パッケージソフトウエアの開発・販売を手がけるシンコム・システムズ・ジャパン(株)は9月1日(水),アップルストア銀座(東京都中央区)において,「Cincom Healthcare Night in Apple Store, Ginza」と題したセミナーを開催した。同社では今年7月にもアップルストア銀座においてヘルスケア分野における「iPhone」,「iPad」などのデバイスの活用をテーマにしたセミナーを実施しており,今回は2回目となる。今年発売されたApple社のiPadが医療や介護,福祉,健康などのヘルスケア分野において注目を集めていることから,会場は満席となるほど好評であった。
セミナーに先立ち,同社の代表取締役マネージング・ディレクターの石村弘子氏が挨拶した。石村氏は,iPhone,iPadの登場により新しい何かが生まれると期待されているとした上で,今回のセミナーがそのヒントになってほしいと参加者に向けてメッセージを述べた。
この後,(株)FIELD OF DREAMS代表取締役の山羽教文氏による基調講演が行われた。演題は「健康指導から健康教育へ―行動変容理論に基づくコーチングのヘルスケアへの展開」。山羽氏はまず,特定健診・保健指導の完了率が厚生労働省の目標値に届いていないという新聞報道を示し,その要因として,現状の保健指導が後ろ向き,かつ対処療法的で,本人のやる気を無視したアプローチとなっていると説明。その上で,前向きで,行動形成を支援し,QOLに対する自立力を育成するような教育的アプローチである「健康教育型アプローチ」にすべきであると述べた。そして,これからの健康対策として,「保健指導から健康教育へ」と「指導からコーチングへ」という2点をキーワードに挙げた。さらに山羽氏は,健康教育において重要となる行動変容理論についてステージモデルを示して解説を行った。また,この行動変容理論に基づくコーチングにITを活用した事例として,シンコム・システムズ・ジャパンが開発したiPadによる禁煙指導システムについて,デモンストレーションを行った。山羽氏は,まとめとして健康教育にiPadなどを活用することで,コーチングプロセスのシステム化,専門知識の体系化ができ,さらに継続支援ツールとして大きな効果があると述べた。
基調講演に続き,(株)デンショクの古門正明氏とUNIKAIHATSU SOFTWARE Pvt. Ltd.のアミット・アッシャ氏が,「医療関係者向け医薬品情報検索アプリ『薬品情報』のご紹介」と題したプレゼンテーションを行った。両社が手がけるのは,iPhone,iPadのアプリケーションとして「院内医薬品集」を作成し,医薬品情報を医療機関内のどこからでも閲覧できるようにするというもの。従来,医療機関では紙媒体で院内医薬品集を作成していたが,情報更新の頻度が低い,情報配信量に限りがある,過去の情報との比較ができないなどの問題があった。しかし,iPhone,iPadの「院内医薬品集」は,これらの問題を解決し,必要なときに素早くデータにアクセスできる。さらに,院内のカルテや処方,薬品情報があるデータベースサーバを活用することで,iPhone, iPadだけでなく,イントラネットでの利用や紙媒体での出力など,幅広くデータを生かすことも可能となる。
続いて,「シンコム・ヘルスケア・ソリューションのご紹介」と題し,石村氏がプレゼンテーションを行った。シンコム・システムズは1968年に設立された。米国オハイオ州シンシナティに本社があり,世界18か国に直営の事業所を持つ。ヘルスケア分野では,米国Health Advocate社のクラウド型の健康支援業務,米国Amedisys社の投薬指導や高齢者向け疾病管理を行うクラウドコールセンターシステムなどを手がけている。日本国内では,こうした海外で成功したフレームワークを用いて,保健指導システム,DPC分析システム,病院未収金管理システムを提供している。プレゼンテーションの中では,iPadを保健指導のための指導者端末として使用するデモンストレーションも行われた。同社では,iPadを指導者用の端末とすることについて,PCに比べ起動が速く操作性に優れ,持ち運びにも便利であり,対象者とのコミュニケーションツールとしても適していると,メリットを挙げている。
これらのプレゼンテーション後にはアップルストア銀座からiPadについての紹介も行われ,盛況のうちにセミナーは終了した。医療などのヘルスケア分野のIT化は,ほかの産業に比べ遅れていると指摘されている。それだけにiPhoneやiPadといった新しいデバイスの登場により,ヘルスケア分野のIT普及に弾みがつくことが期待される。その点からも有意義なセミナーとなったと言えよう。 |