モニタの常識・非常識

Q7 画像の画素とモニタの画素で1対1表示が可能なら理想的なのですか?

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 夏バテから復活できない,松田が今号も担当します。

 われわれがデジタル画像を観察するために使用する液晶モニタは,画像と同様,表示画素の集まりですから,理想的には画像の画素分だけモニタ側に表示画素があれば,間引きや補間の処理がいらない最もシンプルな「画素の1対1表示」が可能となります。今回は,この「画素の1対1表示の実現」を考える上で必要な,画素ピッチとモニタサイズの関係について考えてみます。

 放射線画像……特に一般撮影系の画像においては,「モニタ診断においてもフィルムと同様に実サイズで表示させたい」というニーズや,「実サイズに近い表示サイズの方が観察しやすい」という想いが強いことから,「画素の1対1表示の実現」には,モニタ側の解像度もさることながら,表示画素の実間隔(画素ピッチ)が,単純なデータを表示する場合より少しだけ重い意味を持ちます。

  理想的な画素の1対1表示としては,「画像の画素数以上の表示画素を持つモニタ」で,「画像データの画素サイズとモニタの画素ピッチが同一である」という条件がともに叶うことで,1対1かつ実サイズという「空間的に良好な条件での表示」が実現可能となります。

 しかし残念ながら,液晶パネルの画素ピッチは専用開発というわけでもないため,必ずしも都合の良い画素ピッチとは言えません。それでも,画像の画素サイズとモニタの画素ピッチが近ければ,1対1表示を行った時にかなり実サイズに近づくと言えるでしょう。

 筆者の施設における腹部半切サイズ画像のマトリックス数は,2446×2010ですので,この画像をモニタの画素と1対1表示させるには,単純に2446×2010以上の画素を持ったモニタを用意すれば良いかというと,そう簡単ではない事情があります。それは,モニタにおける画素ピッチと,そのモニタの大きさとの兼ね合いがあるからです。例として,画素ピッチが0.2805mmであるパネルの場?合,2446×2010個の画素を並べると,モニタ全体の大きさが約70cm×58cmにもなってしまいます。一般的なモニタの大きさは45cm×35cmくらいですから,だいぶ大きなモニタになってしまいますね(実際,こんなモニタは設計しないでしょう)。逆に,45cm×35cmサイズのモニタに,0.2805mmの画素ピッチで画素を敷き詰めても,1600×1200程度のマトリックスしか並ばない計算になります。つまり,大きさ45cm×35cm程度のモニタに,腹部CR画像の2446×2010画素をすべて並べたい場合は? と言いますと,0.165mm程度の画素ピッチを持つパネルを用意する必要があります。これなら,前述の条件で1対1表示を行って,比較的実寸に近い(若干縮小)サイズの半切画像表示が可能ということになります。

  ちなみに,この画素ピッチ0.165mmというのは,いわゆる5Mモニタなどで使用されているパネルの画素ピッチです。まあ実際のところ,5Mモニタはまだまだ高嶺の花なので,半切サイズ画像の1対1表示が一般的になるにはもうしばらく時間がかかりそうです。

 なお,「診断能」という観点からは,必ずしも1対1表示にこだわる必要などないと思われますし,結果的に間引きや補間は避けて通れない実情もあり,表示処理の手法が端末側の仕様に依存することと併せ,今回のお話しはあくまでも机上の「1対1表示理想論」ということになります。

松田恵雄 埼玉医科大学総合医療センター中央放射線部

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(月刊インナービジョンより転載)