モニタの常識・非常識

Q1 モニタQAガイドラインはJESRAのひとつです。…この,「JESRA」っていったい何ですか?

line

A1

 2005年8月に,「医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドライン」(通称QAガイドライン)が策定され,医用画像を表示するモニタの品質管理手法が提案されました(ガイドラインの内容詳細については,これまでに多くの専門家が解説記事を書いているので私の出る幕はありません)。このガイドラインにまつわる質問として比較的多く寄せられるのが,ガイドラインの採用にどの程度の強制力があるのか,準拠しない場合どのようなペナルティが課せられるのかという内容です。

 これらの質問を踏まえて,今回は,QAガイドラインを定めているJESRA(ジェスラ)という規格の枠組みについて考えてみましょう。

 QAガイドラインは,「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(平成19年3月に第2版が発表)とともに,医用画像の電子化に関連したガイドラインとして保守管理上の双璧をなすものと考えられますが,後者は厚生労働省が施策の詳細や実例について,わかりやすく指針を出したものと考えられ,医療機関が電子保存を行う上で必須とも言える対応が求められています。一方,前者のQAガイドラインは,X-0093-2005という(社)日本画像医療システム工業会規格で,JESRA(Japanese Engineering Standards of Radiological Apparatus:ジェスラ)と呼ばれるもののひとつです。

 工業会規格であるJESRAは業界団体が主体となって制定した規格で,一部にこそ「国家規格(JIS)や国際規格(IEC)のないシステム(装置)に関し薬事法上の基本要件適合性チェックリストに引用される規格」として認められているものもありますが,多くは「工業会が主として団体企業向けに標準化の一環として提案する形をとっている規格」であるため,行政的な強制力などは伴いません(その中でもQAガイドラインは,本来の規格ではなくガイドラインとして制定された数少ない例です)。

 ではなぜ,臨床現場のモニタ管理において,工業会規格=JESRAのひとつであるQAガイドラインに注目が集まるのでしょうか。それは,国内における医用モニタ管理の規格制定が遅れている(JIS等の国家規格が事実上存在しない)中で,当該ガイドライン以外にまったく拠り所がないことや,各メーカーの出荷基準が当該ガイドラインに準拠しつつある現状を踏まえると,臨床現場においてもこのガイドラインに基づいた保守管理体制を確立することが最良無二の選択であるとの結論に至るからです(なお,JESRAとして制定された規格がJIS化された例もあり,QAガイドラインが今後,JIS規格にならないとも限りません)。

 そもそもJESRAは,団体企業向けの工業会規格とは言っても,日本医学放射線学会や日本放射線技術学会との十分な協調が図られており,ユーザー側の意見を加味・検討した上で,安全な導入や運用に関して定められた規格であると言えます(筆者もQAガイドラインの制定時にアドバイザーの立場から,「臨床現場で容易に・日常的に採用可能なガイドライン」となるよう,さりとて安全管理の質を落とさぬ規格となるよう,諸先生方と共に多くの討議を重ねた記憶があります)。

 皆さまの施設でも,医用画像表示用モニタの導入時や,その後の定期的な品質管理を「何らかの」手法で行うのなら,「医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドライン」を積極的に採用して間違いないと考えられます。

松田恵雄 埼玉医科大学総合医療センター中央放射線部

▲ページトップへ

(月刊インナービジョンより転載)