どうすれば未収金の発生を防止し,あるいは回収を進めることができるだろうか。未収金発生を防ぐためには,「発生要因の分析」を行うことがポイントである。医療機関側に要因があるのか,それとも患者側の理由なのか。あるいは保険制度上の問題なのかを明らかにしなければ,最善の防止策を検討することは難しい。例えば「待ち時間が長いので支払いをせずに帰宅してしまった」というような場合,待ち時間の短縮に努めることは当然であるが,“会計を待つ環境”を整備することも一案である。つまり,“多面的な方策が取れるかどうか”で未収金の発生を防ぐことが可能なのである。
一方で回収のポイントであるが,「発生要因に合わせた回収方法の検討」が挙げられる。前述の「図」でも紹介したが,未収金の発生要因は多岐にわたっている。ところが回収方法は電話や郵便での督促,または訪問がほとんどであり,画一的と言っていいだろう。例えば入院費など,高額な未収金が発生した場合に「分納」という支払形態を採るケースがしばしば見られる。こうした際に“何回に分割するのか”などを相談するわけだが,その時に「金額が大きいから払えなかった」という発生要因に合わせ,無理のない分納金額を提示(提案)する必要がある。
医療機関の目的は“未収金を回収すること”であり,“支払い方法を決定すること”ではない。多くの医療機関から話を聞くと,支払い方法に合意できれば満足している例が少なくない。現実的でない回収方法を提案しても,行動に移されるとは限らないのだ。対応に困った患者は,一時しのぎのために提案を了承することもあり得る。それを回避するためには,患者と医療機関との間で,いわゆる“すり合わせ”をしていくことが,未収金回収の円満な解決につながるのである。
要因を分析し,相手の状況を理解する。その上で,必要に応じた対策や提案を構築できてこそ,経営管理につながる「プロの仕事」と言えるのである。 |