富士フイルムホールディングス(株)は,携帯型超音波診断装置で世界2位のシェアを持つ米国のSonoSite,Inc.(以下ソノサイト)の買収合意を発表し,12月15日19時30分より東京ミッドタウンで記者説明会を開催した。
最初に,富士フイルムホールディングス代表取締役社長・CEOの古森重隆氏が「富士フイルムのメディカルシステム事業の概要と今回の買収の目的」について説明した。古森氏は,X線フィルムに始まる富士フイルムのメディカルシステム事業の歴史を紹介し,診断領域において画像技術を中心に医療に貢献してきたと述べた。さらに,現在は機能性食品などの“予防”,医療用医薬品などの“治療”の領域に事業を拡大し,ヘルスケアカンパニーとして売上1兆円をめざして事業を展開しているとした。
その上で,「超音波診断装置は,小型,非侵襲で高い汎用性があり,X線による画像診断とは補完関係で事業を大きく拡大できると判断した。超音波診断装置市場は,全世界で5000億円の成長市場であり,その中でも携帯型超音波診断装置市場は年10%以上の成長が見込まれている。この市場で大きなシェアと高い技術を持つソノサイト社を買収することで,富士フイルムが持つさまざまなノウハウとの相乗効果が期待でき,オンリーワン,ナンバーワンの製品が提供できるだろう」と締めくくった。
続いて,取締役・執行役員(メディカルシステム事業部長)の玉井光一氏が「携帯型超音波診断装置大手米国SonoSite,Inc.買収について」を概説した。玉井氏は,まずソノサイトの会社の概要を紹介し,超音波診断装置の領域で,医師がその場で診断や治療方針の決定を行うポイント・オブ・ケア(POC)のドメインを作ったのがソノサイトの携帯型超音波診断装置であると紹介した。2009年度の世界の携帯型超音波市場では,ソノサイトはGE(シェア51%)に次いで2位のシェア(37%)を持っている。ソノサイトの強みは,POC市場での先駆者としてのシェアの高さと顧客ニーズに基づいた製品の企画力と開発力,超小型軽量化を実現するASIC設計技術,堅牢で高精細の高周波プローブの製造技術,新しい診断価値を生み出す光超音波技術などを挙げた。
その上で,富士フイルムが買収することで期待されるシナジーとして,開発においてはソノサイトの独自で高い技術力と,富士の画像処理技術,レーザー技術を組み合わせた小型・高画質化などの高付加価値の実現,生産では価格競争力のある商品の展開,販売では両社のワールドワイドでの販売拠点や代理店網の相互活用などが考えられるとした。
ソノサイトの買収方法は,富士フイルムの米国持株会社の下に設立される買収子会社による普通株式の公開買い付けで,完全子会社化をめざす。株式取得費用は約9億9500万ドル(100%取得の場合,約766億円)。
質疑では,買収のシナジーが出る時期について玉井氏は「2年以内に富士フイルムが開発中の新しい技術をアドオンした,まったく新しい超音波診断装置を投入できる予定で,それを目玉として2〜3年の間に携帯型超音波診断装置でトップシェアのGEをキャッチアップできるように進めていきたい」と述べた。また、現在、同社で販売している携帯型超音波画像診断装置「FAZONE CB」については,「今後,モデルチェンジのタイミングで,シナジーによって生まれる新製品に順次切り替えていく」(玉井氏)とのことだ。 |