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取材報告

2012
ソフトバンクテレコム
「ヘルスケアセミナー2012〜スマートフォンとクラウドが創る医療ICTの未来」開催

今井康之氏
今井康之氏

武藤正樹氏
武藤正樹氏

吉田 茂氏
吉田 茂氏

遠矢純一郎氏
遠矢純一郎氏

後半の会場風景
後半の会場風景

武藤浩二氏
武藤浩二氏

大塚孝之氏
大塚孝之氏

日比野暢氏
日比野暢氏

  ソフトバンクテレコムが主催する「ヘルスケアセミナー2012〜スマートフォンとクラウドが創る医療ICTの未来(東京)」が,2月3日(金),東京都港区の明治記念館で開催された。
  ソフトバンクテレコムは,「ホワイトクラウド」などのクラウドコンピューティング,iPhoneやiPadに代表される携帯・通信事業などを通じて,医療分野におけるICT利用を支援しているが,今回のセミナーでは,医療現場でのスマートデバイスやクラウド環境活用の先進事例を中心に取り上げられた。当日は,350名の定員を超える参加者があり,モバイルデバイスとクラウド利用への関心の高さを感じさせた。なお,同セミナーは2月10日(金)には大阪でも開催された。
  開会にあたって挨拶したソフトバンクテレコム取締役常務執行役員の今井康之氏は,スマートデバイスが爆発的に普及したコンシューマー市場に比べ,医療機関でのICT活用は4〜5年遅れをとっているが,「2012年には,クラウド,ネットワークの高速・大容量化,タブレットPCなどデバイスの進化によって“Game Change”が起こると考えている。その中でソフトバンクグループの技術を生かしていきたい」とコメントした。
  最初に,基調講演として,国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹氏「医療が変わる to 2020〜医療ICTのゆくえ」を行った。武藤氏は,社会保障・税一体改革,新たな情報通信技術戦略における医療分野の取り組み(どこでもMY病院とシームレスな地域連携について)など,政府が進める医療・介護の制度改革の概要を説明し,2012年の医療介護保険の同時改定,2013年の新医療計画では在宅医療が最大のテーマとなっており,団塊の世代が後期高齢者となる2020年に向けて,それを支える医療と介護のあり方が検討されているとした。武藤氏は,そのキーワードとなるのは20世紀の“病院モデル”から“在宅医療モデル”への転換であり,ICTが重要な技術となるとして,富山県新川(にいかわ)医療圏でMicrosoft Office Grooveを用いて構築されている在宅患者情報共有モデルなどの例を紹介し,これからの医療・介護を統合し多職種が連携する地域包括ケアシステムの方向性を示した。

  招待講演は,名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター長の吉田茂氏が「iOSデバイスの医療現場における展開〜ユーザーメードシステムとの融合」を行った。吉田氏は,最初に今回の講演のもうひとつの主題は「ユーザーメードシステムの活用による医療ITのBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)」だと紹介し,大学病院における基幹システムとFileMakerを融合した構築と,さらにFileMakerとiPadなどのモバイルデバイスを活用した有事の際に病院のBCPをサポートするシステムの提案を行った。
  名大病院では、基幹システムをNeoChart(富士通中部システム)で構築し、2006年からさまざまなデータベースをFileMakerで統合した「名大の森」と連携して運用を行ってきた。2012年1月には第6次のシステム更新を行ったが,その間のバックアップとして,FileMakerによる“電子カルテ停止時システム”を作成した。このシステムは,緊急時に誰でもがすぐに使えるように画面レイアウトや操作性を基幹の電子カルテとまったく同じにした。このシステムをベースに,iPadなどのポータブルデバイスを組み合わせることで停電やネットワークダウン時などの災害・緊急時にも運用できるBCPシステムになるのではないかと吉田氏は述べた。「BCPのシステムに必要なことは,自らハンドリングできていつでも修正でき,情報の2次利用が可能なことであり,これを可能にするのがFileMakerであり,現場での機動性を確保できるのがiPadだといえるだろう」

  特別講演は,「ICT活用による在宅医療イノベーション」として,桜新町アーバンクリニック院長の遠矢純一郎氏が講演した。遠矢氏は,東京都世田谷区にある桜新町アーバンクリニックでの在宅医療の現況を紹介し,高齢化する日本医療を支えるために在宅医療への転換が施策として進められており,24時間365日の緊急対応体制や地域の多職種連携による地域包括ケアが成立する条件として「効率性」と「より高度な連携システム」の必要性を挙げた。同クリニックでは,当初から在宅医療にiPhoneを採用し,さまざまなアプリを活用して診療を行っている。例えば,診療記録は移動中にボイスレコーダで録音しメールで転送して事務スタッフが音声起こしするなど,ネットワークを有効に活用することで業務を効率化して訪問診療の時間を50%増加させるなど効果を挙げている。
  また,高度な連携システムとしては,多職種のスタッフが1人の患者に対しての情報共有を行うために,クラウド型の地域医療連携システムEIR(エイル)を開発した。EIRでは,ソフトバンクテレコムのホワイトクラウド上にシステムを構築している。在宅医療の課題は,在宅医療を担う医療機関の増加,訪問看護師の養成で,教育や業務支援のシステムの提供も必要だとした。遠矢氏は,「実際に在宅医療に携わって,病院にはない患者の生きる力を呼び起こす在宅の力を実感している。これを大きく発展させるためにも,ICTをいろいろな局面で活用していきたい」と述べた。

プログラムの後半は,2つの会場に分かれてセッションが行われた。
〈孔雀の間〉
特別セッション◆業界展望
「医療IT最新事情 〜クラウドとスマードパッドが医療界にどんな変化をもたらすか』
メディキャスト メディプラザ統括マネージャー 大西大輔
セッション◆医療クラウド
「クラウドとモバイルで変わる、医用画像の管理と活用』
GEヘルスケア・ジャパン ヘルスケアIT本部長 大塚孝之
セッション◆シンクライアント
『シンクライアント&タブレットが提供する最新医療環境』
富士ソフト ソリューション事業グループメディカルソリューションユニット 渡部英樹

〈鳳凰の間〉
特別セッション◆救急活用
『病院照会サポートシステムによる救急搬送時間の短縮〜スマートフォンとタブレット型端末を活用した新たな取組み』
仙台市消防局 救急課救急管理係長 武藤浩二
セッション◆医療機器連携
『バイタルサインとクラウドの可能性』
日本光電工業 営業本部コンサルティング&ソリューション部 工藤利和
セッション◆システム連携
『医療分野でのFileMakerとiOSの活用事例と動向』
ファイルメーカー 法人営業部マネージャー 日比野暢

  「救急活用」のセッションでは,仙台消防局の武藤氏が,救急隊が救急出動時に搬送先の病院の受け入れ状況などを共有できる病院照会サポートシステム(BSS)を構築し,端末にiPhone4とiPad2を活用した運用を紹介した。セッション「医療クラウド」では,GEヘルスケア・ジャパンの大塚氏がソフトバンクテレコムと提携して提供しているクラウド型の画像外部保管サービス「医知の蔵」について説明した。また,「システム連携」では,ファイルメーカーの日比野氏が医療分野におけるFileMakerの活用事例と,iOS向けのFileMaker GoとiPhone,iPadの利用の可能性について紹介した。


●問い合わせ先
ソフトバンクテレコム(株)
ヘルスケアプロジェクト推進室
担当:葭葉(よしば)
連絡先:atsushi.yoshiba@g.softbank.co.jp
http://www.softbanktelecom.co.jp/

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