第4回SCCT(Society of Cardiovascular Computed Tomography)研究会が,9月4日(土),東京コンファレンスセンター品川(東京都港区)で開催された。共催は,SCCT Japan International Regional Committee(日本心臓CT研究会)と第一三共(株)。
日本心臓CT研究会は,アメリカのSCCTの日本支部として心臓血管CTの適切な普及と教育,啓発活動を行う目的で2006年に設立され,2007年から毎年9月に研究会を開催している。代表幹事の栗林幸夫氏(慶應義塾大学医学部 放射線診断科教授)は,開会の挨拶で今回のプログラムの内容を紹介し,心臓CTに携わる放射線科医,循環器内科医,診療放射線技師が意見を交換して知識を深める場にしてほしいとコメントした。
続いて行われたシンポジウムT「冠動脈狭窄をどう読み,どう対処するか:心臓CT 検査の実際から治療への応用まで」では,画像を作成し提供する診療放射線技師,診断する放射線科医,治療を行う循環器内科医それぞれの立場から,冠動脈狭窄を対象に心臓CTの撮影から読影,治療までの最新の取り組みと課題についての報告があった。撮影・画像の作成では,狭窄の評価,プラークの性状評価のためにAngiographic View,CPR,Cross-sectional imageを作成すること,撮影の際には低被ばくと造影剤の削減に留意し,治療を見据えた画像の提供も必要であることなどがポイントとして挙げられた。読影では,心臓読影の手順とチェックポイント,バンディングアーチファクトに注意し,石灰化病変へのチャレンジが診断能を高めることなどが述べられた。治療への活用では,心臓CTはボリュームデータ解析による,PCIシミュレーションや治療方針決定に貢献しているが,冠動脈疾患の治療法選択のための指標となるデータを提供することが望まれるとした。会場からコメントした同研究会顧問の児玉和久氏(尼崎中央病院心臓血管センター長)は,現在の心臓CTの画像情報は従来ゴールデンスタンダードだった血管造影の影響を受けているとして,「CTは,予後まで含めた“治療”のための新しい情報を提供することを目標としてほしい」と問題提起した。
午後にはシンポジウムU「心臓CT ガイドラインをどう活かすか」が行われた。日本循環器学会の“冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン”,ASCI(Asian Society of Cardiovascular Imaging)の心臓CTガイドライン,そして昨年,SCCTのガイドラインを和訳して発表した“SCCT心臓CTガイドライン”について概要とポイントが説明され,実際の診療にどのように生かすかをテーマにディスカッションが行われた。その中で,心臓CTやMRIの領域では技術の進歩が早くエビデンスの確立が間に合わないこと,必ずしも施設間で検査の質が担保されないことなどが問題点として指摘され,ガイドラインを短い周期で改定する必要があるとされた。また,冠動脈造影を置き換えることが期待されて診療報酬化された冠動脈CTだが,検査件数の増加(2007年約15万件から2008年約22万件)に比べて,冠動脈造影が減っていないこと(同45万7052件から45万9874件)から,冠動脈CTの適応を検討することが必要という議論があった。
8題の一般演題に続いて行われた「SCCT board member からの報告」は,同研究会のボードメンバーからの研究内容を発表する講演として,今回初めて企画された。最初に小山靖史氏(桜橋渡辺病院心臓・血管センター画像診断科)が「e-learningによる心臓CT のスキルアップ」として,SCCT Japan IRC 教育委員会が心臓CTの知識の普及とスキルアップを目的に構築したe-learningシステムについて,大阪からインターネットを通じて音声とスライドによる“遠隔講演”を行った。650症例が問題としてストックされており,SCCT研究会の会員を対象にサービスを提供する予定とのことだ。
続いて,安野泰史氏(藤田保健衛生大学医療科学部放射線学科)が「心臓CT 画像の撮影時間・時間分解能(心位相分解能)は?」と題して,Dual Source CTやArea Detector CTの登場と心臓CTのスキャン方法の変化で複雑になっている時間要素(撮影時間,時間分解能)について,動態ファントムを使った解析結果を基にデータを紹介した。
招待講演は,Tony DeFrance氏(Clinical Associate Professor at Stanford Medical School)が,「CT Stress Myocardial Perfusion - Where are we」を,Frank John Rybicki氏(Harvard Medical School Brigham and Women's Hospital, Department of Radiology)が,「Novel methods for evaluation of coronary CT images」を行った。
DeFrance氏は,CTによる負荷心筋パーフュージョンの現状と課題について講演した。PCIの治療効果判定には,狭窄や石灰化などの解剖学的情報と心筋虚血評価情報を組み合わせて判断することが重要だが,CTでは心臓の高速撮影と3Dワークステーションによるボリュームデータの解析によって,冠動脈CTAと心筋パーフュージョン評価(CTP)が可能になりつつある。DeFrance氏は,自らのAquilion ONEを使った評価を含めて,CTPと核医学や血管造影との比較を行ったスタディの結果を紹介し,これからのCTによる心筋負荷パーフュージョンの可能性について「心臓CTが解剖,機能,灌流,バイアビリティを見るワンストップショップ」となる期待を述べた。
次回(第5回研究会)は,2011年9月10日(土)に東京コンファレンスセンター品川で開催の予定だ。 |