GEヘルスケア・ジャパン(株)は,2011年10月1日(土)に,赤坂パークビル(東京都港区)にてトモシンセシス搭載デジタル一般X線撮影装置ユーザーズミーティング「第1回TOMO友の会」を開催した。
同社は2000年に他社に先駆けてFPD搭載X線撮影装置の販売を開始。以後,「Dual Energy Subtraction」,長尺撮影「Auto Image Paste」といった,FPDの特性を生かしたアプリケーションの開発を行ってきた。そして2007年にDefinium8000にトモシンセシス「Volume RAD」を搭載。現在,国内において,約30システムが稼働している。ユーザー同士のコミュニケーションの場をめざす「第1回TOMO友の会」には首都圏を中心とした各地から多くのユーザーが参加し,うち7施設からの報告が行われた。
冒頭,X線営業部部長の櫻井 諭氏が開会の挨拶に立った。櫻井氏は,同社の一般X線撮影装置の主力機種であるDiscovery XR650の新規導入の際には,ほとんどにVolume RADを搭載していることから,今後もVolume RADのユーザーの増加が見込まれ,また,国内外の学会においてもトモシンセシスの発表の増加や単独のセッションが設けられるなどの流れがあることを述べた。その環境のなか,Volume RADのユーザーの要望を受けてユーザーズミーティングの場を設けたと,開催の経緯を説明した。櫻井氏は,TOMO友の会が,臨床でのVolume RADのベストプラクティスを共有する機会となれば幸いであるとし,今後もユーザーの力を借りて技術改良,製品開発をしていきたいとの展望を述べた。
講演1では,財団法人脳血管研究所 美原記念病院画像診断科の阿部祐次氏が,同院におけるアドバンスドアプリケーションの臨床画像を供覧し,その有用性について述べた。同院では,2011年6月に一般撮影装置とCRの老朽化に伴い,FPD搭載装置であり,選定時にアプリケーションの実績があったDiscovery XR650にリプレイスした。部位ごとの表面線量の検討を行った結果,CRと比べ,約30〜60%の線量低下が可能となっていることを報告し,今後もアドバンスドアプリケーションの症例数を増やしながら,被ばく線量を下げるための検討をしていくとした。
講演2は,札幌医科大学附属病院放射線部の虻川雅基氏が,Discovery XR650の使用経験を報告した。虻川氏は,装置の最大の特長は高い生産性であると述べ,検査時間が約2/3に短縮し,患者の負担が軽減しているとした。同院では,ワイヤー法によるトモシンセシスの断層厚の確認実験の結果から,断層厚が最も薄くなる最大振角40°(4mm)での撮影を採用していることを紹介。トモシンセシス画像とCT画像を比較供覧し,トモシンセシスの利点として,立位撮影が可能,メタルアーチファクトが少ない,被ばく線量が少ない,などを挙げた。また,Dual Energy Subtractionについても使用経験を報告し,その有用性や課題について述べた。
講演3は,医療法人社団武蔵野会 朝霞台中央総合病院放射線科の渡辺亮二氏が,Definium8000の使用経験を報告した。同院では,Volume RADの8〜9割が耳鼻咽喉科からの依頼であり,副鼻腔などの撮影では障害陰影のない,確定診断が可能な画像の提供ができていることなどが報告された。そして,Volume RADの現在検討中の部位や,検討課題,改善点について述べ,一般撮影の今後の方針として,Definium8000の最大限の使用や,Volume RADのさらなる活用などを挙げた。
講演4は,日本赤十字社 安曇野赤十字病院放射線科の山本賢二氏が,同院における一般撮影の現状を報告した。同院は改築に伴い,Definium6000を2台とDiscovery XR650を導入したことにより,作業効率や検出能の向上,線量の低下が可能となっていることが説明された。そして,トモシンセシス,長尺撮影,全脊椎撮影の症例画像を提示し,その有用性と問題点について述べ,操作性の向上や高速化といった,希望する改善点について述べた。
休憩を挟んで講演5では,大阪大学医学部附属病院医療技術部放射線部門の本田育子氏が,トモシンセシス基本特性を中心に講演した。本田氏は,トモシンセシスの上部頸椎撮影への応用について,Definium8000を用いたファントム検証について詳述。検証の結果,同院では上部頸椎撮影に,照射線量の最も少ない振角30°,収集数60shot,回転中心位置9cmの撮影プロトコールを採用するに至ったことを報告した。
講演6は,財団法人芙蓉協会聖隷沼津病院/聖隷沼津健康診断センター放射線課の田沢範康氏が,トモシンセシス精密検査による胸部検診での臨床実績を報告した。同センターでは,Dual Energy Subtraction(DES)撮影で悪性所見が認められた場合には,病院でのCT精密検査に回っていたが,2009年のDefinium8000導入後は,トモシンセシス精密検査を実施することができるようになり,迅速な精密検査による不安解消や,要精密再検査数の減少,CT精密検査受診者の偽陽性の減少につながっているとし,トモシンセシス精密検査が対象者の振り分けに有効であることが報告された。
最後の講演7では,東京女子医科大学東医療センター放射線科の油原俊之氏が,同院のトモシンセシス検査部位と撮影パラメータについて報告した。同院では,トモシンセシスの検査部位は副鼻腔が65%を占めている。CTが臥位での撮影であるのに対し,トモシンセシスは座位・立位での撮影も可能なため,副鼻腔や上顎洞の自然口の開通が確認できること,アーチファクトが少ない,空間分解能が高いといったトモシンセシスの優位性を説明した。また,検証をもとに,パラメータについて総線量,振角,照射回数,走査方向の各項目についての考え方を示した。
各講演後の質疑応答では,参加者から臨床に即した質問や意見交換が行われ,トモシンセシスユーザーにとって非常に有意義な会となったものと思われる。 |