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第13回 期待される「Post acute」 機能

●医療機能の分化はすすんでいるか

 昨年4月から各都道府県で地域医療計画が具体化され,スタートしている。全般的には大きな動きにはなっていないように見受けられるが,厚生労働省の医療機関に対する機能分化・役割分担のアプローチは積極的だ。特に急性期病院においては,DPCの機能評価係数論議を通じた「機能の再定義」は新しい局面を迎えていると言えよう。4月10日のDPC評価分科会では,急性期医療機関を評価するための観点として「DPC対象病院における評価」とともに「急性期入院医療全体における評価」を打ち出している。これらの評価の考え方が,次期診療報酬改定の“骨子”となっていくであろうことは,疑う余地のないことである。

 急性期に続いて,厚生労働省は回復期・亜急性期についても病床拡大に結び付くような“評価の見直し”を進めていくだろう。昨年11月に発表された社会保障国民会議の「最終報告」に基づいた政策の実施であり,地域医療計画のポイントとされている“継ぎ目のない(シームレス)連携”を具現化するためのものである(「図表1」)。こうした「急性期の受け皿」としての思惑もあり,平成20年診療報酬改定では回復期リハビリ病棟の医師「専従」要件を廃し,要件緩和を行った。また亜急性期病床については,200床未満の医療機関に対して病床の30%まで亜急性期として届出可能な「管理料2」を新設している。厚生労働省にしてみれば“急性期の平均在院日数を短縮するには「受け皿としてのPost acute」が不可欠”という認識なのである。一般病床を持つ病院の大多数が“自院は急性期”とばかりに同方向の医療提供を目指す ― あたかも「金太郎飴」のような我が国の医療体制から,機能分化と連携をメインにした医療に変革しなければ,医療経済も医療資源も無駄になることは明らかなのである。

図表1 医療介護提供体制の将来像(イメージ図)
図表1 医療介護提供体制の将来像(イメージ図)

 

●回復期・亜急性期の状況

 それでは実際に「回復期リハビリ病棟」と「亜急性期病床」は,どのように変化しているだろうか。平成18年〜20年の推移を確認してみたい(「図表2・3」参照)。結論から述べると,大きな変化は見えてこないというのが現状である。特筆すべきは,診療報酬改定で病床拡大を明確に打ち出したにもかかわらず,目的とする「回復期リハビリテーション病棟入院料1」と「亜急性期入院医療管理料2」の届出が,未だ少数となっている点である。特に「回復期リハ入院料1」は,“リハビリの質や実績(成果)”による区分であっただけに,第三者の目から見ても,正直がっかりするものである。「高い診療報酬が算定できるかどうか」という経営的視点も大切であるが,リハビリの質が低い(成果が実証されていない)ことの方が,問題としては根深いのである。

 亜急性期病床についても,“看護師の確保が困難な中小病院は,急性期と連携して亜急性期としての役割を果たして欲しい”という「思い」が届いていないことが分かる。看護配置の13対1・15対1については一般病床であっても,すでに厚生労働省は「急性期」の範疇には入れていない。それはDPCの基準でも証明されていることだ。こうした一般病床を持つ医療機関は,自院の機能を客観的に検証しなければ,次回の診療報酬改定では大きな痛手を受けることになるだろう。

 社会保障国民会議の最終報告では,「2025年を目途に,回復期・亜急性期は44万床に拡大する」という方向性を打ち出している。急性期病床の受け皿として,正直,まだまだ不足しているのである。おそらく厚生労働省は,平成22年度あるいは24年度の改定で,さらに回復期・亜急性期を拡大するための方策をとってくるであろう。当然そこには経営的メリットをともなうことになる。“点数欲しさ”に病床機能を転換するのではなく,中長期的視点でもう一度経営戦略を構築していくことが大切なのである。

図表2 回復期病棟の届出状況 図表3 亜急性期病床の届出状況
図表2 回復期病棟の届出状況
図表3 亜急性期病床の届出状況