。平松院長は,導入の経緯を次のように説明する。
「整形外科の診断ではMRIのウエイトが大きいですが,CTは撮影時間が短いので,MRIでは難しい認知症の患者さんや高齢者,救急などで撮影しています。前機種の2列CTは,2005年に画質と操作性を直接確認して導入しました。今回,ちょうど更新の時期にあったことと,診療報酬改定でCTの撮影点数が見直されたこともあり,将来的な収支なども考えて16列CTへのリプレイスを決定し,Brivo CT385を選定しました」
2012年4月の診療報酬改定では,CTについて,従来の16列未満のマルチスライスCT(820点),16列以上のマルチスライスCT(900点),それ以外(600点)という区分が細分化され,4列以上16列未満(780点),16列以上64列未満(900点),64列以上(950点),それ以外(600点)となった。そこで,16列CT導入後の収入と購入資金の収支についてシミュレーションを行い,導入を決定した。
放射線科の梅原栄二主任診療放射線技師は,Brivo CT385の導入について,「旧病院からProSpeedⅡを使用してきて,画質や使い勝手は高く評価していました。リプレイスにあたっては,他社の装置も検討した上で,GEのBrivo CT385を選定しました。撮影のスピードが向上したことで患者さんの負担が軽減するのと同時に,アイソトロピックデータで広範囲のデータ収集が可能になり,診療科からのさまざまなオーダに柔軟に対応できるようになりました。また,コンソールについても,3D画像処理機能が搭載されており,専用のワークステーションを使わなくても,高度な画像処理やアプリケーションを利用することができます」と評価する。
■「Silver to Gold戦略」で高齢者の検査に配慮したBrivo CT385
Brivo CT385は,超高齢社会に対応する製品やソリューションを提供するGEのコンセプトである「Silver to Gold戦略」の一環として開発された16列CTであり,コンパクトなガントリ設計と高速撮影,スキャン前の複雑なポジショニングの手間を省くスマートポジション機能によって,クリニックや中小病院での高齢患者の検査をサポートすることが期待されている。
同院での稼働から1か月の検査件数は120件,1日平均では6件となっている。整形外科の患者が多い同院だが,CTに関しては撮影領域は,整形3割,頭部3割,胸腹部4割とほぼ均等となっている。梅原主任は,「骨折など整形外科で来院される患者さんは高齢の方が多いので,骨折部位だけでなく,全身状態の把握のためにCTを撮影することが多くなります。例えば,転倒の際に頭を打っていれば頭部を,気胸を疑われる場合には胸部を撮影しますので,CTは全身が対象になります」と説明する。
整形外科の救急輪番では,脊椎の圧迫骨折,狭窄症などの脊柱関係の疾患,股関節の大腿骨頸部骨折などの患者が多いが,救急車や車いすで来院し,検査時に体位の固定が難しいケースを多く経験しているという。梅原主任は,「Brivo CT385は,高速撮影により息止めなどの患者さんの負担を軽減できることや,しっかりとポジショニングしなくてもすぐに撮影できるスマートポジショニング機能に期待しています」と語る。
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■上位機種と同等の高速撮影と画像処理を実現するハイコストパフォーマンス
●30cm・9秒の高速撮影
Brivo CT385は,均等16配列20mmのディテクタを搭載し,同社の64列CTと同等の最小0.625mmスライスで,アイソトロピックな高精細データの収集が可能である。同院では,頭部,頭部CTA,整形領域では,ルーチンで0.625mmスライスで撮影している。梅原主任は,Brivo CT385の検査の現況を次のように説明する。
「Brivo CT385では,1回のスキャンでより広い範囲を高速に薄いスライスで撮影することができるようになりました。胸腹部は,ルーチンではPACSのサーバ容量の関係から5mmスライスの画像を提供していますが,すべて1.25mmスライスのデータを持っていますので,後からシンスライスのオーダがあっても対応できます。医師からは,薄いスライスの追加オーダが増えました」
Brivo CT385では,ハイヘリカルピッチ1.75での撮影を実現し,1.25mmスライスでは30cmを約9秒,精査の最小0.625mmスライスでも17秒で撮影が完了する。梅原主任は,「2列CTでも0.6mm(オプション)での撮影は可能でしたが,撮影時間がかかりました。10mmスライスで再構成しても20秒以上の息止めが必要でした。Brivo CT385では,1検査の撮影時間が短くなり,患者さんにとっても息止めなどの負担が減っています」
●高速撮影にも対応する2MHU高出力X線管
Brivo CT385の管球には2MHUの高出力X線管が採用されているが,梅原主任は「2MHUの管球は2列CTの時から経験していますが,Brivo CT385では撮影時間の短縮によって,さらに余裕を持って検査が行えています。腹部の造影検査で3相の連続撮影を行ってもクーリングタイムは発生しません。これは,管球のパワーと同時に,16列による高速撮影によって負荷が軽減されたからだと思います。管球のランニングコストと性能のバランスを考えても,Brivo CT385は,当院のような規模の病院にとって,コストパフォーマンスに優れたCTだと思います」と述べている。
●設置面積10m2のコンパクト設計
Brivo CT385の本体は,高さ173cm×幅180cm×奥行き97cmとコンパクトになっており,従来のシングルスライスCTや4列CTと同等の設置スペース(約10m2)に設置することができる。同院でも,「以前のCTの部屋にそのまま設置できました。救急や入院患者の検査の際には,検査室内までベッドやストレッチャーを入れる必要があり,スペースに余裕が必要ですが,十分な空間が確保できています」(梅原主任)とのことだ。
■ポジショニングなしでスピーディな検査を可能にするスマートポジション機能
Brivo CT385では,逐次近似法を応用した画像再構成法のAiNR(Advanced Iterative Noise Reduction),ウィンドミルアーチファクトを除去する“IQ Enhance”などを組み合わせた画像処理機能であるCViR(Clear View Image Reconstruction)によって,高速撮影と高画質を両立させている。上位機種にも搭載されているCViRを駆使することで,Brivo CT385の特長であるスマートポジションなどの機能を実現させている。
●スマートポジション機能
Brivo CT385のスマートポジション機能は,撮影前にOMライン(眼窩外耳道線)の位置合わせなどを必要とせず,患者をベッドにセッティングするだけでスキャンを可能にする。これまではOMラインの位置決めのためのポジショニングに時間がかかったり,身体の自由のきかない高齢者などに無理な姿勢を強いていたが,スマートポジションでは撮影されたボリュームデータから自動的にOMラインに画像を変換して出力する。梅原主任は,「OMラインでのセッティングは大変な手間ではありませんが,患者さんの状態によっては難しいこともあります。ポジショニングを気にせずに,患者さんを固定することを優先して撮影できるメリットは大きいですね」と述べる。
同院では,スマートポジションの機能のひとつであるDigital Tilt Pro(デジタルチルトプロ)を中心に利用していると梅原主任は言う。「すべてオートではなく,ボリュームデータから自分たちで角度を決めて画像を再構成しています。画像の再構成時間が速くなっており,撮影終了と同時にほぼリアルタイムで画像が出てきますので,スムーズに作業が行えます」
●被ばく低減のためのODM(Organ Dose Modulation)機能
Brivo CT385は,スマートポジションでのチルトレス撮影による被ばく低減機能として,ODM(Organ Dose Modulation)機能を搭載している。頭部や胸部のスキャン時に,放射線に対して感度の高い部位(頭部は水晶体,頸部は甲状腺,胸部では乳房が対象)を自動的に検知して,該当部位のスキャンを行う際に照射線量を最適化して無駄な被ばくを避ける技術である。梅原主任は,CT検査の被ばく低減について,「プロトコルの中に組み込んで,検査時の照射線量を低減できるように取り組んでいきたいですね」と語っている。
【Brivo CT385による臨床画像】
■Brivo CT385の高いパフォーマンスを生かし診療科の依頼に応える
梅原主任は,Brivo CT385による今後の取り組みを次のように語る。
「Brivo CT385の導入で,診療科からはシンスライス撮影のオーダが増えています。当院の胆石外来では,腹腔鏡による胆嚢摘出術の術前に,CTによる胆嚢の造影検査であるDIC-CTを行っていますが,より薄いスライスで撮影することで胆嚢内の病変部が胆石なのか胆泥なのかの判別ができます。Brivo CT385のシンスライスデータや3D機能などを生かして,診療科からの依頼に最適な画像を提供していきたいと考えています」
高いコストパフォーマンスを発揮するBrivo CT385が,地域の中で新たなスタートを切ったヒロシマ平松病院の診療に大きく貢献することが期待される。
平松廣夫院長の実兄で社団の会長である平松恵一氏は,2012年7月に広島県医師会会長に選出された。平松新会長は,整形外科医として今もヒロシマ平松病院,銀山町ヒロシマ平松整形外科・外科(旧平松整形外科病院)で外来を行っているが,県医師会長としての抱負を「広島県の最大の課題は医師不足による地域医療の崩壊への対応であり,広島県医師会が中心となって行政や大学と連携して取り組んで行くことがひとつの役割」と語っている。
(2012年7月30日取材)
※「廣」と表記しておりますが,正しくは「まだれに黄」です