第1回「消化管CT研究会」(消化管CT研究会,エーザイ株式会社 共催)が2010年5月29日(土),エーザイ(株)東京コミュニケーションオフィス(東京,飯田橋)にて開催され,110名が参加した(医師50名,診療放射線技師40名,企業関係20名)。わが国における大腸がんの急増を背景に,多列CTを用いる侵襲の少ない消化管CT(CT colonography:CTC)は,注腸X線検査や内視鏡検査を補完しうる(あるいは置き換わりうる)検査法として注目されている。本研究会は,放射線科医,消化器科医,さらには診療放射線技師なども含めた消化管CTに携わる専門家が協力し合い,本領域の活性化と技術向上,診断学の構築などを目的とする。世界に冠たるわが国の消化管診断学を,専門領域を超えたコラボレーションでより発展させ,世界に発信していくとともに,消化管CTの普及につなげることもねらいとしている。
最初に,共催するエーザイ(株)日本事業本部東京エリア東京二部課長の大江幸三氏より挨拶があり,続いて第1部の講演に入った。まず世話人である飯沼 元氏(国立がん研究センター中央病院放射線診断部)から基調講演「消化管CTの現状」が行われた。飯沼氏は本研究会の目的として,CTのみでなく,MRIや内視鏡,病理所見なども含めて,症例検討による診断方法や新しい診断方法の開発における情報交換を行うこと,症例画像のデータベース化,教育システムの構築などを挙げた。検討対象は大腸をはじめ,胃,食道,十二指腸,小腸などで,腫瘍性病変のみならず炎症性疾患も視野に,消化管に関するものすべてを考えているという。新しい診断技術の知識としては,CT colonography,CT gastrography, CT・MR enterographyの検査方法や診断方法の習得を図り,外来診療における応用,消化管スクリーニングへの応用,診療報酬化への活動などの普及活動を進めていくとした。また,7月から開始される予定の国立がん研究センター予防・検診研究センターにおけるCTC検診の詳細についても報告し,前処置用バリウム(伏見製薬所)や前処置用検査食(キューピー),炭酸ガス注入器(メディックサイト)などの開発・薬事申請を進めていることを紹介。CTCの成否は前処置法と腸管拡張法がポイントであることを強調した。
続いて,歌野健一氏(自治医科大学放射線科)による講演1「大腸術前診断におけるCTCの有用性」が行われた。自治医科大学附属病院では,大腸がん手術のほぼ全例に注腸X線検査に代えて術前CTCを実施し(2009年は275件),局在診断能が95%以上という非常に優れた結果を出しているという。また,深達度診断においても一定の基準により高い正診率が得られ,有害事象も極めて少なく安全性は高いとした。患者負担の軽減や医療コストの削減の面から,術前検査としてのCTCは一般化していくと述べた。
講演2は満崎克彦氏(済生会熊本病院健診センター)が「CTCによる大腸がんスクリーニング─現状と課題─」をテーマに報告。CTCの利点は,検査処理能力に優れている,術者の技量に依存しない,診断画像に客観性・再現性がある,デジタル画像のメリットを生かした画像表示,安全性が高いことなどであり,スクリーニング法として大きな可能性があるとした。2009年7月から実際にCTCによるスクリーニングを開始。3.6mSvの低線量撮影で1日3枠を実施している。2010年3月現在,6mm以上のポリープ検出能は,感度83.3%,特異度89.7%,正診率88.6%という結果だが,今後,検診精度の向上と前処置の簡便化が課題だという。消化器科医と放射線科医,そして診療放射線技師のコラボレーションにより,スクリーニングCTCの普及・確立をめざしたいと述べた。
第2部は臨床実例における報告と題して,世話人である山野泰穂氏(秋田赤十字病院消化器病センター)の司会により,三宅基隆氏(神戸大学医学部放射線医学分野,前・国立がん研究センター中央病院)がワークステーションを使ったデモと症例検討会を行った。国立がん研究センター中央病院からの3症例について,フロアから医師2名,技師1名が指名されて読影し,質疑・検討が繰り広げられた。当日はザイオソフト社製WSが使用されたが, CTCの展開像(VGP)や仮想内視鏡+MPR表示,Air Enema像など複数の画像表示を横断的に読影していくことは,慣れが必要かもしれない。質疑の中で,2D画像と3D画像の選択について議論されたが,現状では3D画像を中心に,2DとCADを組み合わせて読影する方向であるとされた。また,CTの分解能などの限界を把握しつつ,何をどこまで診断するのか,目標とする基準が重要という指摘もあった。
次回の第2回消化管CT研究会は12月12日(日),同じ会場にて開催される予定である。 |