シーメンス・ジャパン(株)は2012年8月25日(土),TKPガーデンシティ品川(東京都港区)において,「The 4th Definition Symposium」を開催した。このシンポジウムは,世界に類のない2つのX線管球を搭載したDual Source CT(DSCT)の臨床使用経験と撮影技術を報告する場として設けられた。2005年の北米放射線学会(RSNA)で発表された世界初のDSCT「SOMATOM Definition」は,dual energy imagingや時間分解能83msの高速撮影などにより,臨床現場に大きな影響を与えてきた。2008年のRSNAでは,その上位機種となる128スライスの「SOMATOM Definition Flash」が登場。75msとさらに時間分解能が高速化され,心臓CT検査などに高い有用性を発揮している。4回目となる今回のシンポジウムでは,その最新の使用経験が取り上げられた。
開会にあたり,まずモデレーターを務める国立循環器病研究センターの内藤博昭氏が挨拶を行った。内藤氏は,CTが持つ,断層像を撮影する,X線の減弱係数を測定するという2つの技術的側面を取り上げ,DSCTは高い時間分解能とdual energyにより,優れた性能を発揮することができると説明。CTメーカー各社が技術開発を進めているが,2つの技術に関してはシーメンスがトップを走っていると述べた。
この挨拶に続き,3つのセッションに分けて発表が行われた。最初のセッションのテーマは,「Advanced Technologies」。金沢大学大学院の市川勝弘氏を座長に迎え,2題の発表があった。先に登壇した東海大学医学部付属病院の池田 秀氏は,自動露出機構(AEC)をテーマに講演した。池田氏はまずAECの機能について説明した上で,日本放射線技術学会学術調査研究班が行ったDefinition FlashのAEC性能評価結果を示し,同社の被ばく低減技術である“CARE Dose 4D”が有用であると述べた。続いて,新潟大学医歯学総合病院の能登義幸氏が,Definition Flashの時間分解能の評価について発表した。能登氏は,時間分解能に影響する因子としてガントリの回転速度,画像再構成法,ピッチなどを挙げて,Definition Flashに搭載されたそれぞれの技術を解説した。そして,非分割ハーフ再構成法で,75msの時間分解能を持つ同装置は,質の高い画像を提供することが可能であるとまとめた。
休憩を挟んで行われた2番目のセッションでは,「Cardio-Vascular Imaging」をテーマに4人が講演した。座長は榊原記念病院の井口信雄氏。まず,「心臓I」として,高崎総合医療センターの静 毅人氏が,シーメンスの最新の検出器である“Stellar Detector”搭載装置の使用経験について発表した。静氏は,同社の被ばく低減・画質改善技術の歩みを解説した上でStellar Detectorを取り上げ,従来よりも電気ノイズを最小限に抑えて,高いSNRを達成していると述べた。そして,Stellar Detector搭載のDefinition Flashで撮影した画像を供覧し,被ばく低減と画質向上に加え,ワークフロー改善が図れたと報告し,循環器領域の診断・治療効果判定に有用であるとまとめた。続いて,「小児循環器」をテーマに,岡山大学大学院の佐藤修平氏が,「先天性心疾患のCT検査におけるDefinition Flashの優位性」と題して講演した。岡山大学病院では,CTの多列化に伴い,先天性心疾患の検査数が増加しており,2011年のDefinition Flash導入により年間200件を超えるまでになっている。佐藤氏は,先天性心疾患における造影CTの役割は,大動脈系・肺静脈系・冠動脈の評価,無脾症・多脾症の診断だと述べた上で,同院の撮影プロトコールを解説。Cardio Flash Spiralなどを用いた症例画像を供覧し,低線量ながら高い画質を得ることができていると説明した。
続いて登壇した三重大学医学部附属病院の北川覚也氏は,「心臓II」として「Definition FlashによるComprehensive Cardiac Study」と題し講演した。北川氏は同院のcomprehensive cardiac CTのプロトコールを説明し,症例画像を示した上で,Definition Flashにより,冠動脈形態,負荷心筋血流,心筋遅延造影の総合評価を40分の検査時間,15mSvの被ばく線量で実施できると報告した。また,北川氏は講演のまとめとして,Definition Flashでは,高い三次元的空間分解能で心筋血流定量解析をルーチンで行えると述べた。2番目のセッションの最後は,「ポストプロセス」をテーマに済生会宇都宮病院の本多正徳氏が講演した。始めに本多氏は,同社の画像診断ITソリューションである「syngo.via」のデモンストレーションを行い,救急診療におけるsyngo.viaを用いたワークフローを解説した。さらに,本多氏は,夜間や休日などマンパワー不足の状況でも質の高い画像提供と診断ができているといった,syngo.via導入のメリットを説明した。
最後のセッションでは,内藤氏が座長を務め,「Dual Energy Imaging」をテーマに3演題が用意された。まず頸部のdual energy imagingについて,国立がん研究センター東病院の久野博文氏が発表した。「Dual-energy CTを用いた喉頭癌と下咽頭癌による喉頭軟骨浸潤評価」と題した講演の中で久野氏は,喉頭軟骨浸潤の評価は,病期と治療方針の決定に重要であるとし,weighted average imageとiodine imageを示しながら解説を行った。その上で久野氏は,dual energy imagingでは,軟骨組織と腫瘍をはっきりと区別でき,咽頭軟骨浸潤の評価に有用であったとまとめた。次いで,登壇した東邦大学医療センター大森病院の白神伸之氏は,「DUAL ENERGY CTを用いた閉塞性肺疾患の評価」と題して発表した。白神氏は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)症例におけるdual energy imagingについて,症例画像を示しながら使用経験を解説した。そして,被ばく線量や肋骨のアーチファクト,キセノンガスや低吸収領域の閾値設定といった課題を挙げつつも,従来の評価法でははっきりしなかった情報が得られるようになったと,メリットを挙げた。
最後は,井口氏が「Definition Flashによる大動脈弁疾患の評価」をテーマに発表した。井口氏は弁膜症の治療が増えていく状況の中で,人工弁の評価のためには,鮮明でアーチファクトのない画像が得られるdual energy imagingが良いとし,monochromatic imageなど同院での臨床例を供覧した。また,井口氏は,高い時間分解能,超高速ダブルスパイラルヘリカル,そしてdual energy imagingなど技術を搭載したDefinition Flashが,大動脈弁疾患の評価に高い有用性を発揮するとまとめた。
当日は,ほぼ満席となるなど多くの参加があり,会場内は最後まで盛り上がりを見せていた。会場後方では,syngo.viaのデモンストレーションが行われたほか,Stellar Detectorが展示され,シーメンスの最先端技術を直接目にできるシンポジウムとなった。 |