独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,がん超早期診断・治療機器の総合研究開発プロジェクト(研究代表者:橋爪 誠・九州大学大学院医学研究院教授)の中の胸部外科サブプロジェクトとして,東京大学,オリンパス(株)と共同で「胸部外科用インテリジェント手術支援ロボット」の試作機を完成させ,9月11日(火)にNEDO分室(東京都千代田区)において記者発表会を開催した。
最初に,NEDOバイオテクノロジー・医療技術部主任研究員の弓取修二氏が,開会の挨拶とNEDO事業概要の説明を行った。弓取氏は,「NEDOでは,低侵襲で治療できる機器として“インテリジェント手術機器研究開発”を2007年度から5か年計画で進めてきた。そのプロジェクトのなかで,非常に視野が狭く微細な処置を必要とする胸部外科領域の手術を可能とする手術支援ロボットの試作機を完成することができ,今回の発表に至った。この成果は,今後,医療技術・医療機器の世界で“Made in Japan”を羽ばたかせるための先駆けとなると思っている」と述べた。
続いて,同胸部外科サブプロジェクトリーダーで東京大学大学院工学系研究科教授の佐久間一郎氏がプロジェクトの成果について,「胸部外科は通常の腹腔鏡手術と比べて,胸骨の間の非常に狭い空間の奥の微細な作業が必要だが,これを可能にするロボットシステムを使った低侵襲な内視鏡下手術の基盤技術が確立できたのではないか」と述べた。
最後にオリンパス(株)医療技術開発本部長の小林正敏氏が,技術面から同プロジェクトの成果について説明した。「このプロジェクトでは,将来さまざまな領域に応用できるように,内視鏡下手術の中でも難易度の高い冠動脈バイパス術を対象とした。手術台上に5台配置可能な小型マニピュレーター,肋骨にぶつからないように細かな制御をしながら先端を自由に動かせるロール関節器具を使ったマスタ・スレーブシステムにより,直径2mmの血管吻合を可能にした。東京大学の小野 稔先生により,動物の臓器摘出や拍動下の心臓バイパス手術を成功させ,NEDOの目標をクリアすることができた。オリンパスとして,今後この技術をもとに,さまざまな適用や事業性を含めた実用化に向け,新たなシステムの検討を進めていく」と開発の継続に向けて意欲を示した。
会場では,同プロジェクトの医学評価を行った東京大学大学院医学系研究科教授の小野 稔氏により,直径2mmの模擬血管吻合デモンストレーションが行われた。 |