ホーム の中の取材報告の中の 2010の中のグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが自治体病院向けDPCセミナーを開催

取材報告

2010
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが
自治体病院向けDPCセミナーを開催


100以上の病院,企業から参加者があった会場
100以上の病院,企業から参加者があった会場

アキよしかわ 氏(米国GHC)
アキよしかわ 氏
(米国GHC)

望月 泉 氏(岩手県立中央病院)
望月 泉 氏
(岩手県立中央病院)

世古口 務 氏(松阪市民病院)
世古口 務 氏
(松阪市民病院)

渡辺幸子 氏(GHC-J)
渡辺幸子 氏
(GHC-J)

 (株)グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC-J)は1月30日(土),ベルサール九段(東京・千代田区)において,「DPC改定直前セミナー―生き残れる自治体病院とは?」を開催した。2010年度の診療報酬改定では,DPCの大幅な見直しがされ,これまでの調整係数が段階的に廃止されることに伴い,正確なデータ提出を評価するなど,新たな機能評価係数が設けられることになった(1月29日時点で,正確なデータの提出,効率化,複雑性指数,診断群分類のカバー率,救急医療の入院初期診療,地域医療への貢献の6項目が決定)。今回のセミナーでは,岩手県立中央病院と松阪市民病院の経営改善事例が紹介された。

 まず,グローバルヘルス・コンサルティング(GHC)米国会長で,国際医療経済学者のアキよしかわ氏が,米国におけるGHCの活動を紹介。その上で,日本法人の活動として,全国の自治体病院や社会保険病院,赤十字病院で行っているDPCデータ分析の支援やそのための人材育成活動を説明した。さらに,メディカル・データ・ビジョン(株)と提携し,提供しているDPC分析システム「EVE」とDPC別原価計算システム「Cost Matrix」などのPRを行った。

 これに引き続き,岩手県立中央病院副院長兼消化器外科長の望月 泉氏が,「地域住民が必要とする病院をめざして―岩手県立中央病院の取り組み」と題して,講演した。同院は1996年から98年にかけて3年連続赤字となり,累積欠損金は57億円に上るなど,非常に厳しい経営状態になった。しかし,2000年に新院長が就任後,「21世紀プロジェクトチーム」を発足し,医師のモチベーションを上げるためのヒアリングなどを開始。さらに,2001年には紹介率30%以上,平均在院日数20日以内をめざす経営改善計画「3020計画」をまとめ,その後も経営改善に取り組んでいった。2004年にはDPC調査協力病院となり,2006年からDPC対象病院になった。望月氏は,こうした過程の中で,医師に対するDPCへの理解を深めるために同院が取り組んだ啓発活動や正確な病名記載の徹底について,その手法を紹介した。また,望月氏は,DPC環境下では急性期医療に特化するために地域の医療機関との連携が重要だと述べた。このほか,結腸がん症例におけるDPCベンチマークの実例を取り上げ,他施設との比較により,クリティカルパスの見直しを行い,医療と経営の質を向上させたと報告した。

 次いで,「DPCを追い風にした自治体病院改革事例―意識改革による赤字体質からの脱却」と題し,松阪市民病院診療部経営担当の世古口 務氏が講演した。世古口氏は,東海地方におけるDPC対象自治体病院をメンバーとした「東海コンソーシアム(ToCoM)」の代表世話人を務めている。世古口氏が着任した2008年度から,同院では医師の人事評価制度を導入し,一部に成果主義をとり入れた。これにより,医師の意識改革を行ったと説明。加えて,2008年度からDPC対象病院となったことに伴い,入院での検査を必要最小限にし,術前検査を外来に移行するなどの意識改革に取り組んだ。また,世小口氏は,DPC環境下で質を低下せず収益を拡大する対策として,在院日数のコントロール,術前検査の外来シフト,周術期予防的抗生物質の投与の見直し,後発医薬品の導入,適正なDPCコーディング,出来高評価部分の拡大を挙げた。その上で,ベンチマーク結果を示して,同院の経営改善結果を報告した。世古口氏は,自治体病院が民間病院などと比べ経営的に劣る理由として,医療の詳しくない人材が事務職員に配置されることや施設の建設費が高いことを挙げた。そして,自治体病院も収益増に取り組むべきであり,その戦略として適切な人事評価,患者サービス向上といった施策が必要だと述べた。

  2つの自治体病院の事例報告に続き,GHC-J代表取締役社長の渡辺幸子氏が,「生き残れる自治体病院とは? 新DPC時代の病院経営―DPC第2の波 新たな機能評価係数」と題し,講演した。渡辺氏は,DPC対象病院ではチーム医療が重要であるとし,医師や看護師,薬剤師などそれぞれの人材がどのような役割を担うべきかを,EVEのデータ分析事例を用いながら解説を行った。また,DPC対象病院は,前方と後方の施設との連携が重要になると述べ,施設・設備だけでなく,診療プロセスとアウトカムの情報を積極的に公開していくことが必要になってきていると言及した。さらに,今後の動向について触れ,地域の医療ニーズとそれに対する医療サービスのマッチングが重要だと説明。この2点が医療と経営の質を両立させる未来型病院には求められているとまとめた。


●問い合わせ先
株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
TEL 03-5467-0123
http://www.ghc-j.com/