レセプトオンライン化の進んでいないことが明白になった現在,いくつかの点で見直しを図らなければならない。その一つは「電子化加算」である。06年診療報酬改定で新設された本加算は“レセプトオンライン化のための準備を進めるための措置”として誕生したものである。当時,個々の医療機関がオンライン化するための原資として考えられたものであり,完全オンライン化が実現する予定の2011年3月末までの点数として定められている。現時点では,原則すべての医療機関がオンライン化することを前提に,すでにオンライン化が実現した400床以上の病院を除く医療機関が本加算の対象となっていた。届出している医療機関数は「図表2」のとおりである。
本年1月に全国保険医団体連合会は,このレセプトオンライン化撤回を求める訴訟を起こしている。訴状を読む限りでは,(1)保険診療の制限,(2)診療情報の漏えい,(3)診療情報が診療以外の目的で使用される,(4)対応できない医師の退職 − などを問題点としており,一考を要する内容であることは間違いない。とは言え,「オンライン化に反対する=オンライン化するつもりはない」ということであれば,電子化加算の(届出)辞退は当り前のことであろう。第三者からは“制度は気に食わないが,もらえるものはもらっておこう”という立場にしか見えないのである。裁判そのものを否定するつもりはない。さらに述べると「オンライン化を選択するか否かは,医療機関が判断・決定すべきもの」と思う。
厚生労働省はオンライン化のメリットとデメリットを明らかにすべきであり,先進的な取り組みを行っている韓国の現状について,事実を周知することが必要だろう。全国保険医団体連合会が危惧するように,韓国ではオンライン化によって医療費の削減が行われた。その一方で請求から診療報酬の入金までは20日間前後であり,医療機関のキャッシュフローは大幅に改善している。我が国の診療報酬支払までの期間がどうなるかは不明であるが,少なくとも現行の支払サイトは短縮できるものと考えられる。
重要なことは“制度による強制”ではなく,“メリットがあるから選択する”という形でオンライン化を推進することではないだろうか。そして電子化加算は「オンライン化の予定がある施設のみ届出可能」に変更してはいかがだろうか。本加算の届出要件とされている「患者の求めに応じた,詳細な請求明細の発行」は,すでに療養担当規則に盛り込まれており,電子化の有無によらず,全医療機関の義務となっている。いずれにしても「真面目に対応している施設がバカを見る」ような結果には,なって欲しくないものである。
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