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第8回 社会保障国民会議が示す「病床改革」

●社会保障国民会議最終報告の内容

 去る11月4日,社会保障国民会議は最終報告を提出し,10か月にわたる協議は終わりを迎えた。10月23日のサービス保障(医療・介護・福祉)分科会では,将来の医療・介護サービス提供体制を検討するためのシミュレーションが公表されたが,その結果を踏まえた最終報告は,まさに“度肝を抜く”と表現していい内容であった。

 まず,最終報告における2025年の医療・介護提供体制のポイントを列挙すると

(1) 急性期医療の充実強化・効率化:
  ・病床数を67万床へ
・現行水準(平均)から職員数を倍増
・平均在院日数を現行の20.3日から10日へ
(2) 回復期病床,および亜急性期病床:
  ・病床数を44万床へ
(3) 在宅医療・在宅介護の充実
  ・訪問診療や居住系サービス,在宅介護の利用者が1日あたり43万人の増加
(4) マンパワーの充実確保
  ・全体で現状の1.7〜1.8倍
(5) 患者数の変化
  ・予防の強化により,外来患者数が1日あたり32万人減少

 ― などが述べられている。これらの改革により,2025年に追加的に必要となる財源はGDP比1.5〜1.7%にあたると推計されている。この最終報告を一言でまとめると「社会保障として必要な金は出さざるを得ない」というのが結論なのだ。消費税などの財源に関する議論は,当然,必要となるだろう。しかし重要な点は,この内容がそのまま国の社会保障政策となるかどうかは別として,従来の考え方と大きく異なる方向に歩を踏み出したということである。

●最終報告と医療機関経営の変化

 最終報告の内容は,ある意味,現在の医療の方向性に沿ったものと考えることができるだろう。病床機能の明確化と分化,平均在院日数の短縮,在宅重視などが考慮されたプランに,厚生労働省の政策をうかがい知ることができる。とは言え,病床数や平均在院日数についての考え方は,これまでの厚生労働省の推計や議論をはるかに超えた数値を持ち出した。この点は,医療機関の経営戦略の変更を余儀なくさせるであろう。

 具体的に考えてみたい。2025年までに診療報酬改定は,8回行われることになる。現状で規定されている平均在院日数の要件は,7対1看護配置の入院基本料が19日以内,同じく10対1が21日以内とされている。急性期とみなされる両入院基本料との日数差を,この8回の改定で埋めようとすることは明らかだ。「10日以内」が難しくても,「14日以内」程度の日数は,十分想定できるところである。すでにDPC対象病院の平均在院日数は,この水準に達しようとしている。次回の診療報酬改定の目玉になるかもしれない内容と予想してもいいのではないだろうか。

 次に各機能別の病床数に論を移したい。急性期67万床,回復期と亜急性期44万床というのが国民会議の結論であったが,この実現可能性はどうであろうか。7月16日に開催された中医協総会で公表された,07年7月の施設基準届出状況によれば,回復期リハビリテーション入院料の届出病床数は43,525床,同じく亜急性期入院医療管理料は11,474床であった。合わせて約55,000床であり,44万床は遠い彼方のことである。データ公表から1年以上経過しているため,回復期・亜急性期の病床数は増加しているだろうが,現状の病床体系では実現不可能と思われる状況だ。

 そうなると「病床体系の改革」がカギになってくるだろう。7対1や10対1看護配置が急性期ならば,13対1・15対1の病床は“Post acute”的役割として,転換が迫られるのではないだろうか。特別入院基本料の病床を含め,急性期の次のステップと想定される病床数は,およそ20万床。まずは,これらの病床が“狙われる”ことになる。しかも地域医療計画による「4疾病」の医療提供体制は,回復期・維持期の機能を重視している。早ければ医療計画の期間内(08〜12年度)に,病床機能の見直しを求めることになるだろう。08年改定では,回復期や亜急性期の大きな改定が実施されている。ならば10年ではなく,12年改定が一つのエポックとなる可能性が高い。

 長期的な方向性を理解したうえで“次の一手”を打つことが,医療機関経営の今後を決めるのである。