第6回全国X線撮影技術読影研究会の奈良大会が2012年3月31日(土)と4月1日(日)の2日間,東大寺総合文化センター金鐘ホールにおいて開催された。本研究会(以下,NTRT研究会)は元・岐阜医療科学大学教授の市川秀男氏が発起人となって起ち上げたもので,これまで年2回,全国各地で開催されてきた。今回は,世界遺産である東大寺境内に昨2011年秋に建設された,東大寺総合文化センターの金鐘ホールが会場である。地階の小ホールでは,ポスター展示と機器展示も行われた。初日はあいにくの冷たい雨に見舞われたにもかかわらず,300名を超える参加者でホールは満席となり,100名ほどが地階の会議室のスクリーンで講演を聴講した。
冒頭,大会長を務めた,奈良県立医科大学附属病院中央放射線部副技師長の安藤英次氏が開会の挨拶に立ち,桜の季節に奈良の歴史を感じることができる会場を選んだと述べた。今回のメインテーマは,「股関節を読む」。股関節は乳幼児から高齢者まで,幅広い対象が特徴の撮影部位であり,特に人工関節の普及に伴い,術前から術後に至るまでの定期的なX線撮影が重要な検査法となっているとした。
後援の(社)奈良県放射線技師会会長の高嶋敏光氏の挨拶に続いて,世話人代表である市川氏が,眠れる大陸と言われる一般撮影を,チーム医療における診療放射線技師の役割と責任において進化・発展させ,世界に発信し,明日の医療に貢献してほしいと檄を飛ばした。
1日目は一般演題として,大腿骨骨頭壊死,大腿骨頸部骨折,小児股関節,THAにおけるトモシンセシスをテーマにした4題の発表が企画された。いずれも,年齢,病態,病期などの疾患の特徴を踏まえ,慎重で適切なポジショニングを行うことの重要性を改めて認識させられる内容であった。
特別講演には,大腿骨頭壊死,変形性股関節症,再生医療を専門とする奈良県立医科大学人工関節・骨軟骨再生医学講座教授の川手健次氏が招かれ,「股関節外科医が求めるX線写真─私がX線写真から知りたいこと」と題して講演した。股関節に関する主な疾患や手術方法について,わかりやすいシェーマやX線写真を供覧しつつ解説を行った。整形外科の治療は,骨切り術や人工股関節置換など大胆な手術が多く,ステムという人工股関節は非常に多くの素材や型が存在する。世界中で独自の術式やステムなどのツールの開発が行われていることが紹介されたが,最近では再生医療も治療法に加わって,知るほどに奥の深い分野と言える。川手氏がX線写真から知りたいことは,大腿骨頭壊死症では壊死範囲,圧潰の程度,変形性関節症の有無や45°屈曲位像,変形性股関節症・骨切り術では動態撮影での適合性,臼蓋回転骨切り術では適合性とAF撮影,人工股関節置換術では2方向撮影によるフォロー,摺動部の摩耗の荷重撮影,osteolysisの描出,最近のトピックスであるFAI(femoroacetabular impimgement)では正確な前後像と各種サインだと述べた。このようなポイントを認識して撮影を行い,臨床医が求める画像を提供して,チーム医療の一員としての役割を果たすことが求められていると言えよう。
2日目は,X線撮影の重鎮である3人の専門家が教育講演を行った。片井整形外科・内科病院の榊 和宏氏が「難しい撮影法も目線を変えて簡単に」,元・岐阜医療科学大学の市川秀男氏が「胸部単純X線写真の撮影と読影を考える」,元・日本医科大学千葉北総病院の川村義彦氏が「撮影法組み立ての基礎からみた撮影法の見直し」をテーマに講演した。
次回の第7回大会は,今年の8月,元・岐阜医療科学大学教授の市川秀男氏を大会長に,岡山県の倉敷市で開催される予定である。
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地階の小ホールにおけるポスター展示風景 |
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地階の小ホールにおける機器展示風景 |
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