(株)フィリップスエレクトロニクスジャパンは,小児MRIフィリップスユーザーズミーティング(Children mr Users TEchnical meeting:CUTE)を,9月11日(土),東京都立小児総合医療センター(府中市)で開催した。
CUTEは,西村 玄氏(東京都立小児総合医療センター放射線科 部長)を発起人として,小児MRIの検査や撮像のテクニックなど,臨床現場に有意義な情報を交換する場として今年から発足した。第1回のミーティングとなる今回は,「頭部&脊髄」をテーマに,小児MRIの臨床経験や取り組みについての各小児医療施設からの報告,フィリップスからの技術講演,読影医の視点から小児MRIのトピックスを取り上げた特別講演,施設見学,フィルムディスカッションが行われた。
冒頭に挨拶した発起人の西村氏は「小児専門施設では,限られた時間の中で決められたシークエンスで撮影を行うのが精一杯というのが現状だが,新しいMRIのシークエンスはさまざまなポテンシャルを持っている。小児MRIを行う専門施設が現状や課題を共有し,最新の撮像法やシーケンスを学ぶことで,明日からの診療に役立てられるような場になることを期待している」とコメントした。
施設紹介では,東京都立小児総合医療センター(以下都立小児),埼玉県立小児医療センター(同埼玉小児),長野県立こども病院(同長野小児),群馬県立小児医療センター(同群馬小児)から,小児MRI検査の現状と課題について,検査件数や撮像シーケンスなどのデータから,入眠管理の方法や固定具の工夫まで具体的,実践的な報告があった。
報告の中では,小児のMRI検査で課題となる安静が難しい子供に対して,鎮静までの手順や体動を抑える固定具など検査での工夫が紹介された。鎮静の工夫では,都立小児ではCT,MRIと一般撮影の廊下を分けて,照明を暗くし静かなエリアを設けた。埼玉小児では,入眠には回復室3室を使用し,MRIの脱着式寝台を使ってそのまま検査を行うことで移動時に起きてしまうことを防いでいる。また,安静な検査のためには,家族の検査への理解が不可欠であり,説明を十分に行い前日に寝不足を徹底すること,検査の順番を工夫し状況によって順番を入れ替えるなどの柔軟な対応を行っている。撮影時の工夫としては,頭部の撮影に未熟児用保育器を使用したり(埼玉小児),体位を変えることなく頭部と脊椎の検査が可能なポリカーボネイト製の特注固定具を使っている(群馬小児)ことなどが紹介された。また,安全管理では検査前に検査中にT2*画像の検査中に画像にアーチファクトが発生したことで,おもちゃの磁石を誤飲していることがわかったケースなどが報告され,小児検査の難しさ,大変さを感じさせた。
技術講演では,フィリップス同社のMRアプリケーションの武村濃氏が「小児領域に対するフィリップスの取り組み」を講演した。武村氏は,小児MRIで工夫が必要なポイントとして,受信コイル,ポジショニングや補助具,スキャン技術やテクニック,周辺技術・機器を挙げ,それらに対するフィリップスの取り組みを紹介した。フィリップスでは,小児専用コイルを用意しており,その中から8チャンネルのSENSE Body/Cardiac CoilとSENSE Head/Spine Coilを紹介。Head/Spine Coilでは,患者を動かすことなく頭と全脊椎を検査することができることを説明した。さらに,これらのコイルで可能になるフィリップスの高速撮像法であるSENSEについて,小児領域での有用性を述べた。また,検査時の騒音をカットするAcoustic Hood,検査のワークフローを向上するSmartExam,ライティング事業部と共同開発した検査環境“Ambient Experience”などの技術や製品を紹介した。
特別講演では,藤田和俊氏(東京都立小児総合医療センター)が「小児頭部&脊髄に関するポイント(読影医の視点から)」と題して,微少出血の検出に有用性が高いとされる磁化率強調画像の小児MRIにおける臨床について,小児脳における変化や応用など臨床画像を含めて講演した。磁化率強調画像は,組織の酸素消費の状態や脳表血管分布の把握に有効であり,今後の発展に期待する画像シークエンスだとまとめた。
フィリップスでは,今後,取り上げる領域を広げながら,CUTEを年1回開催していく予定だ。 |