syngo.via / syngo.plaza × 済生会宇都宮病院
syngo.via導入でワークフローを改善し,24時間365日クオリティの高い画像診断を実現—画像解析の自動処理がもたらす検査・診断の効率化と質の向上
2011-7-1
放射線科の読影ブース
読影ブースは12セットある。4面ある高精細モニタは,
右からsyngo.plazaのモニタが2面,syngo.viaが2面となっている。
syngo.plazaから必要に応じsyngo.viaを起動,展開させる。
栃木県の県東・中保健医療圏の基幹病院として,地域医療の重責を担う済生会宇都宮病院 では,2011年1月に電子カルテを中心とした新医療情報システムが稼働し始めた。このうち放射線部門では,シーメンス社の最新の画像解析ソリューション「syngo.via 」とPACS「syngo.plaza 」を導入。電子カルテと連携して院内に放射線部門の検査画像を提供している。特に,CT,MRI,PET・CT検査では,syngo.viaを活用した3D画像の自動処理などにより,効率的,かつスピーディで質の高い検査を行い,24時間365日クオリティの高い画像診断を実現している。新しい発想の画像解析ソリューションとして2010年に国内発表されたsyngo.viaのファーストユーザーである同院に,導入のねらいと運用の実際について取材した。
●地域医療の重責を担い高度医療を提供
済生会宇都宮病院は,県東・中保健医療圏の基幹病院として,地域に根ざし,患者さんに優しく,信頼される医療を行うことをめざしている。一方で,急性期病院として,大学病院同等の高度医療を提供する体制を整え,回復期病院や診療所などの後方連携先の医療機関とともに,地域連携の充実化を図っている。
このような地域医療の重責を担う医療機関として,同院では診療環境の整備にも熱心に取り組んでいる。その一環として,従来のオーダリングシステムなどを全面的に更新し,新たに電子カルテを中心とした医療情報システムを構築し,2011年1月から運用を開始した。このシステムの中で,放射線部門では,シーメンス社の画像解析ソリューションであるsyngo.viaとPACSのsyngo.plazaを運用しており,フィルムレスで画像を院内配信している。
2009年の北米放射線学会(RSNA)で発表され話題となったsyngo.viaは,“Auto Processing” “Accessibility” “Anytime, Anywhere”をコンセプトにした,いままでにない発想から生まれた画像解析ソリューションである。ユーザーが複雑な操作をすることなく,検査オーダに応じて自動的にサーバ側で解析処理を行い(Auto Processing),その画像データをサーバサイドプロセッシング技術により,端末に依存せず瞬時に閲覧することができる。また,DICOMやHL7といった標準規格に準拠しており,モダリティや電子カルテ,PACS,RISなどのシステムとシームレスに連携し(Accessibility),情報共有を可能にする。これにより,施設内の各所で,いつでも,どこでも必要なときに(Anytime, Anywhere),画像データを読影・参照できる。従来の放射線部門のワークフローを大きく変え,検査のオーダから実施,読影,レポートと画像の配信までのターン・アラウンド・タイムを劇的に短くする。それがsyngo.viaの最大の特長である。
●効率性を重視したシステム選定で画像解析の自動処理を評価
同院の新システム導入プロジェクトを率いた本多正徳診療部長がsyngo.viaの存在を知ったのは,2009年の10月ごろであり,RSNAで発表される直前だった。医療情報システムの更新に向け,採用するシステムの検討を行う過程でのことで,当時は,まだ実機がなく,シーメンス社のプレゼンテーションだけの情報であったが,サーバサイドプロセッシングによる高速な画像処理・配信に興味を持ったという。ただし,その時点では,syngo.viaとsyngo.plaza以外にも,他社のPACSも選定候補に挙がっていた。
そうした状況の中で,syngo.viaとsyngo.plazaの採用を決定づけたのが,2010年のJRC開催前に行われたsyngo.viaのデモンストレーションであった。同院に持ち込まれた実機による画像処理を目の当たりにした本多診療部長は,あ然としたという。「循環器のデータを見たのですが,スピードの速さはもちろんのこと,検査データがすべて自動的に解析処理されているところに驚きました」
このデモンストレーションを経て,放射線部門が中心となって選定が行われ,syngo.viaとsyngo.plazaの採用が決定した。本多診療部長は,その理由について,「どのような目的に主眼を置くかを考えた場合,当院では効率性を最も重視しました。syngo.viaのデモンストレーションを見て,効率的な検査・診断につながる製品だと,総合的に判断したのです。また,当院では,夜間,休日の救急症例において,放射線科医が在宅で遠隔画像診断を行っています。将来的には,syngo.viaのスピードをこの遠隔画像診断にも生かせると考え,導入を決定しました」と説明している。
●syngo.viaとsyngo.plaza,ワークステーションの組み合わせで効率化を実現
このようにしてsyngo.viaを採用した済生会宇都宮病院では,2010年8月に,世界9か国の先進的な16施設とともに,syngo.viaのベータ版のテストに参加して評価を行い,ブラッシュアップされた製品を9月から運用し始めた。さらに,2011年1月の医療情報システムの全面更新とともに,本格的に稼働させた。
現在,放射線部門では,シーメンス社製64スライスCT「SOMATOM Definition AS」とDual Source CT「SOMATOM Definition」の2台が稼働しているほか,SOMATOM Definition ASの追加導入を進めていて,3台体制になる予定である。また,MRIは,シーメンス社製1.5T装置の「MAGNETOM Avanto」など計3台が稼働している。Avanto以外の2台は,今後3T装置「MAGNETOM Skyra」,1.5T装置「MAGNETOM Aera」に更新される予定である。さらに,シーメンス社製PET・CT「Biograph Sensation 16」,血管撮影装置「Artis zeego」「Artis zee BA Twin」「Artis zee BC」などが稼働している。
これらの装置は,PACSであるsyngo.plazaと接続されており,CT,MRI,PET・CTのデータについては,syngo.viaにも送信されるようになっている。
実際の検査では,電子カルテから検査のオーダが出されると,その情報は放射線部門のRISに送られる。各モダリティは,MWM(Modality Worklist Management)によりRISからワークリストを取得し撮影が行われる。CT,MRI,PET・CTの検査では,検査を担当する診療放射線技師が必要な画像解析処理に対応したプロトコール名をsyngo.viaに入力しひも付けを行う。そして,撮影が行われると直ちに画像データが自動的にsyngo.viaのサーバに送信され,スタディ名に対応した画像解析が自動処理される。解析処理は撮影データをsyngo.viaのサーバにすべて送信し終える前から始まるため,放射線科医は,撮影後大きなタイムラグもなく,すぐにクライアント上で3D解析処理を診ることが可能だ。一方で,syngo.plazaは,検査後に診療放射線技師がコンソール上からサーバに保存する操作を行い,検像システムを介してデータが送られる。また,syngo.plazaには3D画像処理用のワークステーションが接続されており,CT,MRIのデータについては必要に応じて3D画像を作り込み保存している。
このように同院では,画像解析を行うsyngo.viaのサーバには,ボリュームデータを短期的に保存し,データの長期保存はPACSであるsyngo.plazaで行う運用としている。また,syngo.viaは放射線科医が読影に使用しており,ワークステーションは長期保存用に診療放射線技師が3D画像処理を行うといった使い分けをしている。放射線科以外の診療科の医師が3D画像を参照する場合は,PACSに保存された長期保存用のものを利用することになる。syngo.viaとsyngo.plaza,ワークステーションを組み合わせて使い分けることで,同院の放射線部門では,効率的な検査・診断ができるようにしている。
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●検査・診断の短時間化が進み高いクオリティを常に維持できる環境に
新しい医療情報システムの中で稼働し始めて半年が過ぎたsyngo.viaであるが,本多診療部長は次のように評価している。
「操作性については,シーメンス社製品共通のインターフェイスであるsyngoに基づいたもので,アプリケーションのアイコンのデザインも統一感があり,直感的で非常にわかりやすく,すぐに覚えることができます。また,アプリケーションでよく使用しているのが,“CT Vascular”です。大動脈ステントグラフト術の術前に,ステントグラフトのサイジングをするのですが,自動で血管の中心線をトレースしてくれるほか,内腔径や主要な動脈から動脈瘤までの長さも自動計測してくれます。精度が非常に高く,サイジングの時間も大幅に短縮されました。従来は30分ほどかかっていたものが,syngo.viaを使うことにより,5~10分程度で終えることができます」
このほか,本多診療部長はPET・CT用アプリケーション“MM Oncology”の早期相と後期相を連動して表示する機能の有用性が高いと説明している。また,ほかの医師からは,心臓CT用の“CT Coronary”や腹部MRI用の“MR Abdomen”などが高く評価されているという。
一方で,診療部長として病院をマネジメントする立場からも,syngo.via導入の効果は大きいと本多診療部長は説明する。
「syngo.viaの導入により利便性が良くなり,放射線科医の場合,1件あたりの読影にかかる時間も短縮されています。個々の作業を消化する時間が短くなったことで,時間の有効活用に結びついています。さらに,夜間や休日など人員が少ない場合,以前はワークステーションを操作できる診療放射線技師がいなければ3D画像を作成できませんでしたが,syngo.viaではサーバが自動で解析処理を行うため,平日の日中の検査・診断体制と同じクオリティを維持することができています。また,救急の検査では,検査後すぐにsyngo.viaで解析処理された画像を読影することができるので,救急医を待たせることなく速やかに情報を提供することができるようになりました」
加えて,syngo.viaによる画像解析の自動処理は,リスクマネジメントの観点からもメリットを生んでいる。本多診療部長は,「オーダから検査,診断までのワークフローの中で,人が作業を行えばミスが生じるリスクが発生します。自動化できる作業は自動化して,医師,診療放射線技師がそれぞれ本来の業務に専念できる環境を提供することが重要です」と述べている。
これまでの使用経験を踏まえ,本多診療部長は夜間や休日に検査・診断のクオリティを維持できていない施設は,syngo.viaの導入を検討する価値があるとアドバイスする。医師や診療放射線技師のマンパワーが限られた施設では,画像解析処理を自動化するsyngo.viaは高いパフォーマンスを発揮できるという。
一方で本多診療部長は,現状の課題として,追加撮影などでシリーズ名を個々に変更するような場合にレイアウトのひも付けが適応されないケースがあるが,今後はプルダウンメニューでシリーズ名を選択できるような仕様を提案していきたいとしている。さらに,前述した在宅での遠隔画像診断にsyngo.viaを用いたり,院内に無線LANを整備して,syngo.viaの新バージョンで採用された“syngo.via Web Option”を搭載したiPadなどのモバイルデバイスを利用することも検討していく予定だ。
地域医療の要の役割を果たす済生会宇都宮病院では,これからもsyngo.viaを活用して,常にクオリティの高い医療を提供していく。
*1 自動解析処理は事前に定めた使用者の設定に従う。
*2 iPadなどのモバイルデバイスは各医療機関の責任のもとでの使用が前提。
(2011年5月23日取材)
社会福祉法人恩賜財団済生会 栃木県済生会宇都宮病院
住所:〒321-0974 栃木県宇都宮市竹林町911-1
TEL:028-626-5500
病床数:644床
診療科目:内科,神経内科,消化器科, 循環器科,リウマチ科,小児科,外科,整形外科,形成外科, 脳神経外科,心臓血管外科, 耳鼻咽喉科,産婦人科,眼科,皮膚科,泌尿器科,精神科, 放射線科,麻酔科, リハビリテーション科
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