富士フイルムメディカル(株)は6月19日(土),同本社(港区)において,「FUJIFILMメディカルセミナー2010―新しい3D時代の幕開け」を開催した。3次元画像解析システムボリュームアナライザー「SYNAPSE VINCENT」のユーザーから,3D画像の有用性やSYNAPSE VINCENTの評価などが報告された。
セミナーでは,まず,杏林大学医学部放射線医学教室教授の似鳥俊明氏が座長を務め,「3D画像をどう扱うか?―院内運用と臨床的価値」をテーマに, 4題の講演が行われた。
1題目は,富士フイルム(株)R&D統括本部メディカルシステム開発センターの桝本 潤氏が「SYNAPSE VINCENTの画像処理技術紹介」と題して,SYNAPSE VINCENTの開発コンセプトや搭載されている画像処理技術Image Intelligenceについて説明した。桝本氏はImage Intelligenceの定義を,(1)人が見たり感じたままの世界を,人の視覚や脳に代わって画像として適性に再現すること,(2)人が伝えたい世界を,意図を汲み取り画像として的確に表現することであると説明。その上で,Image Intelligence技術が使用されている骨除去,冠動脈抽出,肝臓抽出アルゴリズムの原理や特長を述べた。
(独)国立がん研究センター中央病院放射線科の井原完有氏は,「3D画像をどう扱うか?―院内運用と臨床的価値」と題して講演した。同院では,今年の4月下旬にSYNAPSE VINCENTを導入し,3D画像を術前のシミュレーションや患者説明に使用していると述べた。また,3D画像作成について,現在は年間件数や科別・部位別の件数が把握できないとして,今後は,3D画像の作成をオーダ化し,データとして実績を残せる運用にしていきたいと展望を述べた。
順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター放射線科の高瀬 誠氏は,「SYNAPSE VINCENTの臨床経験―頭部領域を中心に」と題して講演。高瀬氏は,SYNAPSE VINCENTの自動骨除去や自動位置補正機能は精度が高いと評価した。また,自動位置補正機能により,3D-Subtractionや他モダリティとの画像合成が容易にできるようになったと説明した。
杏林大学医学部放射線医学教室の本谷啓太氏は,「3D画像をどう扱うか? 院内運用と臨床的価値―放射線科医の立場から」と題して発表した。本谷氏は, 会場内に設置されたSYNAPSE VINCENTで処理される3D画像をリアルタイムでスクリーンに映しながら,画像処理の流れやポイントを説明した。
この後,特別講演として,「外科医からみた肝臓解剖における3Dの重要性 肝門部の画像解剖」をテーマに,千葉県がんセンター名誉センター長の竜 崇正氏が講演した。竜氏は,3D画像により,生きている人の解剖の情報がわかり,それに沿って術前のシミュレーションを行うことで,安全に手術ができるようになったと説明。また,3D画像で術前の情報をしっかりと理解し,手術のシミュレーションを行うことで,スタッフが共通の認識で手術に臨むことができるとし,3D画像は外科医にとって必須のものであると述べた。 |