核医学検査に最も多く使用されているテクネチウム製剤(Tc-99m)の原料・親核種であるモリブデン(Mo-99)は,わが国では100%海外からの輸入に依存している。現在,世界でモリブデンを製造している原子炉は,カナダ,オランダ,ベルギー,フランス,南アフリカ,オーストラリアの6か国のみだが,日本は従来,輸入の70%をカナダの原子炉で製造されるモリブデンが占めてきた。その最大の供給元であるカナダの原子炉がたびたび停止し,世界的なモリブデンの供給不足が深刻な問題となっている。オランダなどほかの原子炉の緊急増産によってなんとか供給を保つ努力がなされてきたが,根本的な解決が求められる。
(社)日本核医学会をはじめ関係団体からは,この問題について議論できる場を作ってほしいという要望が出されていたが,原子力委員会の報告書「原子力政策大綱に示している放射線利用に関する取組の基本的考え方に関する評価」(平成22年6月1日)において,関係行政機関が産業界・研究開発機関等の関係機関と緊密に連携・協力しつつ,国としての対応について検討を進めていくことが必要,との提言がなされた。これを受けて,わが国におけるモリブデン-99/テクネチウム-99m(テクネチウム製剤)の安定供給を図るために,国内の関係府省,研究開発機関,民間事業者等が官民合同で検討会を設置し,その第1回会合が2010年10月6日(水),霞ヶ関の中央合同庁舎4号館にて開催された。議事内容は,(1) 検討会設置について,(2) テクネチウム製剤の需要・供給の現状と今後の見通し等について,(3) 安定供給のために考えられる方策について,となっている。検討会の議事概要は後日,内閣府のWebサイトにおいて公開される。 |