第38回日本磁気共鳴医学会大会が9月30日(木)〜10月2日(土)の3日間,巨瀬勝美大会長(筑波大学大学院数理物質科学研究科電子物理工学専攻教授)のもと,つくば国際会議場にて開催された。テーマは“MR 2010―「つくば」から”。本大会では,4題のシンポジウムに加え,今年がfMRIの基本原理であるBOLD効果の発見から20年という節目の年であることから,それを記念し,BOLD効果の発見者である小川誠二氏(元・AT&Tベル研究所,小川脳機能研究所)の特別講演「脳機能イメージング20周年記念講演―fMRIの発展をふりかえる」が行われた。また,新しい試みとして,特別セッション「ISMRM必勝法―抄録採点のポイントと採択される抄録の書き方」が設けられた。さらに,23題の教育講演については,会場を移動することなく連続して聴講できるよう,連日同じ会場で発表が行われたほか,一般演題は514題という多数の応募があり,53題の口演と33のポスターセッションが設けられ,活発な議論が交わされた。
1日目には,午後から2つのシンポジウムが行われた。シンポジウムT「関節MRIのコツと最先端技術」は,新津 守氏(首都大学東京健康福祉学部放射線学科)が座長を務め,4題の発表が行われた。関節軟骨の評価に有用な手法として,プロテオグリカンやコラーゲン,関節軟骨の組成含有水分をターゲットとしたdGEMRIC法,T2マッピング,T1 rhoマッピングなどの撮像技術について報告されたほか,関節軟骨の深層と石灰化層の描出に有用なultra-short TE(μTE)画像が紹介された。また,関節MRIを撮像する際の技術的な工夫が,上肢,下肢に分けて診療放射線技師の演者からそれぞれ紹介された。
● 特別講演「脳機能イメージング20周年記念講演―fMRIの発展をふりかえる」 |
小川誠二氏 |
● シンポジウムT 「関節MRIのコツと最先端技術」 |
座長:新津 守氏
(首都大学東京) |
西井 孝氏
(大阪大学大学院) |
田渕 隆氏
(メディカルサテライト
八重洲クリニック) |
青山信和氏
(神戸大学医学部附属病院) |
藤井正彦氏
(神戸大学大学院) |
渡辺淳也氏
(帝京大学ちば総合
医療センター)
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シンポジウムUでは,高原太郎氏(東海大学工学部医用生体工学科)が座長を務め,「Body Diffusion:これまでの進化と今後の課題」と題して,7題の発表が行われた。Body Diffusionは,日本ではその有用性が認知され,多くの施設で用いられているが,解決すべき課題も残されている。そこで,本シンポジウムでは,“歪みの補正”,“心拍動と呼吸運動による影響の解析と改善”,“ADCによらない解析方法の模索”,およびlow b valueの臨床応用などを取り上げて,Body Diffusionの現状やこれらの課題の解決策が報告された。なお,今回は海外からの演者による英語での発表が含まれていたため,口演を英語で聴講する貴重な機会となるよう,同時通訳を行わず,2つのスクリーンに英語と日本語のスライドを同時に表示するという初めての試みが行われた。
● シンポジウムU 「Body Diffusion:これまでの進化と今後の課題」 |
座長:高原太郎氏(東海大学) |
次回の第39回日本磁気共鳴医学会大会は,2011年9月29日(木)〜10月1日(土)の3日間,興梠征典大会長(産業医科大学放射線科学教室)のもと,リーガロイヤルホテル小倉にて開催される予定である。 |