富士通(株)は,5月13日(木)と14日(金)の2日間,東京国際フォーラム(千代田区)において,富士通フォーラム2010を開催した。13日午後に行われた医療特別セミナー「第12回 富士通病院経営戦略フォーラム」では,ジャーナリスト・国際医療福祉大学大学院教授の黒岩祐治氏が総合司会を務め,“医療の新しい潮流―これからの医療改定を考える”をテーマに特別講演やパネルディスカッションが行われた。
特別講演は2題行われた。1題目は,国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹氏による,「診療報酬改定と医療の新たなトレンド―メディカルスタッフが支える病院医療」。武藤氏は,勤務医の負担を軽減するための医師事務作業補助者の役割に期待を述べたほか,呼吸ケアチーム加算および栄養サポートチーム加算の概要を説明してチーム医療の必要性などを述べた。また,これからは,スキルミクス(多職種協働)の時代であると述べ,その1例としてナース・プラクティショナー(診療看護師)の業務を紹介した。このほか,地域連携パスに関する診療報酬改定のポイントや2008年度診療報酬改定で回復期リハビリテーション病棟入院料の算定要件に導入された日本版P4P(Pay for Performance)の概要を説明し,2012年の介護報酬改定において,介護サービスの質の評価にP4Pを導入する試みがすでに始まっていると述べた。そして,診療報酬と介護報酬の同時改定が行われる2012年に向けて,地域における医療と介護の連携を進めていかなければいけないとまとめた。
特別講演2題目は,東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学教室主任教授の山口直人氏が「病院の診療の質向上におけるEBM,診療ガイドラインの活用」と題して講演した。山口氏は,EBM(Evidence Based Medicine)に基づき診療方針を決定するためには,医学文献の収集,個々の文献の妥当性の評価,文献で提示された科学的根拠の総合的評価などが必要であり,多忙な医師や他分野の医師が個人で行うことは,時間的および技術的な面から見て難しいことが多いと述べた。そこで,そうした問題を解決する方法として,疾患の専門家や臨床疫学専門家などのチームが作成する診療ガイドラインの活用を薦めた。また,診療ガイドラインを活用した診療の注意点として,診療ガイドラインを参照した上で別の診療を選択する場合にも,患者に診療ガイドラインを提示した上で診療方針に対する同意を得ることが必要だと述べた。このほか,診療情報ガイドラインをインターネットで参照することが可能な,医療情報サービス事業「Mins(マインズ)」を紹介し,必要に応じて電子カルテ画面からすぐにMinsにある目的のガイドラインを参照できるような環境が理想だと話した。
次いで,一條眞琴氏(稲城市立病院院長),河北博文氏(医療法人財団河北総合病院理事長),伊藤隼也氏(医療情報研究所代表),梅村 聡氏(民主党参議院議員)の4名のパネリストによるパネリスト講演が行われた後,総合司会の黒岩氏がコーディネーターを務め,自治体病院の問題点や必要性,地域主権の医療などをテーマにパネルディスカッションが行われた。
【パネルディスカッション】 |
一條眞琴氏
(稲城市立病院院長) |
河北博文氏
(医療法人財団河北総合病院理事長) |
伊藤隼也氏
(医療情報研究所代表) |
梅村 聡氏
(民主党参議院議員) |
パネルディスカッション風景 |
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