株式会社AZEは8月28日(土),本社のある丸の内トラストタワーN館において,「第1回AZE肺研究会」を開催した。CTの多列化,高機能化により,幅広い領域でCT画像が活用されるようになり,同時に,医用画像処理ワークステーションに対する高精度な画像処理・解析への要望がますます高まっている。特に近年,肺野領域においては,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の罹患率,死亡率が急速に増加しており,ワークステーションは重要な診断補助ツールと位置付けられている。こうした状況の中,AZE社はいち早く北海道大学呼吸器内科との共同研究によって肺解析ソフトウェアを開発し,AZE VirtualPlace(VP)に搭載しているが,より臨床ニーズに合った新機能の開発とソフトウェアのブラッシュアップをめざし,肺野領域および画像診断の専門医らとの意見交換の場として,本研究会を開催した。
開会にあたり,代表取締役社長の畦元将吾氏は,より優れた新機能の開発に向けて活発な意見交換をお願いしたいと挨拶。同時に,矢野経済研究所の調査結果として,2010年度の3Dワークステーションの台数別シェアが第1位になる見込みであると発表した。
続いて,同社アプリケーション担当者により,肺解析ソフトウェアの機能が紹介された。肺結節をターゲットとした機能では,抽出した結節の体積やサイズ計測,ヒストグラム表示,結節サイズの定量的・定性的・視覚的把握,組成および形状確認が可能なほか,データベース登録による結節の経過観察比較,レポート出力などが可能である。また,3D気道解析機能では,気道および気管支の構造や各経路の内視鏡像の自動構築,気道病変と気腫性病変の定量的評価,データベース登録による過去比較も行うことができる。こうした特長を踏まえた上で,実際の臨床使用経験について,2題の講演が行われた。
医療法人社団憲仁会牧田病院院長の牧田比呂仁氏は「肺領域分野における現状と今後の動向―COPDにおけるVPの使用経験」と題して講演した。CT画像を用いたCOPDにおける末梢気道病変の評価法について検証した上で,肺解析ソフトウェアなどを用いて気道病変と気腫病変との関係や,気管支拡張薬の気道に対する影響について検討。その結果,COPD患者においては,気管支拡張薬の効果発現部位は近位(区域気管支)ではなく遠位分枝にあり,3D気道解析による気道内腔面積の測定は,臨床的に有意な指標となることが明らかになったと述べた。
神戸大学医学部附属病院放射線部長・特命准教授の大野良治氏は,「MDCTにおけるCOPD評価の現状と将来展望」と題して講演した。はじめに,COPDの定義や原因,病態生理,重症度分類,CTによる形態および機能評価法について紹介。中でも機能評価法については,現状の肺解析ソフトウェアで評価可能な肺胞の低吸収域(low attenuation area:LAA)と,気道内腔および気道壁の評価のポイントについて詳述した。さらに,肺解析ソフトウェアの有用性として,MDCTデータを用いて簡便に定量評価が可能である点を挙げた上で,今後の方向性として,肺がんや肺容積減少手術の際の局所肺機能評価などにも役立つよう,肺区域などの解剖をベースにした新たな評価法の開発をめざすべきとの見解を示した。
講演後は,同社開発部より,現在の肺解析ソフトウェアの開発状況が報告され,その後,参加者全員による活発な意見交換が行われた。参加した医師からは臨床に基づくさまざまな提案がなされ,同社では今後,それらの実現に向け,開発を加速させていく予定である。 |