(財)医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)は,医療情報の安全管理のための「医療情報システム監査人試験制度」を創設し,5月に第1回目の試験を実施する。それに先立ち,2011年2月23日(水)に,富士ソフト・アキバプラザ(東京都千代田区)で,新制度の説明会を開催した。
現在,地域医療再生基金がスタートし地域医療連携システムの導入が進んでいたり,政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の「新しい情報通信技術戦略」に「どこでもMY病院」構想やシームレスな地域連携医療が盛り込まれ,今後の医療分野での高度なIT活用が広まっていくことが予想される。また,クラウド技術も登場し,医療情報システムのASP・SaaSでの利用が進んでいる。厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」など,行政からは医療情報に関連するガイドラインが設けられており,医療機関はこれらを順守しながら,医療情報システムを安全に管理していくことが求められている。こうした状況を受けてMEDIS-DCが創設した試験制度は,医療情報システムの運用を定期的に確認し,改善していくための監査能力を持つ人材を育成することを目的としている。
試験の受付は,2011年2月23日(水)から4月11日(月)まで。第1回目の試験は5月22日(日)で,2回目は11月に実施の予定としている。試験内容は,(1)医療情報システム,(2)監査,(3)医療情報システムの安全管理(法律・ガイドライン)などに関する知識が40問ずつで,試験時間は各50分となっている。また,受験料は9000円である。
説明会では,MEDIS-DC理事長の遠藤 明氏が,冒頭に試験制度のねらいについて述べた後,来賓の経済産業省商務情報政策局医療・福祉機器産業室室長の竹上嗣郎氏と総務省情報流通行政局情報流通振興課情報流通高度化推進室室長の吉田恭子氏が挨拶した。
続いて,厚生労働省医政局政策医療課医療技術情報推進室室長の山本 要氏が,「医療におけるICT活用の現状と課題」と題して講演した。山本 要氏は,厚生労働省が取り組んだ医療分野のIT化について,情報連携のための標準化,安全な情報連携のための基盤整備,情報の共有化と連携の推進,統計情報の疫学的活用,個人による健康情報の活用の5つの項目に分けて解説した。この後,東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授の山本隆一氏が,「医療情報システムの安全管理における監査の重要性」をテーマに講演した。山本隆一氏は,「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の策定の経緯と,毎年出されている改訂版について,改訂のポイントを説明した。
これらの講演の後,MEDIS-DC医療情報安全管理推進部部長の相澤直行氏が,試験制度の解説を行った。この中では,試験の例題が示されたほか,参考書も紹介された。また,試験制度と連動する形で4月に設立される予定の一般社団法人医療情報安全管理監査人協会(iMISCA)が認定する,公認医療情報システム監査人補(MISCA補)と公認医療情報システム監査人(MISCA)についても説明があった。
当日は,企業関係者129名,医療機関関係者18名など,160名が参加。会場内は満席になるなど,試験制度への関心の高さがうかがえた。 |