一般社団法人日本IHE協会は,2011年11月7日(月)〜11日(金)の5日間にわたり,東京都立産業貿易センター台東館(東京都台東区)において,「コネクタソン2011」を開催した。
IHEでは,医療機関におけるさまざまな機器やシステムの接続にあたり,情報のワークフローである業務シナリオ(統合プロファイル)を分析し,標準規格(HL7,DICOM)の使い方を示したテクニカルフレームワーク(技術定義書)を策定している。コネクタソンは,テクニカルフレームワークを実装した機器・システムの相互接続性を確認するもので,ベンダーが機器・システムを持ち寄り,テストシナリオに従った接続検証テストが行われる。
「コネクタソン2011」には,46社,85システムが参加。実施対象分野(ドメイン)は,放射線検査,臨床検査,循環器部門,ITインフラストラクチャ,内視鏡検査,そして,今回初めての実施となった患者ケアデバイス(PCD:Patient Care Device)を加えた6分野。一斉に複数のベンダー,システムとの接続テストができる好機であることから,日本国内での展開を検討している海外からのベンダーの参加も見られた。
11月8日(火)には,第33回IHE勉強会とコネクタソン見学会のプログラムが組まれ,医療関係者やベンダー担当者を中心に50名を超える参加者が集まった。
IHE勉強会では,IHE,業務シナリオ,ドメイン,コネクタソンについての講演が行われた。
はじめに,日本IHE協会代表理事の安藤 裕氏(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院病院長)がIHEの概要について講演した。安藤氏は,医療情報の標準規格であるHL7やDICOMだけでは,メーカー間や装置・システム間での接続が上手くいかない状況を解決するために,テクニカルフレームワークの策定やコネクタソンを実施するようになったとし,IHEの活動の背景や内容について紹介した。また,IHEの用語について解説し,IHEの特徴や業務シナリオの具体例を述べるとともに,IHEは,ユーザーやメーカーが意思疎通できる共通言語であるとして,そのメリットを述べた。
次に,日本IHE協会普及推進委員会の奥田保男氏(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター医療情報室)が,業務シナリオの概要について講演した。奥田氏は,医療情報の標準化の必要性を述べた上で,標準規格だけでは連携が上手くいかない理由について具体例を挙げて説明し,その解決のために,規格を解釈するためのガイドラインの重要性を述べた。加えて,ユーザーとベンダーの立場の違いから生じる知識差を埋めるためにも,IHEの利用が有用であるとした。そして,業務シナリオの検討方法や,IHEの技術的構造を解説し,マルチベンダーシステム対応や,情報の継続的な保存,施設間連携に必要な標準化に業務シナリオが重要な役割を担うと述べた。
続いて,日本IHE協会普及推進委員会の松田恵雄氏(埼玉医科大学総合医療センター)が,ドメイン(分野,領域)概要について講演した。松田氏は,IHEがめざすシステム構築とは,“臨床現場が想定したシナリオ”通りの連携を実現するマルチベンダーシステムであるとし,ドメインごとに種々のワークフローをシナリオ化することで相互運用性を図り,その実現に寄与すると述べた。そして,ドメイン分類を説明した上で,放射線ドメインにあるIHEの代表的なシナリオ「SWF(Scheduled Workflow)統合プロファイル」を具体例として取り上げ,システム連携について詳述。さらに,医療機関でIHEを用いたシステムを構築する際の考え方を示した。
最後に,日本IHE協会接続検証委員会の吉村 仁氏が,IHE-Jコネクタソンについて講演した。吉村氏は,コネクタソンの目的や方法,今回のコネクタソン2011の実施状況について述べるとともに,「1つのテストシナリオについて3社以上と接続確認を行う」といった合格の条件について説明した。さらに,テストにあたっては進捗管理ツール「KUDU」を使用し,各種ツールによって審査の効率化を図っているといった接続検証の内容について解説した。
勉強会に続いて,参加者をユーザーとベンダーのグループに分け,コネクタソン会場の見学会が行われた。
昨2010年からコネクタソンの実施が始まった内視鏡検査は,日本から始まったものであり,IHEでは統合プロファイルを国際提案していく取り組みを行っていることが説明された。現在は,HISからのオーダと部門からの実施状況の報告という基本的な統合プロファイルのみだが,今後は画像情報などについての統合プロファイルなどを追加していく予定だという。
また,今回初めてのコネクタソン実施となったPCDは,モニタ系の機器が対象であり,モニタからのデータ出力の標準化や,患者のアラームの標準化(ナースコールなどとの連携)を目的としている。今回は,機器接続や数値データの標準化など基本的なテストを行っており,今後,波形データ管理などの統合プロファイルのテストも行っていくという。
今回のコネクタソンの評価結果は,12月中に日本IHE協会のWebでの公開を予定している。 |