5月21日,衆議院では平成21年度補正予算が成立し,「100年に1度」と言われる不況のなか,その対応策が次々と明らかとなった。その後,2200億円の社会保障費削減が事実上棚上げとなるなど,医療・福祉に関わる見通しも示されている。今回の補正予算は,3年間で約1兆円に上る「地域医療再生基金」を含む,6766億円が医療関連予算として決定したが,内容を見ると,厚生労働省の医療政策の意図をつかむことができるだろう。
補正予算の項目は5点に大別されている。1点目が「地域医療の再生に向けた総合的な対策」である。平成21年度は3100億円が予算化された。これは都道府県の地域医療計画に基づく事業に対して,地域医療再生基金を設置しての財政支援とされている。基金の対象となる事業は「図表」を参照していただきたい。ポイントとなるのは“医師・看護師不足の対応”と“医療機能の分化と連携”に絞った予算である,ということだ。「総合的な対策」と呼ぶには,あまりにも内容が薄い(=限定されている)政策であることは明らかである。各都道府県が基金による事業の募集を行った際,果たして手を挙げることのできる医療機関は,いったい幾つあるだろうか。そう考えると「地域医療の再生」どころか,さらに格差を拡大することにもなりかねない。事業内容を慎重に検討することが必要であると思われる。
項目の2点目は「医療機関の機能,設備強化」である。この項目には2096億円が投じられている。災害拠点病院の耐震化,および国立高度専門医療センターの先端医療機器の整備が対象となった。この項目は,第1点目よりも対象となる医療機関が限定される結果となっている。正規の予算編成の時には,必要と考えられなかったのだろうか。なぜこれが補正予算なのか見当もつかないというのが,偽らざる心境である。
第3点目が「革新的な医薬品や医療機器の開発支援,審査体制の強化」となっている。この金額は917億円。実は約239億円が,平成21年度の本予算で計上されている。その4倍近い金額を補正予算に組み込んだのである。特に「がん,小児等の未承認薬等の開発支援,地検基盤の整備,審査迅速化」には,予算の大部分である797億円が投入されることとされている。4点目が「新型インフルエンザワクチンの開発・生産体制の強化(1279億円)」,5点目が「レセプトオンライン化への対応(291億円)」である。
図表 地域医療の再生に向けた総合的な対策 |
|
● |
地域内において医療機関の機能強化、機能・役割分担を進めるための連携強化 |
● |
医師事務作業補助者の集中配置など勤務医・看護師などの勤務環境改善 |
● |
短時間正規雇用制度といった多様な勤務形態の導入による勤務医・看護師などの確保 |
● |
大学病院などと連携した医師派遣機能の強化 |
● |
医療機能の連携や遠隔医療の推進のための施設・設備の整備 |
● |
新生児集中治療室(NICU)・救命救急センターの拡充、NICUや回復期治療室(GCU)の 後方病床としての重症心身障害児施設等の整備 |
|
|