日本HL7協会は7月16日(金),東京ファッションタウン(東京都江東区)において,「第35回HL7セミナー」を開催した。今回のセミナーは,日本の医療情報システムの標準規格として,厚生労働省が今年3月31日付けで通知した「保健医療情報分野の標準規格として認めるべき規格について」を受けて,この通知に標準規格として明記されたHL7 CDAに基づく「診療情報提供書(電子紹介状)」やHL7 Ver.2.5に基づいた「JAHIS臨床検査データ交換規約」など,HL7の現状についての解説やデモンストレーションが行われた。
まず,日本HL7協会会長の木村通男氏(浜松医科大学)が,「厚生労働省標準規格としてのHL7」をテーマにして講演した。木村氏は,最初に「保険医療情報分野の標準規格として認めるべき規格について」の解説をした。この厚生労働省の通知は,同省が開催してきた保健医療情報標準化会議の提言を踏まえている。標準規格となったのは,医療情報標準化推進協議会(HELICS協議会)が「医療情報標準化指針」として採択したもの。現在は,「医薬品HOTコードマスター」,「ICD10対応標準病名マスター」,「患者診療情報提供書及び電子診療データ提供書(患者への情報提供)」,「診療情報提供書(電子紹介状)」,「IHE統合プロファイル『可搬型医用画像』およびその運用指針」,「保健医療情報―医療波形フォーマット―第92001部:符号化規則」,「医療におけるデジタル画像と通信(DICOM)」,「JAHIS臨床検査データ交換規約」となっている。厚生労働省では,規格の採用を強制しないとしているが,今後同省の補助金事業などの施策においては,本規格を実装したシステムを採用していることが条件となるなど,事実上の強制力を持つ。木村氏は,その留意点について解説を行った。さらに,木村氏は,今年から本格的にスタートした地域医療再生計画における有識者会議から提言を紹介し,「患者診療情報提供書及び電子診療データ提供書」の採用など,標準化の重要性について述べた。
続いて,「HL7 CDA解説:診療情報提供書(電子紹介状)を作ってみよう」と題し,同協会CDA WGリーダの平井正明氏〔日本光電(株)〕が講演した。平井氏は,CDAの定義や諸外国での実態,歴史,構成について解説したほか,CDAを作成する言語であるXMLについても,タグの書き方などを説明した。
この後,ベンダーによる「模擬接続性認定テスト」と称したデモンストレーションが行われた。まず,「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX)において作成されるHL7 CDA R2電子紹介状の検証」として,(株)SBS情報システム,(株)シィ・エム・エス,(株)ソフトウェア・サービス,富士通(株)が会場後方に設置された各社のシステムを用いて,診療情報提供書(電子紹介状)CDを作成し,HL7 CDA R2のコンフォーマンス検証を行った。さらに,「経済産業省相互運用性事業(実証実験)のその後」として,日本電気(株),富士通,日本アイ・ビー・エム(株)が参加し,シナリオに沿ったデータのインポート・エクスポートのデモンストレーションが披露された。これは,経済産業省の委託により保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)が2004年から4年間かけて行った相互運用性実証事業の成果や2009年に行ったJAHIS実証実験2009に基づいたもの。処方のオーダ情報が各社のシステム間でスムーズにやりとりされ,参加者には相互接続性の重要性が改めて認識されたセミナーとなった。 |