血圧計や体重計などパーソナルヘルス領域の標準化を進めているコンティニュア・ヘルス・アライアンス(以下コンティニュア)は,健康機器の相互接続や運用を可能にする「コンティニュア設計ガイドライン第1版」に準拠した健康管理機器の製品化と,それらの機器を導入した事業サービスがスタートしたと発表した。これを受けて,2月17日(水)に記者説明会とガイドライン対応製品を集めた製品展示会を開催した。
コンティニュアは,個人の健康管理や在宅での疾病管理を行う各種測定機器やIT機器の相互接続を可能にし,データマネジメントなどのサービスと連携することでパーソナルヘルスケアの質的向上をめざすNPO法人。2006年に22社で設立されたが,現在は全世界で227社が参加するまでに拡大している。日本企業では,パナソニック(株),(株)NTTデータ,(株)NTTドコモ,オムロンヘルスケア(株),(株)エー・アンド・ディーなどが参加している。
日本での活動は,2006年に日本地域委員会がインテルを中心に6社で発足,2009年2月の「コンティニュア設計ガイドライン第1版」では14社が対応製品の開発を発表した。8月に日本第1号の認証製品(エー・アンド・ディーの体重計,血圧計)が発表されている。今回は,20社を超える企業から製品・サービスの発売,提供が発表された(計画・予定を含む)。
今回,コンティニュア対応製品を導入した事業サービスとして発表されたのは次の通り。
(1) セントケア・ホールディング(株)
訪問看護アセスメント支援ASPシステム
介護サービスを提供するセントケア・ホールディング(以下セントケア)は,医療情報システムの開発を手がけるメディカル・データ・ビジョン(株)と,訪問看護業務を支援するASP対応の訪問看護システム「看護のアイちゃん」を開発し,データ入力用の端末としてコンティニュア規格に対応したパナソニック製ヘルスケア向けタブレット型モバイルPC「タフブックCF-H1」を採用した。血圧や体重などバイタルデータの取り込みをコンティニュア対応機器で行うことで,自動化と省力化を可能にした。同システムは,セントケアの訪問看護ステーション三鷹で稼働している。
(2) (株)エム・オー・エム・テクノロジー
健診施設向け総合健診システム「LANPEX evolution」
エム・オー・エム・テクノロジーは,総合健診システム「LANPEX」をコンティニュア規格に対応させた「LANPEX evolution」を発売する。これまで各種の健康管理機器との接続にコストがかかっていたが,コンティニュア対応にすることで仕様変更のコストを削減することができるという。また,「タフブックCF-H1」を採用して巡回健診システムでもコンティニュア対応機器との相互接続を可能にする。近く同システムの導入施設が稼働する予定という。
(3) 自治体遠隔疾病管理ソリューション
宮城県栗原市(総務省ユビキタスタウン構想推進事業)
総務省が2009年7月に,地域の医療,福祉,防災,産業などの分野でITを活用して安心・安全な街づくりを実現する取り組みを公募し地域情報通信技術利活用推進交付金(「ユビキタスタウン構想推進事業」)で採択された宮城県・栗原市での遠隔疾病管理システムの中で,測定データの転送,管理の規格として採用された。(株)タニタの測定機器を使用し,遠隔ネットワーク(NGN)はNTTグループが提供する。
コンティニュアのプレジデント兼理事長であるリック・クノッセン氏は「日本はパーソナルヘルスにおけるリーダーであり,今後の個人の健康管理の発展で大きな役割を果たしてくれると期待している」と述べた。コンティニュアのボードメンバであるインテル(株)の代表取締役社長・吉田和正氏は「日本のヘルスケア環境の問題点は,高齢化社会,生活習慣病の拡大,医療費の増加であり,これを解決するためにはITを活用するしかない。健康管理の領域での持続的な情報管理の拡大が,やがては医療の領域と統合していくことで,ITに支えられた健康で活力のある社会が構築できると確信している」とコンティニュアへの取り組みの意義を述べた。
また,医療の立場からコンティニュアの取り組みへの期待を,2009年5月にオープンした帝京大学医学部附属病院の病院情報システム(ヘルシーホスピタル)を構築した澤 智博氏(麻酔科学講座 准教授/本部情報システム部部長)が次のように述べた。
「これまでの医療は,疾病が中心で(Disease Oriented),反応的(Reactive)で,断片的(Sporadic)な情報を基にして行われてきたが,これからは生活スタイルを中心にして(Lifestyle Oriented),予見的に(Proactive),連続的(Continual)な視点で対応することが必要とされる。コンティニュアのような取り組みよって,日々の生活の中で個人の健康情報が収集できるような仕組みが構築されれば,疾患に対する対応を根本から変える可能性を持っている。さらに,予防的な健康管理や健康増進といった個人の生活習慣を変えていくことも可能だ。医療機関としては,最後まで残されているベッドサイドの各種計測機器の病院情報システムへの取り込みの“ラストワンマイルソリューション”になるのではと期待している」。 |