08年診療報酬改定では,周知のとおり「医療の質」「診療実績」による施設基準(=診療報酬点数)が導入されている。従来の“診療行為が実施されれば(結果を問わず)診療報酬が支払われる”という体系は,今後崩れていくことになるだろう。06年改定では“リハビリテーションを長期に行っても,効果は薄い”として,疾患別の上限日数を設定している。こうした考え方が,診療報酬の主流になることが予想されるのである。
「医療の質」「診療実績」は,どのように定義されるのか。客観的判断をするためには,数値による評価が行われなければならない。すなわち「クリニカルインジケータによる評価」の導入である。“(医療の)質が高いこと”に対するインセンティブとして診療報酬体系が見直されていくならば,医療機関は当然対応せざるを得ない。ましてや「P4P(Pay for performance)」のように,医療の質に対する支払い方式が検討されている昨今である。質の向上は経営の維持や改善に直結する。医療機能情報提供制度と同様,施設の存続はクリニカルインジケータにかかってくるのだ。
医療におけるITの導入は,これまで効率化をはじめとした経済的側面を中心に語られていた。それはそれで重要なことであるが,導入時のイニシャルコストが高額であることから,実現が難しいというのが現状である。問題なのは「高額なコスト」ではなく,「この状態が十数年間継続したままである」という点ではないだろうか。仮に医療におけるIT化が国の方針・政策であるならば,明らかに行政の怠慢であると言うことができよう。
今後ITは,経済的側面ではなく「医療の質」を通じた経営的側面から語られることになるに違いない。そうでなければIT化は進まないであろうし,同時に医療そのものも後退してしまう恐れがある。昨年,聖路加国際病院は『Quality Indicator−「医療の質」を測る』を作成・出版しているが,同院の福井院長は“電子カルテシステムがあったからこそ,医療の質を数値化することが可能”と語っている。ITが万能であると言うつもりはないが,必要性は高まっている。すべての医療機関が「どのようにITを活用するか」を再度考える時期に来ているのではないだろうか。 |