(株)島津製作所は2月10日(木),同社三条工場研修センター(京都市中京区)において,「第88回レントゲン祭・記念講演会」を開催した。レントゲン祭はX線を発見したレントゲン博士の偉業をたたえ,X線技術の発展に向け決意を新たにするために同社が毎年開催しているものである。
式典ではまず,同社取締役医用機器事業部長の鈴木 悟氏が式辞を述べた。同社は2003年に,世界初の直接変換方式FPD搭載のX線装置“safire”を市場に投入。現在まで,全世界で1000台を超えるsafireが稼働している。鈴木氏は式辞の中で,safireの特長である高精細画像と,培ってきた画像処理技術をもとに,新たな臨床的価値を付加すべく,“トモシンセシス”や“スロット撮影”などの先進アプリケーションの開発に注力していると述べた。続いて,代表取締役社長の中本 晃氏による祭詞・献花が行われた。
記念講演では,同社の葛西 章氏(医用機器事業部マーケティング部)が,「X線TV装置用アプリケーションの実用化〜トモシンセシス,スロット撮影の応用〜」のテーマで講演した。同氏は最初に,トモシンセシス技術の特徴と臨床応用のトライアルを開発の歴史を含めて紹介した。特に,胸部検診における単純X線との比較で,トモシンセシスが肺野内結節に対する感度と特異度が高いことから,検査法として高い有用性を示しているとした。さらに,トモシンセシスの特長として,1回の撮影で多断面が取れること,空間分解能が高く金属性アーチファクトが少ないこと,低被ばく(CTの1/10程度)であること,などを紹介した。また,スロット撮影の特長について,従来法(CR)の約1/2以下の低被ばくで立位・臥位ともに最大140cmの撮影が可能,歪みが少なく,高精度計測に対応し,つなぎ目のない長尺画像を撮ることができるとした。
次に,“人工関節”と“スポーツ整形”の専門施設として2010年3月に開院した苑田会人工関節センター病院(東京都足立区)の杉本和隆院長が,「整形外科と画像診断〜トモシンセシス,スロット撮影のインパクト〜」をテーマに講演した。人工関節置換術で著名な杉本院長は,新病院開設の準備段階でトモシンセシス技術を知り,その高い有用性を認めて,当初予定していたCT装置の導入を取り止めたと述べた。さらに同氏は,トモシンセシスのインパクトとして,14症例を示してその有用性を紹介した。またスロット撮影では,従来の長尺撮影との比較で,画像の歪みのないことと精度の高さを強調した。そして,両技術の経済的メリットと今後への期待を述べて講演を終了した。 |