画像表示モニタを用いた診断手法が一般的になってからはや数年が経ち,そろそろモニタの交換時期を迎える医療機関も多いのではないでしょうか。今回はモニタの交換について考えてみます。といっても,「適切なモニタの選び方」ではなく,予備知識として知っておきたい薬事法とモニタ選択の枠組についてのお話しです。
ご存じのように薬事法では,「人若しくは動物の疾病の診断,治療若しくは予防に使用されること,又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であって,政令で定めるもの」を「医療機器」と定義し,法の規制下で製造・販売するよう求めています。では,画像診断に用いられる画像表示装置の「モニタ」は,その中でどのように位置づけられるのでしょうか。
まず押さえておきたい第一のポイントは,単純な画像表示装置のモニタに関して,医師が自己責任で使用する場合においてなら,どのようなモニタを用いても,薬事法における「医療機器」の制約を受けないという状況です。ですから,薬事非承認を理由に,モニタを自由に選択できないということはありません。
ただし,だからといって,どのようなモニタを導入してもかまわないと解釈するのは早計です。当然,診断用画像の表示に用いるものですから,十分な表示能力が要求されますし,信頼性も必要です。
平成18年4月に日本医学放射線学会電子情報委員会は,デジタル画像の取り扱いに関するガイドライン2.0版をとりまとめています。この中には,入力画像の画質に配慮すれば,液晶モニタを用いてもフィルムやCRTと同等の診断が可能であるとの見解が示されていますが,この根拠となる確認作業は,QAガイドラインにおける"管理グレード1"を満たす液晶モニタのみを対象に行われています(さらに,乳房の場合は5Mのみで確認)。
実際,使用するモニタによっては,その性能と対象画像の組み合わせにより,病変等の表現が適切に行えない可能性もありますから,自由なモニタ選択を行う場合は,そのモニタにおいて表現可能な画質への十分な配慮が必要であり,せめて,QAガイドラインにおける “管理グレード1” 相当のモニタを使用して,画像診断を行うことが重要な条件であると言えます。
しかしながら第二のポイントとして,特定の画像処理装置など,メーカー側で薬事承認を受けている製品の場合は,モニタの型式も承認条件に含まれているケースが多いことから,勝手にモニタを変換すると,薬事承認装置とは見なされなくなってしまう可能性があります。当然,メーカー側では,本体やモニタを組み合わせた環境で,品質保証のための試験を行ったはずですから,使用者側で勝手に変更された組み合わせで薬事申請どおりの性能を「保証すること」はできないということになります。よって,メーカーが薬事承認を取得した画像処理装置において,薬事承認どおりの性能を維持した上でメーカー保証を受ける場合には,モニタの変更が難しくなるという,質問のような状況が起こるのです。
なお,聞いた話になりますが,過去にはモニタメーカーの中にもモニタ単体として,X線用モニタとしての薬事承認を申請していた時代があったそうです。しかし,現在の改正薬事法になって「X線用モニタ」の分類がなくなり,モニタ単体で薬事申請する必要がなくなったことと,「汎用画像診断装置ワークステーション」など,管理医療機器(クラスU)として,特定のシステム全体について薬事承認対象とするようなカテゴリが新設されたことで,事実上モニタ単体での薬事取得をしなくなったそうです。
次回から,岡崎市民病院の奥田保男先生にバトンタッチします。医師の “武ちゃん” ,モニタ管理者の “奧ちゃん” はじめ楽しい登場人物が……。どうぞ,お楽しみに。
松田恵雄 埼玉医科大学総合医療センター中央放射線部
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