東芝メディカルシステムズ(株)は10月13日(木),東京ステーションコンファレンス(東京都千代田区)にてメディアセミナー「CTを用いた大腸がん検診技術」を開催した。近年,CTコロノグラフィー(CTC)は術前診断から任意型検診へと広がりつつあり,また,CTCの議論は検査精度から運用方法(検査や読影の効率性)へと移行しつつある。セミナーでは,同社担当者がCTC技術や効率的な読影を行うネットワーク技術を紹介するとともに,同社とCTC技術を共同開発している国立がん研究センター がん予防・検診研究センターセンター長の森山紀之氏による講演が行われた。
冒頭,広報室室長の太刀川博之氏が挨拶に立ち,大腸がんの現状や問題点,CTを用いた大腸がん検診について広く認知してもらうための場として,このセミナーを企画したと述べた。
1題目にCT営業部の宮谷美行氏が「東芝の大腸がん検診技術について」と題して発表した。宮谷氏は,CTC検診に必要な視点として,1)検査が楽であること,2)検査精度の維持,3)読影医の確保の3つを挙げ,各視点について解説した。1)については,CTの多列化により被検者の息止めの負担が軽減していることに加え,最新の被ばく低減画像再構成法を用いた0.15mSv臨床画像を供覧し,一般単純X線撮影に近い線量での撮影を目標にしていると述べた。2)は微小な病変をとらえることもさることながら,客観性のある検査結果の重要性を強調。撮影に有用な高画質検出器や専用寝台マットの開発について紹介するとともに,ワークステーションで処理した仮想内視鏡表示で観察することで死角のない検査ができ,かつ遠隔読影も可能となり,客観性を担保できるとした。また,精密検査としてCTCの有用性が認知されつつあることを受け,CTCへの期待が「効率的な運用」に変わってきているとし,効率性向上の手段としてCTC遠隔読影を挙げた。そして,ザイオソフト(株)(ワークステーション),(株)イーメディカル東京(遠隔画像診断サービス)とともに,遠隔読影のネットワークを構築し,効率的なCTC検診システムを確立,運用が始まっていることを紹介した。宮谷氏は,さらなる被検者の負担軽減,検査精度向上,デジタルデータの最大限の活用を図ることで,CTCによる大腸検診が普及していくだろうと述べた。
続いて,森山氏が「CT-Colonography(CTC=仮想内視鏡)の背景・重要性・問題点について」と題して講演した。はじめに,わが国におけるがん,大腸がんについて概観した上で,進行がやや遅い大腸がんは検診で発見しやすいこと,対策型検診の便潜血検査は進行がんのうち10〜15%が陰性となることなどを説明し,早期発見・治療の重要性を述べた。
そして森山氏は,仮想内視鏡は任意方向での観察や視野角210°のWideモード,展開表示などにより,大腸内視鏡検査では盲点となりやすいハウストラや半月ヒダの裏の観察も可能であること,大腸のどの位置を観察しているかを把握できること,デジタル前処置が可能といった有用性があることを解説した。また,大腸がんは隆起型が大部分を占め,自検例で隆起型の早期大腸がんのCAD検出率が100%であったことを報告し,CTC検診の有用性を強調した。CTCのさまざまな表示法や,より低被ばくでの検査が可能となることによって,今後の大腸がん検診はCTCで行い,その後に内視鏡を用いた検査・治療を行うルーチンとなっていくだろうと述べた。そして,遠隔読影を組み合わせることで,より効率的な大腸がん検診が可能となるとまとめた。 |