inNavi IT最前線リポート
泉谷ふれ愛クリニック 泉谷ふれ愛クリニック
愛知県名古屋市緑区鳴海町水広下93-34
TEL 052-879-2022
診療科目:泌尿器科,心療内科,内科

診察内容に見合ったシステム構築で 患者さんと向き合う診療をスタート
 − 診療に専念できるようにシステム選定ではサポート体制を最も重視

名古屋市緑区の泉谷ふれ愛クリニックは,2007年5月の開院と同時に医事会計・電子カルテ一体型システムTOSMEC TRINITYを導入した。 1月の採用決定から4か月弱の限られた時間の中,電子カルテの使用経験者がいない状況で準備が進められた。 しかし,充実したサポート体制のおかげでスムーズに稼働し,安定した運用を実現している。

(インナービジョン2007年2月号 別冊付録 ITvision No.13より転載)

●“ふれ愛”を重視した医療で病を癒す

 泉谷ふれ愛クリニックは,2007年5月,新興住宅地として開発が進む名古屋市緑区の鳴海町に開院した。基本理念に「ふれ愛の医療を通じて病を癒すクリニックとなる」,「患者さんのためになる医療を心掛け,信頼されるクリニックとなる」,「病気の予防にも努めて,社会に貢献できるクリニックとなる」を掲げている。クリニックの名前と基本理念の中に使われている“ふれ愛”とは,患者さんと向き合うことを大切にする同クリニックの姿勢を表しているとともに,医療に携わる多くの人と協力しながら地域に根差した医療に取り組んでいきたいとの泉谷正伸院長の思いが込められている。泌尿器科,心療内科,内科を有する同クリニックは,患者さんの待ち時間短縮を目的に,予約制を取り入れている。また,開院した場所は,泉谷院長の出身大学である藤田保健衛生大学と前任病院の名古屋記念病院に近く,安心して患者さんを紹介できる環境も整っている。

 泉谷院長は,2001年ごろから「自分のペースで患者さんと接する診療がしたい」という思いを抱き,開業を考え始めた。さらに,開院する際には電子カルテを導入したいと思ったという。その理由を次のように話す。「スペースが限られるクリニックでは,紙カルテの保管場所を確保することが難しい。また,電子カルテを導入することで業務のスピードアップを図る目的があった」

 そして,開院と同時に東芝メディカルシステムズの医事会計・電子カルテ一体型システムTOSMEC TRINITYが稼働した。

 

泉谷正伸院長
泉谷正伸院長。
一度電子カルテを使用すると紙カルテの運用には戻りたくなくなると話す。開院前に同クリニックに合ったシステムをつくり上げたことで快適な運用環境が実現できたという。

●サポート体制に重点を置きシステムを選定

 それまで勤務してきた病院では電子カルテの使用経験がなかったという泉谷院長は,システムを選定するために,まず電子カルテについての情報収集を始めた。2005年ごろからは実際にセミナーなどに参加。電子カルテを中心とした医療IT関連製品の常設展示場であるMEDiPlazaにも,東京と大阪の会場に足を運び,慎重に検討を重ねていった。当初は,別会社のシステムが候補に挙がっていた。その採用が決まりかけていたときに,東芝メディカルシステムズのTOSMEC TRINITYを知ったという。  電子カルテの選定基準のポイントとして,実績,価格,基本性能,サポートを挙げる泉谷院長は,「同システムはこれらの要件を満たしていた」と話す。また,「システムに何かあったときにすぐ対応してもらえなければ当然診療にも支障が出るので,サポート体制の充実が一番重要だと考えた」と説明する。

 特にTOSMEC TRINITYの販売代理店であるピーアンドエムは,同クリニックから車で1分ほどの場所にあり,速やかに対応してもらえるほか,周辺のシステムや医療機器についてもトータルにサポートしてもらえる。また,泉谷院長は,同社が診療報酬請求業務のサポートも行うこともシステム選定の大きな要因になったと話す。  「勤務医に比べて開業医は,請求業務で担う責任が大きい。診療報酬の内容をしっかり理解していなければ請求漏れが起きる可能性もある。その業務をサポートしてもらうことで,本来の診療業務に専念できるのでとても心強いと思った」

 こうしたことから最終的に2007年1月,東芝メディカルシステムズのTOSMEC TRINITYの採用が決まった。開院の2か月前まで前任病院に勤務していた泉谷院長にとって,導入準備に費やせる時間は限られていた。さらに,TOSMEC TRINITYが2006年11月に発売された新しいシステムであったため,前例のない中で,同クリニックの診療内容に応じたつくり込みをしていかなくてはならなかった。そのため,ピーアンドエムの担当者が,泉谷院長の予定を基に導入スケジュールを作成し,それに沿って導入準備を進めていった。

 1月の後半からマスターの作成を行い,3月の後半から泉谷院長が操作訓練を開始。さらに開院3週間前からはスタッフの操作訓練を開始した。現在,同クリニックには3名のスタッフがいるが,泉谷院長と同様電子カルテの使用経験はなかった。それでも事前の訓練で操作できるようになったという。泉谷院長は,「開院当初,操作がわからないというケースが出てきたが,そのときもピーアンドエムがすぐに対応してくれたことで,スムーズに稼働させることができた」と述べている。すぐに対応してもらえるサポート体制があることは,電子カルテ選定の上で,重要な条件だと言えるだろう。

  【画像をクリックすると拡大】
TOSMEC TRINITY操作画面
TOSMEC TRINITY操作画面。
紙カルテをイメージしたカルテエリアと,操作エリアに分かれている。また,画面右にはショートカットボタン,画面右下にはボディマークを配置し,診療の妨げとならない操作ができる画面構成となっている。

●使いやすさを追求したデザインと機能を持つ電子カルテ

 泉谷ふれ愛クリニックが導入したTOSMEC TRINITYは,医事会計,電子カルテのハードウエア,ソフトウエア,データベースを一体化したシステム。さらに,オプションでDICOMビューワを内蔵することも可能なオールインワンシステムである。これにより,省スペースかつ低コストで院内のIT化を進めることができる。症状・所見,シェーマ,オーダなどの入力項目をショートカットボタンにセット登録しておける機能や,全身のイラストから各部位を選択することでシェーマを直感的に選択できるボディマーク機能を搭載。画面は紙カルテをイメージしたカルテエリアと操作エリアを分けたレイアウトで,初めて電子カルテを導入するユーザーにも親しみやすく,スムーズな入力ができるようになっている。また,同クリニックでは,外注検査の結果をフロッピーで受け取り,電子カルテにデータを取り込んでいるが,TOSMEC TRINITYを使用することで,検査結果を数値とグラフで分割表示ができ,検査結果と薬歴の対比表示も可能なため,視覚的にわかりやすく患者さんに説明することもできる。

 同クリニックには,現在,3台のTOSMEC TRINITYが導入されている。受付にサーバが1台,クライアント端末は診察室に1台,もう1台は可動式のキャスターに設置してあり,普段は受付に置かれている。可動式の電子カルテは,心理カウンセリングが行われる時には,受付の隣にあるカウンセリング室へ移動させて使用する。また,泉谷院長は,将来,二診体制で行うことを視野に入れているため,その時にも対応できるようにとの考えもある。 同クリニックには電子カルテのほか,東芝の超音波診断装置NemioとX線撮影装置RADREXが導入されている。さらに,処置室に内視鏡装置,腹圧性尿失禁を治療する尿失禁治療器が設置されている。X線撮影装置にはCR装置とコンソールが設置され,X線画像はフィルムレス運用がされている。これは,診察室に東芝メディカルシステムズの電子カルテと連携しているナレッジシステムの画像管理システムKiNS-Fが設置されており,検査終了後すぐに,ビューワの高精細モニタでX線画像を確認することができる。

 このほか,超音波診断装置の画像は出力したものをスキャナで取り込み,参照用として電子カルテに保存している。現在,超音波診断装置と内視鏡装置は,KiNS-Fと接続していないが,泉谷院長は,「将来的にはどちらの装置の画像も,ビューワで患者さんに見せられるようにしたい」と話す。予算や診療体制などにより,一度に院内すべてのフィルムレス化に取り組むことが難しい場合でも,同クリニックのように段階的にシステムを構築して行くことで,クリニックの状況に合わせたIT化を無理せず行うことが可能である。


TOSMEC TRINITY TOSMEC TRINITYと診察券発行機 クライアント端末
受付(写真左)には,TOSMEC TRINITYが2台設置されている。来院した患者さんの情報を事務スタッフが入力する端末。左にあるのは診察券発行機(写真中央)。可動式のキャスターに設置されたクライアント端末の奥には超音波画像を読み取るためのFAX兼スキャナが設置されている(写真右)
 
処置室    
処置室。内視鏡装置と尿失禁治療器が導入されている。内視鏡と電子カルテ,画像管理システムとの連携はこれからの課題だと泉谷院長は話している。    
  超音波装置Nemio
診察室にある東芝メディカルシステムズの超音波装置Nemio。
検査画像はスキャナで読み取り電子カルテに参照画像として保存される。


RADREX
東芝メディカルシステムズの X線撮影装置

CR装置
X線画像はCRプレートを介して,CR装置でデジタル化される

●紙の指示せんを用いて安全にも配慮

 泉谷ふれ愛クリニックの診療の流れは,次のようになっている。初診の患者さんが来院すると,まず受付で患者登録され,問診票が渡される。登録が済んだ患者さんの情報は電子カルテの待ち患者リストに表示され,診察室で泉谷院長が待合室の状況を把握しておくことができる。患者さんが記入した問診票の結果は,事務スタッフが電子カルテに入力する。そして,待ち患者リストの順番に患者さんを案内し,診察へと移る。診察時の検査や処置などのオーダはすべて指示せんとして紙に出力し,看護師に渡される。これは,紙でチェックをしながら検査や処置を行うことで,取り違えなどの間違いを防ぐという意味がある。実施後は電子カルテにその情報が記録され,受付で会計が行われる。

 TOSMEC TRINITYは,複雑な医事会計を正確かつスピーディに処理する機能が搭載されているため,診療終了後に患者さんが会計を待つ時間も短い。

   

●インフォームド・コンセントに効果を発揮

 開院して3か月が経ち,電子カルテを利用した診療は患者さんの評判も良い。「人が書いた文字とは違い,読みにくいといったことがないので,患者さんが内容を理解しやすい」と泉谷院長は話す。また,X線画像に関しては,検査後すぐにモニタで患者さんに見せながら説明できるので,インフォームド・コンセントにも効果的な役割を果たしている。

  TOSMEC TRINITYの使い勝手について泉谷院長は,「ペンタブレットでの入力が非常に簡単だ」と話す。また,「ショートカット機能をあらかじめ診療内容に合わせて設定してもらったので,非常に使いやすく,助かっている」と述べている。ボディマーク機能についても,必要なシェーマを簡単に選ぶことができると評価している。

 まだ使用して間もないということもあり,入力に時間がかかることもあるため,泉谷院長は診療中にはできるだけ患者さんの方を向いて話を聞き,診療後にカルテに入力することもあるという。しかし,「操作に慣れてしまえば確実にスピードアップが図れ,スムーズに診療が進んでいくと感じている」と泉谷院長は話す。

  診察室
診察室。右のモニタがTOSMEC TRINITY。ペンタブレット入力やショートカット機能など操作性に優れており,患者さんと向き合った診療が行える。左のモニタがKiNS-Fのビューワで,X線画像を診断・参照する。

●IT化により患者さんと向き合う時間を増やす

 医療のIT化と同クリニックのめざす“ふれ愛”の医療について,泉谷院長は,「院内のIT化を進めることで,業務の効率化を図り,短縮できた時間を患者さんのために使っていきたい。IT化とふれ愛の医療は相反するものではなく,スタッフ全員が患者さんのために診療に当たる意識を大切にしていけば両立する」と話す。そうした“ふれ愛”を通じ得られた信頼関係をさらに強くしていくためにも,泉谷院長は将来展望として,大学病院などへの紹介検査をネットワーク上で行えるようにしたいと考えている。電子カルテを活用した地域医療連携により,泉谷ふれ愛クリニックの存在がますます高まっていくことが期待される。   カウンセリング室
白を基調とした明るいカウンセリング室。予約を受けて,心理カウンセラーがカウンセリングを行う。可動式のクライアント端末を受付から移動して使用している。

●泉谷ふれ愛クリニックのシステム構成図

システム構成図

〈問い合わせ先〉
東芝メディカルシステムズ株式会社
TOSMEC事業部
TEL 03-5783-2422
http://www.toshiba-medical.co.jp

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