(社)日本画像医療システム工業会(JIRA)は2011年1月12日(水),加藤久豊会長(富士フイルムメディカル)による年頭所感発表会をKKRホテル(東京都千代田区)にて開催した。
加藤会長は冒頭,医療に関する行政の動向や医療機器業界の現状を踏まえた所感を次のように述べた。
「日本は依然として各分野において変革の真っただ中にあり,その波は,医療機器を取り巻くイノベーションの進展や社会環境の変化として,医療および医療機器産業にも確実に押し寄せている。特にイノベーションに関して言えば,画像診断の世界ではIT,ソフトウエアといった画像医療ITの進歩・進展が大きな影響力を持っている。また,医療機器を取り巻く社会環境の変化については,新興国の医療への貢献と先進諸国におけるシステム統合という2つの側面を持っており,JIRAとしては,これらを昨2010年来重要な課題として取り組んできている。
また,2010年6月に閣議決定された新成長戦略で”ライフ・イノベーションによる健康大国戦略”が示され,”医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出”が謳われたことで,医療関連産業が日本の成長分野として位置づけられたことは大いに期待が持てる。さらに,”成長を支えるプラットフォーム”として挙げられた”科学・技術・情報通信立国戦略”の中に,医療にかかわる IT 戦略が組み込まれたことを高く評価し,JIRAとして大きく期待するとともに,“新成長戦略”の達成に向けて強力にサポートしていきたい。
円高やリーマンショックからの立ち直りは十分とは言えないものの,JIRAの自主統計の国内市場推移を見ると,2009年の後半〜2010年初めにかけて拡大傾向にあり,これは診療報酬のプラス改定と補正予算による活性化が背景にあるものと思われる。画像医療システム産業の成長のためには,画像診断モダリティのさらなる進化,IT活用によるイノベーティブな画像医療商品の拡充,そして,これらによる国内市場の活性化と海外市場への展開・拡大が鍵を握ると考えている。特に,画像医療ITの適正な評価と規制,画像医療ITの産業としての成長が急務である」
JIRAでは昨年来,「JIRA将来構想プロジェクト」によって,“画像医療システム産業の新ダイナミズムの形成”に向けた4つのアクションプランのもとに活動してきており,その内の1つ「組織の見直しと最適化」については,昨年中に完了している。加藤会長は,今年は,残る3つの「迅速な意思決定の実現」,「産業育成と適性評価のための行政への施策提言と連携強化」,「画像医療IT産業の成長促進」を確実に実行し,医療機器産業の発展と国民のQOL向上に貢献できるよう活動していくと抱負を述べた。
JIRAの2011年の重点活動方針の概要を以下にまとめる。
1 画像医療システム産業の成長促進
(1)安全・安心への取り組みと規制への適切な対応
長期間継続使用中の装置に対する安全点検と定期的な保守管理について,啓発活動や診療報酬による裏づけを含めた対応など,その向上に向けた取り組みを強化し,また,各X線発生装置の適性線量での稼働のため,ユーザーへ日常点検と定期点検のための情報提供することで,安全性の確保に努める。また,医療用アプリケーションソフトウエアの医療機器化や,CAD(コンピュータ支援検出)のガイドライン策定を,行政,関連団体と連携しながら取り組んでいく。
(2)経済性・有用性の適性評価
1)「保守維持管理コスト」の明確化・明文化,および「医療機器安全管理料」の適用拡大,2)デジタル撮影の検像にかかわる「画像精度管理料」の新設,3)CT,MRIの「断層撮影料」における新たな評価体系としての「断層撮影料」の基礎点数+加算評価の3点について,行政などに提案をしていく。また,医療技術産業コンソーシアム(METIS)においても,医療機器の適正評価についての議論が行われており,この活動とも連携していく。
(3)企業振興への取り組み
会員の7割を中小企業が占め,また IT を扱う会員が半数を超える状況になったことを受け,企業振興委員会を発足。そこに「企業経営」「関連法規・規制に関する研修」「関連学会などとの学術連携」「ITベンチャー企業の振興」などに関する専門の委員会を構成して活動を開始している。本年はこの活動を確実に定着化し,会員参加型の運営を通して,要望・意見の集約・共有化を図り,行政への提案活動につなげる。
2 JIRA基盤活動の強化
(1)グローバル市場を視野に入れた国際活動
医療にかかわる技術基準や仕組みをグローバルにハーモナイズ(整合)し,中国・韓国をはじめとした新興国市場でのビジネス拡大をめざす。また,国際展示によるプレゼンスの向上や,海外への情報発信の中心的役割を担う英文ホームページの拡充を図る。
(2)標準化活動
今年の重要な課題として,1)IEC安全規格の通則(IEC60601-1)3版への移行対応,2)急速に拡大する「画像医療ITシステム分野」への対応,3)日本の優位な技術である重粒子線治療装置の国際標準化の3点について,対応していく。
(3)施策提言と連携活動
行政への施策提言を専任で推進する組織として新設した「産業戦略室」で,タイムリーに調査書や提言書をとりまとめ,行政との定期的な会合などを通じて,産学の関連団体とも連携した提言活動を行っていく。また,「画像医療IT産業推進ワーキンググループ」を設置し,画像医療IT産業のビジョンづくりや,新成長戦略でJIRAに影響が大きいと思われるテーマ(遠隔医療,医療データの二次利用,どこでもMY病院,シームレスな医療連携など)に対する検討と課題の具体化を行い,日本医療機器産業連合会(医機連)などとも連動して,行政への提言をまとめていく。 |