みなさま,今回から再び担当させていただく松田です。よろしくお願いします。
さて,2008(平成20)年4月の診療報酬改定で,電子画像管理加算が導入され,画像を電子化して管理・保存すると,加算算定が認められるようになりました。
一方,電子画像管理加算を算定すると,フィルム費用の算定ができなくなることから,いままで電子保存はしていたけど,フィルムレスには二の足を踏んでいた医療機関がいっせいにフィルムレス運用を検討し始めました。
つまり,画像観察の手段が,従来のフィルム媒体中心からモニタ(以前にも述べましたが,液晶モニタのことです)というデバイスへ,明確に軸足を移し始めた瞬間と考えてよいのではないでしょうか。
ところで突然ですが,今後モニタを導入されるとすれば,カラーでしょうかモノクロでしょうか。私の周囲においては,昨今の状況から汎用性の高いカラーモニタを中心に導入する医療機関が多いように思いますが,みなさんの施設ではいかがでしょう? 今回は,このカラーモニタにおける画像表示の一貫性について少し考えてみましょう。
以前ご紹介させていただいた,お馴染みのQAガイドラインですが,これは「カラーもしくはモノクロのモニタに,【モノクロ画像】を表示する場合の品質管理ガイドライン」です。
その階調表現において肝となる技術が,GSDF(Grayscale Standard Display Function)を用いたキャリブレーションであり,DICOM規格パート14という標準化への対応です。文字どおり,「Grayscale=【モノクロ画像】(言葉の意味的には不可解な式です)」ならば,画像表示の一貫性が確保される枠組が確立されていることになりますね。
では,カラー画像のキャリブレーションに関してはどうなっているかと言うと……,いま現在何もないというのが実情です。
つまり,A社製のカラーモニタで表現される画素値○○の赤とB社製のカラーモニタで表現される画素値○○の赤は,たとえカラーパレット(LUT)が同じでも,その表示された色味が同じである保証は何もありません。標準として「こうするべき」という,申し合わせそのものがないのです。
現状,電子保存される医用画像には,三次元処理結果や核医学関連の画像など,カラーを必須として取り扱うものが少なくありません。当然,フィルムレス環境のユーザーとしては,それら多彩なカラー画像も取り扱える「カラーモニタ」を導入した方が利便性の向上が見込めます。
ただし,覚えておきたいのは,カラーモニタに表示された画像の色味については,統一された状況になく,疑似カラーやキャプチャされたカラー画像に至っては,カラー情報を破棄しても「オリジナルの画素由来階調が戻る保証すらない」ことから,観察や運用には十分注意する必要があるのです。
表題の「カラーモニタにはGSDFキャリブレーションが適用できないのですか?」については,「モノクロ画像を表示する場合には,モニタの性能により適用が可能ですが,カラー画像のキャリブレーションを目的とした場合にはまったく応用できません」という,何とも心許ない答えになってしまうのが現状なのです。
松田恵雄 埼玉医科大学総合医療センター中央放射線部 |