公益社団法人 日本放射線技術学会(以下,技術学会)と社団法人 日本放射線技師会(以下,技師会)は,8月27日(土)に京都テルサ(京都市)にて,5回目となる公開合同学術セミナーを開催した。「専門技師制度・認定機構の将来を考える─共通性・独自性・連携の在り方─」をテーマに,現在,独自基準で運営されている専門技師制度・認定機構の,将来的な制度のあり方や共通基準・連携の可能性,社会に評価される体制作りについて,基調講演2題,シンポジウム4題と総合討論が行われた。
冒頭,総合司会を務める技術学会副代表理事の小倉明夫氏が,今回のテーマの背景を説明した。診療放射線技師が担う業務の技術が急速に進歩しているなか,専門技師・認定機構が専門技師を認定することで,高度に特化した技術を,安心・安全に高い質を保って提供することができており,今後,これらの認定機構をどのように進めていくかの方向性を議論する必要があるとした。
はじめに,技術学会代表理事の真田 茂氏と,技師会会長の中澤靖夫氏が挨拶に立った。
真田代表理事は,学術団体と職能団体という互いの立場を尊重しながら,密に連携をとることの重要性を強調し,現在議論されている認定制度の統合化が,より良い医療技術の提供に直結すると述べた。また,検討が始まったばかりの診療放射線技師による読影補助にもかかわる重要なテーマであり,議論を深めたいと述べた。
中澤会長は,今回のテーマは,Ai認定技師の問題や平成24年度の診療報酬改定への提言,チーム医療における診療放射線技師の診療補助業務の検討においても重要なものであるとし,将来的に専門技師認定が診療報酬に反映されることを視野に入れた議論を重ねたいと述べた。
基調講演1では,池田康夫氏(社団法人日本専門医制評価・認定機構/早稲田大学理工学術院生命医科学科)が,「我が国の専門医制度の現状と将来」をテーマに講演し,日本における専門医制度の歴史から始まり,現状の課題についても解説した。現在の学会ごとの独自の専門医認定は,制度の統一性,専門医の質の担保の点で懸念があることや,患者からはわかりにくい制度となっているといった問題点が多いため,専門医制度を持つ75学会が加盟する社団法人日本専門医制評価・認定機構が,制度の標準化をめざし,専門医制度整備指針や専門医育成のためのカリキュラム,プログラム作成の指針を示していることを説明した。また,学会自体が専門医を認定する仕組みが利益相反との指摘もあるとし,中立的第三者機関としての新たな専門医機構設立への取り組みについて紹介した。
続いて講演2では,「専門技師制度と認定機構」と題して,技術学会で8年間にわたり認定機構起ち上げに携わってきた大西英雄氏(県立広島大学大学院総合学術研究科)が講演した。近年,放射線領域の検査は高度化,細分化が進んでいることから,学術的に高い知識と画像判断能力を持つ専門技師の必要性を説いた。また,技術学会の認定制度に関する変遷を紹介し,関連学術団体との共同認定という仕組みを強調。今後は,専門技師認定機構のような第三者外部評価機関が必要になるとの方向性を示した。
休憩を挟み行われたシンポジウムでは,技術学会理事・学術委員長の石田隆行氏と,技師会常務理事の児玉直樹氏が司会を務め,「放射線認定機構・専門技師制度を考える」をテーマに,4題の講演が行われた。
1題目は,「日本放射線技師会が提案する認定技師・認定機構について」と題し,技師会常務理事の松本 貴氏が講演した。松本氏は,技師会の生涯教育・学習システムと,その達成度により認可される同会の技師格(ベーシック,アドバンスト,シニア,マスター)および認定技師制度を解説。技師格については,名称変更などの制度改定が求められているとした。そして,認定基準の統一化などを図るため,共同評価認定機構(仮称)を設立する構想について説明した。理想とする認定機構は,技術学会,技師会,日本医学放射線学会,そして識者や一般団体などから構成され,従来の認定機構は部会となると述べた。
2題目は,「看護師の認定制度について」と題し,香川大学医学部の内藤直子氏が講演し,1996年から始まったわが国の専門看護師認定制度の現状について解説した。看護師の資格認定制度は,すべて日本看護協会が認定しており,専門看護師(CNS),認定看護師(CN),認定看護管理者(CNA)の3つのランクに分けられる。いずれも厳しい教育課程と実務経験を経て認定されるが,特に医療機関での広告が可能なCNSは,約135万人の看護師のうちわずか612名にすぎないという。今後はさらに,上級看護師(NP)や特定看護師(仮称)の認定が課題になると述べた。
3題目は,技術学会理事でもある大阪大学医学部附属病院の土井 司氏が,「放射線技術学会が進めてきた専門技師制度の変遷と問題点」をテーマに講演した。土井氏は,技術学会は独自の専門技師制度を持たず,関連学会と共同で認定機構を設立してきた経緯を解説。認定制度は教育の一環であるとして,標準的レベルアップをめざし,スキルアップのために教育制度や学術大会の改革,論文化の推進を行っていることを説明した。
最後に,技術学会の前代表理事である小寺吉衞氏(名古屋大学医学部保健学科)が,「学会が期待する認定機構の将来」を講演。小寺氏は,認定機構における学会としての役割と,めざすべき診療放射線技師教育について述べ,4年制大学への教育の一本化,技師会との協力体制の確立や国際化など,学会が検討・対応していくべきことについて述べた。
総合討論では,シンポジウムの講演者4名と,大西氏が登壇。会場からの質問や意見に対し,それぞれの立場からの回答や助言がなされ,共同評価認定機構の可能性や方向性,課題について有意義な議論が行われた。 |